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大学お笑いサークルで地獄を見た話

昨今、大学お笑い芸人が注目されている。ある番組ではお笑いサークル出身芸人枠が用意されるほど、テレビ業界にも浸透してきている。このような彼らの活躍に惹かれ、「お笑いサークルに入ってみよう」と考える、初々しい大学入りたての若者が年々増加傾向にある。

だが、一旦立ち止まって考えてみてほしい。
「本当に大学生活四年間をお笑いの道に捧げても、後悔しないだろうか?」
(後悔するかしないかなんて、一度経験してみなければ分からないものなのだが。)

ここでは私が大学生活序盤の二年間をお笑いサークル、お笑い活動に捧げて後悔した話、またお笑いサークルに入ることへのマイナス要素を書いていこうと思う。


皆さんは気づいているだろうか。テレビ業界などのマスコミに注目されているお笑いサークル出身芸人は、数多くの大学お笑い芸人の中のほんの一部であることを。
つまり大学お笑い芸人の中で、数少ない1〜2%の成功者なのである。
(まあ、彼らも芸能界の中で成功する保証は全くないのであるが。)

私はこの事実に気づいたのが大学2年生の終わり頃であった。テレビでは大学お笑い芸人の明るい側面のみを映し出していて、暗い側面は放送しない。

私が大学お笑いを目指したのは大学デビュー時であった。その当時の私は、「大学生と言ったらサークル」という凝り固まった考えを持っていた。いくつかのサークル新歓(旅行、映画、アーチェリーなど)に参加したものの、雰囲気が合わずに断念。その当時お笑いをユーチューブなどでよく見ていたので、お笑いに関するサークルがないか調べた。すると大学お笑いサークルというものが世の中には存在していて、テレビ業界にも進出しているという事実を知る。ここでお笑いサークルの新歓に参加しようと決めた。

新歓では軽い参加型大喜利、先輩のネタみせなどを行った。BBQにも参加した。サークルのノリ自体はあまり好きではなかったが、(今思えばもっと自分に合うサークルを探すべきなのだが)同じ学科の子が2人もいたので流れで入ることになった。

サークルでの初めての活動は、コント発表だった。
先ほどの学科の子2人とコンビを組み(女2、男1)、台本を考えたり声出し練習など行った。だが台本が気に入らなかった、人前で発表することに慣れていなかったため、順調には進まなかった。というのも、男が台本を主に担当していたのだが、私には面白さが全く理解できない、発声や表現の方法も掴めずじまいで、
発表も碌にうまく出来なかったのであった。
台本はこうだ。
ある同窓会にヤクザが現れる。彼はその場所をヤクザの懇親会の会場と思い込んでいる。同窓会には彼と同姓同名の欠席参加者がいて、女2人は彼をその欠席者だと勘違いするのだが、会話をしていくうちに全くの別人であることに気づいていく。
大体のシナリオはこんな感じで、これだけを聞くと結構面白い。しかし展開の仕方が雑であり、面白さがよくわからなかった。また当時の私は変に尖っているくせに、お笑い初心者であり、人前で声を出すのもあまり得意ではなかったので、ネタ合わせやネタ見せにうまく参加することができなかった。
先輩の前でネタ見せを1回行ったのだが、「何をやっているのか分からない」「全然声が聞こえない」「やる気ある?」と言われる始末。ここで私は一旦挫け、数ヶ月サークルに参加しなかった。

次に参加したのは2年になった春ぐらい。新歓での発表だ。
なぜいきなり参加したのか、それは私にもよく分からないのだが、純粋にお笑いをしたかったのだろう。
1〜2年生の間で、私はお笑いの寄席に何度も行った。最低でも月に1回は渋谷の無限大へ行き、お笑いを楽しみ、研究していた。おそらく私はそれに影響を受け、再び始めたのだ。
新歓ではフリップネタを作成し、発表した。当時、霜降り明星の粗品(若い頃の佐々木)のネタが好きで、それに寄せたようなネタを作成した。
ネタ見せでの評価はあまり良くなかったが、同年代の男が異常に笑ってくれたのが嬉しかったのを覚えている。
そのネタ中、最もよく覚えていることがある。
ネタの本番、そこには幼稚園からの幼馴染ともう一人知り合いを呼んでいたのだが、私は舞台に上がる段差に躓き、大転けしてしまったのだ。だがそんな非常事態にも関わらず、そのままネタを続けられるぐらいに私は成長はしていた。
出番終了後、アンケートに「最初に転けたのが一番面白かったです。」と書かれていたのには大分ショックを受けたが。

ここから私はお笑い活動に少しずつ力を入れ始めた。
お笑い仲間は全く出来なかったが。

「え?普通サークルに入ったら友達はできるものじゃないか?」と疑問に持っただろう。
しかし私は序盤に書いた通り、サークル自体には全く馴染めていなかった。
だからサークル終わりの飲みにいく文化なんて私には無かったし、普通は行くであろうライブ終わりの打ち上げも一度も参加しなかった。
それこそ私がお笑いサークルに入り大きく後悔し、またお笑いを続けられなかった理由でもあるのだが、それは後ほど書こう。

2年生の間は、毎回のサークル活動へは参加していなかったものの、何回かのネタ見せとライブへは参加していた。フリップネタを作り、また発表するのはかなり労力を要したが、楽しかった。

2年の中期に入って、お笑いの仕方を変えた。
というのもサークルという居場所があまりにも自分の肌に合わなかったから、自分でエントリー料を払い出演する形の、大学生は参加しないような場所に出るようにした。
(ここで学んだことが1つあるのだが、大学生で本格的にお笑いをしたい者は、知人が1人もいない、自分でエントリーする形のライブへ出るべきだ。サークル主催のライブは同じ笑いの価値観を持ってる人が観客に多いから、そこを外れたら必ずウケるとは限らない。だからお笑いの基準がどうしても偏りがちで、身内ネタのような、部外者から見たら恥ずかしいネタに陥りがち。てか大学サークルのお笑いやってる奴らは、ほとんどがそういう痛いネタをやってる。)
いくつかネタをやったが、何人もの異なる世代層の観客にウケるのは非常に難しかった。その分、1回ウケた時の達成感が大きかった。

お笑い事務所主催のライブへも参加した。その時は観客の笑いがかなり聞こえたから、凄く嬉しかった。
動画審査型のオーディションへも参加し通過したのだが、何故か寝坊し対面へは行かなかった。

相対的な数で見ると、自分でエントリーする事務所ライブへの出演回数の方が多く、サークルにはあまり参加していなかった。

ここ直近で披露したお笑いは、1番最初のコント時に組んだ男との漫才だ。それの台本は私が考えたのだが、ゼロ笑いで終わってしまった。


以上、私のお笑いサークル遍歴だ。このように見ると、あまり大学生活が崩壊しているようには見えない。しかしお笑いサークルに入ると、日常生活への弊害が多いのは事実だ。

1つ目は、極端に友達が絞られる。
基本的にお笑いサークルに入る人間は、良いようにも悪いようにも変わっている人間が多い。だから、そこに馴染めるか馴染めないかは本人の努力次第では無い。
そして、もしそこの環境に馴染めないなら、お笑いの世界、少なくともお笑いサークルからは身を引くことを勧める。

私がサークルや事務所ライブに出演して感じたのは、お笑いという世界は極端に男性主義で、ある意味で仲間意識が以上に強い傾向にあると感じた。
(私の所属していたサークルが終わっていただけだったのかもしれないが)
まず、私は女なのだが、舞台に立つ男女比は9:1ぐらいで男が多い。そのためか、舞台に立つ女は、演者の男から異様な目で見られる。
そして仲間意識が強いというのは、排他的であるということの裏返しである。
基本的にお笑いサークルの人間は自分たち(仲間たち)がよければ全て良しなので、馴染めないものがいたとしても気にも留めない。そういう奴らは勝手に辞めていけという感じなので、馴染めないなら友達作りは難しいだろう。
(改めて、私の所属してたサークルが終わっていただけなのかもしれないが。)

また友達が絞られるというのは、学科の友達や、お笑いサークル界以外での友達が出来にくいということでもある。
一度お笑いサークルの世界に馴染むと、常に世界を偏った目で見るようになるだろう。(完全に私の主観だが)
お笑いをしている自分(笑)に酔うと、周りの大学生が、バカ(笑)に見えるかもしれない。会話の面白さのレベル(笑)を計り出し、尖った目でサークル外の人間を見出す。(そのような捻くれた目がお笑いのネタに役立つこともあるのだが。)
そして視野が狭くなり、お笑い以外の選択肢が気づいたら無くなっていた、なんてこともある。(私はサークルに馴染めなかったのでそのようなことは無い)

ただそれらを上手くこなせる人もいるにはいるので、全員にあてはまるわけではない。しかし自分の思考に柔軟性がないと思う人は注意すべきだ。

2つ目は、学業が疎かになるかもしれないことだ。
まあ、これはどんなサークルにも言えるが、勉強は優先順位がどうしても下がりがちになるので注意すべきかもしれない。笑いの能力があると感じ、それで食っていけると感じたなら、そこに全振りしても良い。しかしそうでないなら、早々に見極めをつけて、サークル活動は程々にした方が自分のためになる可能性もある。

3つ目は、見える世界が狭くなることだ。
1と同じようなことだが、お笑いというのはネタに自分の思考を乗っけるので、作るのに労力がかかる分、気持ちも入る。そして周りには同じような価値観を持った者が多いので、ますます世界が縮まる。

サークルに馴染めない者にはとても酷なことかもしれない。
何故なら、全く価値観の合わない仲間の居る状態に囚われてしまい、外に抜け出そうにも視野が狭くなっているからなかなか抜けれない、という状態に陥る可能性もある。
私は一時期そのような状態になった。お笑いはしたいが、サークルの仲間とは全く合わない、というような。


ここからお笑いサークルの考察に入る。ほぼまとめだが。

お笑いサークルとはオタク的で協調性はあまり無く、真面目な感じかといえば、全くそんなことはない、仲間意識が強く、非常に排他的なサークルであると私は感じた。

このように書くと非常に最低なサークル(笑)。

お笑いサークルは他の分野で目立つことのできないような人が集まっていて(言い方は悪いが)、特に最近のお笑いサークルに入ってきている者は、テレビに出ている芸人に強い憧れを抱いていて、自分もあのようにテレビで活躍したいと思っている人が多い。
しかしそこで結果を残す人は、他分野でも活躍できるような能力を持っている場合がほとんどだ。テレビで活躍している芸人を見ればわかるが、皆お笑い以外で何か頑張った経験を持っている。だからお笑いに過度な期待を持つべきではない。

そして肌に合わないと感じたサークルは無理に残るべきではない。

私はお笑いサークルを辞めて、全く関係のないオーケストラに入り活動をしている。(フルートを中学ぐらいから初めて、結構な年数になる)
正直オーケストラは協調性のある人が多く、私の肌にあっているので、非常に居心地が良く、なんでお笑いサークルなんて入っていたのだろうと思っている。

だがお笑いで得た経験も多くある。人前で何か発表するのに慣れたし、自分の居場所を探しだす力も得られた。だから悔いはあまり無い。といえば嘘になるが。

大事なのは、何事も早く見切りをつける事だと思う。そこに馴染めなかったり、辛いならその場を離れるべきで、もっと自分に合う居場所を探すべきだ。

(最後は完全に自分に向けての言葉になってしまった。)

終わり




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