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【DAO大解剖④】DAOの強みと弱み

他の発明と同じようにDAOは既存の問題を解決するが、同時に新たな問題も生み出す

この記事はDecentralized Autonomous Organizations (DAO)の概念を理解するための解説記事シリーズPart5です。以前の投資ビークルとしてのDAOで言及したように、Headline Asiaのリサーチでは世界中に240のアクティブなDAOが存在しており、これは2020年から100%の増加を示しています。理論的には、DAOは現存する組織構造にとって完璧な代替手段となり得ます。

プリンシパルエージェント問題
先走りする前に、既存の組織の組織に潜むプリンシパルエージェント問題を考えてみましょう。組織において、組織(プリンシパル)とその組織を代表執行する人(エージェント)の間の対立はよく見られます。エージェントはプリンシパルの利益最大化に反するように行動し、自分自身の利益最大化のための行動を取るかもしれません。例えば、会社がキャッシュフロー問題に直面した時に、最も理想的な対応はコストを減らすことですが、役員が自身の収入を増やすために役員報酬役員報酬を大幅に上げてしまうなどの例が考えられます。

DAOは、世界中のどのような組織にも潜んでいるこのようなヒエラルキー問題を解決する上で最も効率的な手法です。伝統的な企業と比較して、DAOでは組織全体の代わりに決定を下すことができるエージェントが存在しません。DAOの概念上、DAOというプリンシパルの利益最大化に反する行動を取りたいと思った人がいても、他のメンバーに投票するように説得しなければなりません。

Photo by Philipp Katzenberger on Unsplash

DAOの強み

  1. 効率性の高さ: 従来の組織において、意思決定プロセスは取締役会などの信頼されたメンバーで行われます。DAOは、投票に基づいて、スマートコントラクトやブロックチェーンなどによるコンピュータプログラムで実行されるため、官僚主義的な手続きによる遅れを排除します。コンピュータープログラム上でDAOが運営されることによって、ヒューマンエラーを減らし、人件費を下げ、透明性を高めることができます。

  2. 集団の知恵: DAOは分散型の組織であるため、CEOやヒエラルキーが存在しません。世界中に散らばっている全てのメンバーが、同じポジションから意思決定プロセスに関与します。研究開発やイノベーションを組織内の一部に任せるのではなく、DAOでは誰でも新しいアイデアを提案することができるのです。

Photo by Annie Spratt on Unsplash

DAOの弱み

  1. ハッキングリスク: DAO以外の組織でもハッキングの可能性がある一方で、DAOの方がより狙われやすいです。コンピュータ・プログラムで運営されていない組織では、大きな金額の送金を承認するために、特定の人物の手作業が必要になるのが一般的です。これはプロセスのスピードを下げますが、ハッカーが干渉するのを大変困難にさせます。一方で、DAOは全てデジタルでコード化されているため、オンライン攻撃の影響を受けやすいです。ちょうど最近、BadgerDAOがハッカーから、メタマスクウォレットを通じた違法なユーザーからのリクエストによるフロントエンド攻撃によってUSD$119M を盗まれたことを発表しています。ハッキングはWeb3.0やクリプト業界における最も大きな関心点です。

  2. 投票率: 理想的には、全てのDAOメンバーは提案と投票を積極的にするべきです。しかし、全てのオンライン上の人が常にアクティブでないのがインターネットにおける現実です。DAOによって異なりますが、定足数を満たさない場合、議案を可決することはできません。したがって、全てのメンバーをDAOに関与させ続け、提案に対して投票してもらうことはDAOが向き合わなくてはならない大きな課題です。

  3. 規制の不足: DAOがワイオミング州で合法化された一方で(2021年4月にDAOを定義し合法化する新しい法案を可決し、DAOのメンバーにLLCのメンバーと同等の権利を与えた)、多くの管轄区域において、そのような状況はまだ来ていません。 その結果、ほとんどのDAOは自治権を持つものの、曖昧な法的手詰まりに陥っています。無秩序で無防備なDAOのメンバーは、法的な不一致を解決するために頼るべき選択肢がほとんどありません。それにも関わらず、近い将来に多くの管轄区域でDAOに対するスタンスが明確にされると予想されています。


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