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映画『リスタートはただいまのあとで』ネタバレありの極極私的感想

映画『リスタートはただいまのあとで』
初日に1回目を観た後、計8回鑑賞。
ネタバレありまくり個人的解釈しまくりの備忘録的感想。
まとまった文章でうまく書けないので、項目で箇条書き。あらすじや考察等もない、個人的感情と反応をただそのままに書くのみの、とりとめない感想だよ_(:3 」∠)_たぶんあとで書き直したりもする。

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いつも行く映画館で、ちょっとせつなげでほんわかあたたかい雰囲気もある予告を観て、「あ、これ好き …!」と直感。公開を心待ちにしていた映画『リスタートはただいまのあとで』。
画面を観るというより、長野の広々とした自然の中、光臣や大和のそばでふかぶかと深呼吸するような作品で、やっぱり大好きになった。

以下、自分的推しポイント(一部俗で申し訳ない笑)を挙げてから感想を書いていこうと思う。

*主演ふたりのお顔がいい!演技がいい!
*ふたりを支える周りの方がベテラン揃いで味がある
*家族愛、つながっていくもの、に泣かされる
*作品の優しさにざらざらしちゃった心が癒される
*前向きに頑張ってみようという爽やかな気持ちになる、背中を押される
*光臣と大和の恋が生まれる瞬間に立ち会えてときめく
*長野の広々とした自然や美しい景色が目にも心にも心地よい
*周りの人に優しくなれる
*素敵なキスシーン
 など!

【画について】
 ・冒頭の、ススキが揺れる中を、2両の電車が走ってくるノスタルジック感漂うカット。状況と一緒に映画の世界観、あたたかさが伝わってきて、ロケハンを丁寧にされたんだろうなあと思ったり。
 ・手前にひとり、奥にひとり、という構図を多用されていて、奥行きを感じるとともに、ワンカットの情報量が増え、より人物同士の気持ちの動きが伝わってくるなと思った。
 ・長回しというか、すぐ次のカットに移りそうな場面でも、間を大事にした撮り方をされているような。表情などが長く映ることで、人物の感情とその変化にじっくり寄り添う感じがする。

【トンネルの闇と光】
 冒頭では電車はトンネルの闇の中へ入り、光の中へ出ることはない。
 光臣の心が闇の中に留まっているような描写。そのまま光臣ひとりの、1度目のただいま。
 ラストについては後述。

【光・色の演出】
 ふたりにかかる綺麗なプリズム、家具店のあたたかい灯り、お風呂のはちみつ色の湯気、じゃれ合う茶の間の赤みがかった夕焼け色、宵闇に浮かび上がるストーブの幻想的な赤、トンネルを抜けた眩しい光…
 光や色の演出が印象的だった。全体的にあたたかいトーンに統一され、どこか懐かしささえ覚える色合いが心地よい。

【グッときたところ・泣けたところ】
・光臣が仕事を継ぎたいと言うところ
 光臣がお父さんの後ろに立ち、思いを話し出す前の画面だけで、なぜか胸が締め付けられて涙がにじんだ。
 光臣の強い決意と、それを受け止めようとするお父さんの緊張や複雑な気持ちのようなものが伝わってきたからかもしれない。
 涙を流す流さないで、監督と意見が分かれたらしいこのシーン、古川さんは涙を流していた。
 これまでの出来事を経て、やっと想いを口にすることで感情が昂り、涙が自然に溢れてしまうとか、真剣に伝えたいと思う決意の場だからこそ、理性を保ち、涙は流さないとか。それ以外の表現かもしれないけど、色々な解釈を経て生まれた光臣が、この世界で生きているんだなと。
 親としても小さい頃仕事を眺めていた子供が、父さんみたいになりたいと言ったら感極まってしまうよね…。
 この「父さんみたいになりたい」という気持ちは、じいちゃんが好きだからじいちゃんみたいになりたいという大和のまっすぐな言葉が、光臣の胸を打って生まれたものでもあるのかと思うと尊い。
 
 古川さんはキャラクターについてもディスカッションした上で、今作は監督の考えた光臣です、と仰っていたので、古川さんバージョンの光臣はどんなだったのかなあと思ったり。

・お父さんに認めてもらった光臣を見つめる大和の顔
 純粋に喜ぶ光臣を、よかったなあと見つめる優しい表情も素敵だし、光臣を見て自分の過去と向き合うことを決めた引き締まった表情も素敵。ここも長く大和だけの表情を捉え、心中がグラデーションのように変化して顔に表れるようすをじっくり見せてくれた。

 大和のまっすぐな想いが光臣を動かし、その光臣を見てまた、大和も自分の一歩を進めようと思う姿は、控えめに言って運命では。
 父に認められたことを喜んで、自転車ぶっ倒して大和に抱きつく光臣も可愛らしくて仕方ないシーン。

・大和がじいちゃんに東京へ行くことを告げる場面
 ふたりの間に流れる空気が、本当の家族のようにリアルに感じた。
 じいちゃんのうん、が優しく響いた。
 ここに限らず、大和とじいちゃんのシーンは本当の家族としか思えないほど馴染んでいて、おふたりすごい。病院のやりとりも好き。
 そしてパーカーの裾を軽く握ってる大和が可愛いのと、この子ほんとに亀戸の役所で除籍謄本もらってくるんだなーというリアリティある佇まい…(伝われ)。

・ベンチで赤ん坊の自分に思いを馳せる大和と、優しく彼の名前を呼び、抱きしめてあげる光臣
 悲しさとせつなさとときめきとで私の胸中が嵐になった瞬間。
 「大和」の名前に秘められたエピソードと、光臣が存在を支えるかのように呼び続ける、大事なその贈り物。
 「もう一回呼んで…」と涙にかすれてしまう大和の弱々しい声がせつなく、それを愛情深く包み込む光臣は、なんだか故郷に帰ってきた頃の彼とは別人のようだ。大和の心の壁が涙とともに少しずつ溶けて流れていくのが目に見えるようだった。
 ここで素晴らしいなと思ったのは、ベンチを感慨深く撫でていた大和が、座った時、空を見上げたこと。タオルにくるまれてベンチに置かれていた自分が見上げていた空。それを思い出すかのような仕草にうるっときた(意図は違うかもしれないけど)。
 
 光臣が、大和と出会ってから徐々に柔らかい笑顔を花ひらいていくようすもうつくしい。


【ときめいたところ】
・入院の時、座り込んで「おれにはじいちゃんしかいねーで」と初めて弱音を吐いた大和
 不謹慎ながらも、なぜかここで盛大にきゅん…!!!とした。明るさの塊のような描写が続いてからのこのギャップに弱い。恋?母性?(笑)
 光臣もちょっとはきゅんとした…かもしれない(笑)。

・光臣が大和に頭ポンとするシーン
 光と映像効果のせいもあるかもしれないが、うつくしいふたりのお顔とあいまって、漫画のワンシーンのような2次元的なうつくしさがあった。

・怒りを抑えきれない光臣に感謝する大和
 怒りと自分への呆れがないまぜになって頭を抱えてしまう光臣が可愛いのと、子犬のような顔で感謝と想いを告げる大和の愛らしさ…!
 一生じゃれあってて…。

・ストーブの前でのキス、最後の大和からのキス
 ふたつのキスシーンは永遠に記憶からなくなってほしくないくらい素晴らしかった。
 シチュエーション、演出、演技、すべてにスタンディングオベーションと感謝。
 夜のひそやかなキス、明るい陽射しのもとでのキス。
 大和からのキスは、大和の、愛しいひとを見つめるような慈しむような優しい顔が本当に眩しい。お互いを想い合うように笑うふたりこそ、ずっと幸せでいてほしいと祈ってしまう。
 口づけるふたりをくるりと回るような撮り方も少女漫画的なときめきがある。
 
・キスをした直後、驚いたように身を離し、戸惑いを表す光臣
 ここを取りあげるのもどうかと思ったけど(笑)、この短いあいだの動きがなんともいえず好きで…!
 くちづけた後、ビクッとしてしまうのもいいし、『え…今の何……俺何した…?』という声が聞こえてきそうな戸惑いのそぶりが、驚きや焦りはあるけれどもとても抑制的で、古川さんお上手だなと。初めて恋情と欲が溢れて静かに混乱するさまが、人間らしくて生々しく愛しい。
 家を出てよろよろ帰るのも可愛い。

・好意を自覚してから大和への反応が顕著になる光臣
 結婚の話に息を詰めて見守ってしまったり、キスの情報に動揺してしまったり、諸々の反応が恋だね…!って感じで悶えた。

・大和と涼子の仲を誤解して、歩いて帰る光臣
 激しい嫉妬の発露にも、ぷんすこしながらどすどす歩いて帰る姿にもニヤニヤしてしまってごめん光臣。

・ヤギを愛でる場面
 子供より興奮して、2回も光臣を呼んでしまう大和の愛らしさ、光臣の「子供かよ!」の言い方が好き。

・区役所で席を入れ替わるところ
    光臣に右にいられるとおかしい感じがするという大和。光臣もまた。
 そんな些細な違和感をおぼえるほど、ふたりは隣にいることが当たり前になったんだなとしみじみ。

・ベッド上での会話
 突然BLであることを思い出したかのように、ここはちょっともぞもぞしてしまった(笑)
 会話は原作をなぞっている感じだけど、ふたりの可愛さが私の想像をはるかに超えてきた…。

・ベンチで自分の出自に思いを馳せる大和と、優しく彼の名前を呼び、抱きしめてあげる光臣
 2回目の登場です(笑)今度はときめき枠で。
 ここは愛、愛そのものだなと。
 下の名前を呼ぶのは、相手を幸せにし、あなたが特別だと伝える愛の行為という話を思い出す。
  大和はこの日まで自分の名前を、どこか自分と切り離された借り物のように感じていたかもしれない。愛されなかった子、必要のない存在という思いとともに。
 「光臣」と名前を呼ぶたび、その名に込もる家族の愛情を心地よく感じるとともに、わずかな羨ましさもおぼえていたかもしれない。
 実は親から授けられた名前であったことは、大和の心を大きく揺さぶった。
 その名を、大和からたくさんもらった愛への返歌のように、今日まで届かなかった親の愛を代わりに大和の身に沁ませるように、光臣が優しくしっかりと呼ぶ。
 好きだと想いを確かめ合う場面でもないのに、画面からはそれ以上の大きな溢れる愛情を感じた。もう一度、ここから大和の人生が始まるんだなという気持ちにもなった。


【それ以外に好きな場面・気になる場面など】(ざっくりしたくくりだな…)
・初めは不機嫌そうに漕ぎにくそうにしていた自転車を、だんだん笑顔を浮かべ周りの景色を見る余裕さえ生まれて、軽やかに漕ぐようになる光臣。
 農園からの帰りに笑顔で漕いでいくところが、私も観ていて心が軽くなるようだった。

・上田屋の場面、家業を継ぐのを拒否されている光臣に上田がその話題を振った時、さりげなく話題を変える大和の気遣い。

・タンスを届けに行ったふたり、展望台でコーヒーを光臣に渡す大和。車を出したのも手伝ってくれたのも大和なので、ここは光臣がおごるところでは…?とほんとーーーに細かくてどうでもよいところが何回観ても気になって(笑)。ふたりの性格が表れてる気もして微笑ましいけど。

・佐野さんの味のある演技。それほど出番が多くないのに印象に残りまくる。独特の話し方とか。思わず笑ってしまう日焼け止めの部分はアドリブだそう。上田大好き(笑)。

・似たような景色のところに住んでいるが、スクリーンでは自然そのものが、感情を持って場面を彩る役者さんのようだなあと思う。
 山の稜線から日が差して、その光の中にきらめく細氷や、夕焼け空のしたで星のようにまたたく家々の灯りなどもうつくしかった。

・キャストの皆様の、ほんとにちょっとした演技の数々が自然で印象深くて、どれも好きなんですよね…。
 たとえば、お母さんがお見合い写真を預ける場面で、お茶を一口飲んでうん、と言うところとか、みなさんの方言とか、会計を待っている大和が光臣とじいちゃんを振り返るところとか、みかんを食べたじいちゃんが甘みがのってる、と言うところとか、涼子さんにじいちゃんの介添えを奪われて、え、ってなる光臣とか、涼子さんが光臣と大和を見つけてあー!って手を振るところとか、風邪ひいたっぽい、と咳払いする光臣とかとかとか、あげたらキリがなくて細かすぎて伝わらない選手権かってくらい何気ないところがいろいろ好き(笑)。

【主人公ふたりの好きなところ】
・大和の素直さも光臣の直情も可愛い。
・戸惑いやつらさを表現する伏し目がちの光臣の、まっすぐ長いまつげのかたち。
・光臣の、大和をそばで見つめる時の優しいまなざし。
・子犬のように光臣を見つめ、「ん?」ですべてを片付けてしまう大和。
・大和の寝顔のうつくしさと、唇のうるつや感(すごい)。
・「光臣」と何度も呼ぶ明るい声。ふたりの声が性格そのままって感じで好き。

【原作にない、気になったところ】
・光臣の家業の変更とタンスのエピソード
 原作では光臣は仏具屋の三男坊の設定であり、劇中で光臣の変化のキーとなるタンスのエピソードはない。
 家具屋への変更とタンスのエピソードによって、真剣に家業を継ぎたいという光臣の心の動きをより印象的に、スムーズに見せてくれる展開になったと感じた。職人として生きることと、「継いでいくもの」がはっきりして、成長物語としての一本の筋が通るような。

・映画オリジナルの人物・涼子さん
 施設の人が位置的に涼子さんに当たるのかなと思いつつ、原作にはいない人物。
 ふたりの仲を進ませるためのポジションも担いつつ、彼女から大和について語ってもらうことで、光臣にも観客にも大和の人となりがわかりやすく伝わる。
 短時間で状況が掴みやすくなるとともに、涼子さんの存在によって大和の深みが原作とは違う形で増したように思う。

【近づいていったふたりの心】
・それぞれの困難に立ち向かう姿や日々抱く想いが、お互い自分に向き合うための大事なきっかけとなった。
・光臣は、明るい大和の、おおらかで心をほどかせてくれるあたたかさや鬱屈さえ吹き飛ばしてしまうまっすぐなところに力をもらった。
・光臣は、実は影を抱えていた大和の心の支えになりたいと思った。
・大和は、父ときちんと対峙し、自分を変える決意をした光臣に心を奮い立たせられた。
・光臣の、情が深く率直な部分に救われる大和。
・一見ツンケンしてるようで意外に優しい光臣のギャップが可愛くて面白かった?(笑) 

【ラストについて】
 キスの後、光臣の肩に頭をもたせかける大和。帰りの電車で大和の肩に頭をもたせかけて眠る光臣。そのシンメトリーが可愛らしい。
 冒頭にひとりで帰ってきた光臣と、ラストでふたりで帰ってきた光臣と大和。ただいまの形こそ同じだが、その姿は今やまったく違っていて。
 影響を与えあい、支えあいながら前を向いて歩き出そうとしたふたりだからこそ、トンネルを抜けた先の、光の中へとたどり着けた。
 「光臣とだったら、行ける気がした」、東京へ向かう電車の中で告げた大和の言葉が耳に返る。
 
 帰路、ふたりの前に伸びたまっすぐな道に希望を感じる。
 これから先も、共白髪になって添い遂げる真のめでたしめでたしには遠い道のりであろうけど、ふたりでふざけながら笑いあって思いあって、しっかりした足取りでゆっくりと並び歩いていくのだろう。

 タイトルが最後に来るのは粋だし、監督の優しさを感じる。ふたりへの応援メッセージのようにも見えて。そうだ、この映画はふたりのリスタートへのエールそのものなのでは!


 ここまで書いてきて、結局どのシーンも好きだということに気づいただけだった(笑)。ここも、あそこも書きたいとなる気持ちで、思い出しながら書いていると、ますます彼らが愛おしくなる。
 なぜこんなに惹かれたのか、ここに書いたこと以上の何かがあるような気もする。
 監督の、光臣や大和に会いたくて作った、また会いたい、という言葉通り、彼らはこの作品を作った方々にとても愛されているのだろう。その愛情がこちらにも伝わってきて、愛しく思うのかもしれない。
 正直、個人的には続編はなくてもいいと思う(あるならもちろんありがたく鑑賞させて頂きますが!笑)。あの自然の中で、あの人々の中で、それぞれの道を寄り添いあいながら進んでいく彼らの姿が見える気がするから。
 そう思わせてくれた監督や、キャストやスタッフの皆様。
 素敵な映画をありがとうございました。
 そして何より、ココミ先生の原作がなければ、この素敵なふたりのお話には出逢えませんでした。心から感謝申し上げます!m(__)m


 (心残りをひとつ書くならば。もっと早く映画化を知って、クラウドファンディングに参加したかった…! 台本読みたいなあTT)


一応おしまい! Blu-ray発売を心待ちにしておりますm(__)m
もしここまで読んでくださった方がいらしたら、誠にありがとうございます。