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スポーツ科学 初めの一歩

 スポーツが科学の対象として成立するためには、現象の数値化が前提となります。文化としてのスポーツの楽しみ方は多様なので、世間話の種として語られることもありますが、スポーツパフォーマンスは数値化によって新たな可能性を帯び、今更DXを引き合いに出すまでもありませんが、新たな価値を創造することでしょう。

 現在、スポーツ界において、アスリートのトレーニングとパフォーマンスをモニタリングすることは当り前の状況になっています。これからますます様々な情報を収集し、分析し、解釈することの必要性が高まっていくことでしょう。

 しかしながら、案外アスリートのエビデンスについてまとまった資料がないのが実情です。多くのスポーツ科学は、一般論を提供するための方法論に則って、研究計画を立案し、遂行します。しかしながら、スポーツ現場で必要なことは、一般論も大切ですが、その前提を踏まえつつも選手個々に有益な情報を提供することなのです。

 科学的根拠とコーチングの技術を融合させ、アスリートモニタリングのプログラムをマネジメントできる人が求められてきています。英語ではプラクティショナーと言いますが,適当な日本語がないので,さしずめ「実践者」といったところの直訳でお茶を濁しておきます。

 これからこのnoteにおいて、アスリートのモニタリングの理論的根拠や方法について、実践者がモニタリングデータをアスリートの練習計画やコーチのコーチングに役立てられるよう、話題を提供していきたいと思っています。

 エリートスポーツのプログラムでは、何らかのモニタリングを行っていないことのほうが珍しくなっています。ほとんどエリートスポーツの現場がモニタリングシステムに多大な資源を投入しています。様々なテクノロジーが活用され、また、多くの企業がアスリートのモニタリング市場をターゲットにしています。これからの課題は、闇雲にデータを収集するのではなく、すべてのモニタリング情報をアスリートのパフォーマンス向上に役立てることです。

 50年以上前の第一回東京オリンピックでもコーチは日常のトレーニングからパフォーマンスを数値化、記録し、コンディショニング情報を数理的に処理してきました。大石三四郎先生の「コーチのための統計学」(1959)では、握力や立ち幅跳びを毎日測定し、x-R管理図によって練習に活用したことが紹介されています。陸上競技のコーチであるClyde Littlefield(1892-1981)や水泳のコーチであるJames Counsilman(1920-2004)は、選手のトレーニングや競技の様子を詳細に記録し、その情報をもとにトレーニングプログラムを調整していたことで知られています。

 テクノロジーの発展によって、ここ数年飛躍的にパフォーマンスに関連する生理的、バイオメカニクス的、心理学的様々な変数のモニタリングが簡便に実施できるようになってきました。日進月歩のスポーツ科学の情報を提供していきます。

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