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カブトムシと私
最近寝苦しい夜が続く。
我が家の子供たちが冷たい場所を
無意識のうちに求めコロコロと
寝室を転がる。
暑い季節が嫌いな方も多いと思うが
私は断固夏が好きである。
別にマリンスポーツをするわけでも
海やプールに泳ぎに行くのが好きなわけでも
祭りや花火大会が好きなわけでもない。
なぜ夏が好きかというと
カブトムシやクワガタなどの
昆虫が自然界にたくさん出てくるからである。
ご存じの方も多いと思うが
私はアラフォーである。
そんな歳になっても昆虫に
ワクワクするものなのかと不思議に
思われるかもしれないが、
いまだに小学生のころと同じように
夏になるとワクワクしてしまうのだ。
そこで今回は自己紹介の一環として
私が昆虫を好きになるキッカケとなった
お話をご紹介しようと思う。
私がいつからカブトムシやクワガタに
ときめくようになったのかは
今となっては思い出せないが、
小学校低学年のころにはすでに
カブトムシが好きだったことを覚えている。
当時親戚のおじさんが年に一回
夜の山に連れて行ってくれて
カブトムシを取りに行った。
暗い山の中は正直怖かったが
その中で偶然出会うカブトムシは
迫力満点で夢中で獲ってカゴに入れたのが
いまだに印象に残っている。
そんな見るからに強そうでたくましい
カブトムシの姿にカッコよさを感じ、
毎年カブトムシを飼育していたのだが
小学生の私には一つだけできていないことが
あった。
それはカブトムシを成虫に羽化させる事である。
自然界で獲ってきたカブトムシは
ほぼ間違いなく交尾済みなので
そのまま飼育しているとほぼ間違いなく
土の中に産卵をする。
ホームセンターで買ってきたカブトムシも
多くの場合はペアで売られるので
オスメスを同じ容器で飼育していると
だいたい産卵する。
夏が終わりカブトムシが死んでしまった後
飼育ケースの土を探すと小さな幼虫が
出てくることは過去から何度も経験したし
そのたびにその幼虫を成虫にしたいと
考えていた。
しかし、そのためにはどうすればいいのか
当時の私は分からなかったのだ。
学校の図書室にある本を借りて
どのようにすればいいのかを調べ、
どうやら腐葉土の中に入れておけば
成長するらしいということが分かった私は
毎年近くにある種苗店で園芸用の
腐葉土を購入してその幼虫を入れていた。
しかし、残念ながら幼虫はある程度の
大きさまでは成長するものの、
気が付けばすべて全滅して見えなくなったのだ。
今から思えば園芸用の腐葉土には余計な
害虫が繁殖しないように、虫よけの剤が
入っていたのだと考えられるが、
当時の私には知る由もなかった。
そんなわけでカブトムシは好きだが
成虫まで育てる経験ができなかった私に
あるキッカケが訪れた。
私がカブトムシが好きだと知っていた
私の叔母が郵便局に行った際に
当時郵便局で売られていた
「ふるさと小包」というもので
カブトムシの幼虫を容器に入れたものを
偶然見つけ、それを購入してくれたのだ。
本来カブトムシの幼虫は餌となる
マット(土)をたくさん食べるので
定期的にマットを交換してやる必要があるが、
そのセットはもうすぐサナギになる
最終形態に近い幼虫を入れたもので
その容器を置いておきさえすれば
カブトムシがサナギになり成虫になる姿が
見られるというものであった。
そのセットを送ったと叔母から
電話をもらってからというものの
私はあまりの楽しみさから
毎日学校の帰り道でヤマト運輸の
トラックが家に向かってないかを
確認したものである。
(今から思えば郵便局で購入してるのに
ヤマト運輸は全く関係ないが)
そして楽しみにしていたキットが
我が家に届いてからは毎日が
楽しみで仕方なかった。
自分では育てたことのない大きさの
巨大な幼虫がビンの中で動き
その様子を眺めているだけでも
ワクワクした。
そして、少しずつ幼虫の様子が
変化し始め、ある時にサナギに
変化したのだ。
図鑑や本では何度も見た光景であるが
実際自分の目の前で芋虫の幼虫が
カブトムシの形に近い
サナギに変化する様子を目にした私は
言葉にならないぐらい興奮したのを
今でもはっきりと覚えている。
そんなサナギへの変化を見て
約3週間が経過したころに
そのサナギは羽化して無事カブトムシが
誕生したのであった。
羽化したては白かった外翅が少しずつ
茶色くなり、黒く硬くなっていく様子を
私は夢中で眺めていた。
過去からカブトムシは飼育していたが
自然界で獲ってきたものや
ホームセンターで購入したものだったので
いつ頃羽化したものかはわからなかった。
なので思ったよりも早く死んでしまうことも
何度もあったのだが、
今回は羽化したタイミングを知っている
カブトムシだったので、
そこから9月の末ごろまでその個体は
生きていた。
今から思えばこの経験が
私がカブトムシやクワガタに
大きなときめきを感じるようになった
キッカケだと確信している。
そんな私も小学校高学年になり
釣りに信じられないぐらいハマってから
カブトムシの存在は忘れていたのだが、
結婚し子供ができて、長男が4歳のころに
カブトムシをカッコイイと言い出しのたのを
キッカケに再びカブトムシを買い始めた。
そして、案の定カブトムシが産卵したのだが
今の時代は飼育に適したマットも当たり前のように
売られていて当時とは難易度が全く違った。
私は色々調べ、カブトムシの幼虫を飼育して
翌年には多くのカブトムシを羽化させることに
成功したのだ。
そして、いまだにカブトムシをブリードしている。
もちろん自分が楽しむためもあるが、
多くの幼虫はかつて私が叔母に買ってもらった
キットと同じような形にして
知り合いの子供たちに配っている。
私が昆虫に面白さを感じるようになった
劇的な経験をほかの子供たちにも
ほんの少しでも感じてほしい。
そう思いながら今日も暑い夜を
ワクワクしながら過ごすのであった。