曼荼羅絵の中の「色」と「空」
色即是空
空即是色
おはようございます。
百色紋様作家の石野です。
2022年になって、今までぼんやりしていた「やりたいこと」「やりたかったこと」の形がようやく少しずつ見えてきたこの頃です。
ありがたいことに昨年頃からオーダーやセミオーダーのご依頼をいただくことが増え、2022年、2023年分のご予約は全て終了させていただきました。24年以降は、オーダー、セミオーダーの受付は致しませんので、実質、現在いただいているご依頼分で終了となります。状況を見ながら、新規の受付は終了し、ご紹介をいただいたご依頼だけを承る予定です。
曼荼羅絵の中の全と一
さて、冒頭となりますが
色即是空
空即是色
という言葉を、聞いたことがあるかと思います。
私は中学生の頃の授業ではじめて記憶に残り、これはいったいどういうような意味を含む言葉なのだろう?と色々な本を読んだり、考えたりしてきました。
そうしていく中で、社会科の図鑑に出てくるような「曼荼羅絵」も目にしていきます。
曼荼羅というと、お釈迦様がたくさん描かれているタペストリーだよね、というくらいの印象だったのですが、調べていく、考えていくうちにで宗教的でもスピリチュアル的でもない、自分の心の在り方を考えさせられるようになりました。
曼荼羅絵というのは、(私の中の解釈ですが)この世界の全てで、描かれている宇宙であり、その宇宙は曼荼羅を見る人の心(魂)であり、その心は宇宙であるということのように感じます。
全てが人繋がりで境目のない、全てがひとつに繋がっている他人との境も時間も空間の境もない、全ては全てで、全てはひとつであるということが曼荼羅絵そのものだと思いました。
アニメ、漫画の鋼の錬金術師にも「全は一、一は全」というお話がありますが、それと同じことなんだなぁということに私なりに考えたりもしました。
だからといって、自分と他人を区別せず、あなたも私も全てはひとつで繋がっている!などと思いませんし、日常的に達観してそう考えたりはしません。
他人は自分とは違う存在と認識していますし、共感出来ない感情を受け入れるだけの器はなく、不条理なことに怒ったり腹立たしくあることもあります。
でも、そうした自分の中の短気な部分や粗っぽい部分、粗雑で覆い隠してしまいたくなるようなところを「これは自分ではない!仮初めの自分だ!」と切り離したり、認めないようにしたり、蔑んだりする必要はないということを知りました。
聖人君子のような皮を被って生活をし続けようとする方が私にとっては苦痛なのです。
コンプレックスの塊だった私としては大きな成長に繋がりました。
曼荼羅絵の中に見る「色」と「自己」
自分の醜い部分を認める、というより「べつに否定しなくてもいいじゃないか」と思えるようになったのは、曼荼羅を通して自分自身の感情の向け方や在り方を考えることが出来たお陰かもしれません。
感情や相容れないと思う自分が認識する心の色さえも、自分の中の一部であり全てであるとある意味ポジティブに捉えることが出来るようになってきました。
他人の感情や価値観に自分を否定してまで合わせなくても良いし、自分の考えを善であると他人に押し付ける必要もない。
腹が立つ自分を責めたり、卑下したり、貶めたりしなくて良いし、合わない人とは距離を置いていいし同調しなくてよい。
そうした、「自分が自分の心を守りながら自分として生きる」大切さも学びました。
曼荼羅の中にある「空」と「宇宙」
曼荼羅の中には
色即是空
空即是色
が描かれています。
小さな宇宙である自分と、大きな世界である自分の外側の全ては全て境界なく繋がっている。自分と違う個体や個性の差を持つ人との関わりの中で、自分の周りの世界が広がり、世界が広がりを持っていく。
異なる世界を掛け合わせることによって、ひとつの世界が拡大したり、多様性を持っていく。ひとりとひとりから成るものが、膨大な新しいものを生み出す面白さのようなものを感じました。
私が目指す「空」と「色」
私がこの事に気づいたのは、石と向き合い、色を大切に糸を編むようになってからです。
丸は丸でも、楕円なのか球体なのか。
四角は四角でも、正方形か台形なのか。
赤は赤でも、朱なのか緋色なのか。
緑は緑でも、若草色なのか萌葱なのか。
青は青でも、薄青あのか濃紺なのか。
ひとつひとつが「全てひとつで同じ」といっても、目に見えたり感じたり、触れたりする色合いは心と同じで千差万別です。人の個性や心、人格、在り方と一緒でひとつとして同じものはありません。
全てはひとつなのに、ひとつとして同じものがない個性であるというのは、本当に面白いなぁと考えます。
そして、それぞれの1つが持つたくさんの凝縮された個性を他のひとつひとつと掛け合わせることによって、またそこにしかない新しいバリエーションを生み出す。
それぞれが持つ小宇宙の心を、石と糸で紋様を編むという私なりの方法で目に見える形にしていけたらと思います。
百人百色の心の色を
糸と石で編み出す紋様作家
百色紋様作家 石野愛実
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