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人生100年80歳現役社会の生き方


#DIAMONDハーバードビジネスレビュー

半年振りぐらいにオンライン以外の飲み会に参加した。いわゆる人事関連ネットワークのメンバーで、既知のメンバーが多くお互いの手の内がわかっていたので、話は無礼講、トピックスもLGBTや障害者教育・雇用、果てはシニアスキーの話まで多岐に渡りF2Fの飲み会を存分に満喫した。

その音頭取りをされた方が飲み会の前に話があるという。新しい教育プログラムを立ち上げようとしていて、私にもコーチングやアセスメントに関わることに興味があるか、という打診で、お話を聴いた上で、お手伝いさせていただくことにした。

新プログラムのターゲット層は45歳から55歳の「イキイキしているミドル」で彼らが80歳まで現役で生きていけるように学び直しとスキル習得をサポートをする構想だ。ジョブマッチングは積極的にはやる予定は無く、あくまでも彼らが自主性を持って自己認識を深め、生涯にわたって稼ぐ力を身に着けるための気づき、学び方、立ち居振る舞い、潜在性を学ぶ過程にアカデミック領域・民間企業経験者・人事プロフェッショナルが寄り添っていくことを目指す。

定年を迎え再雇用が近くなって初めて自分の立ち位置や強み弱みを認識するのでは遅すぎる、と言われて久しいが、現実にはなかなかその準備は定年前になってもできていない。本来であれば再雇用以外の選択肢、起業・個人事業の開業や外部就職があるものの、結局これまでの延長線上の再雇用を選ばざるを得ない結果になりがちだ。

外部に新たな職を探す場合に、手に職のある人、例えば技術系で他産業でも通用するような普遍的な力を持っている人や経理財務など業態を超えた専門性のある人たちはそれほど困らない。一方、会社独自のノウハウが多くまた個人の力量がその結果を左右する営業職の人や専門性が身につかなかったゼネラリストの方は難しいことが多い。

その対策として、大手民間企業は40歳前後からセカンドキャリアに関するプログラムを提供することが多い。それでも彼らの多くはその年代は社内での潜在的な昇進に興味があり、自分自身のキャリアを真剣に見つめることが少ない。プログラムには必ず含まれる退職金の金額や役職定年後の給与額、年金支払額の試算といったファイナンシャルプランを直視するのが精いっぱいだ。

一方リンダグラットンの「ライフシフト」を日本で具体的に展開していこうとしている「ライフシフトジャパン」でこういった層のキャリアシフトの成功例を聴くと、それまでのキャリアとは全く異なる事業を始めるケースが印象的だった。農業や保育事業、NPO法人といった事業だ。

リンダグラットンの「ライフシフト」を読まれた方はすでにご存じの通り、こらからの人生は学習ー就業ー引退といった単線型のキャリアにはならず、こららの要素に加え個人事業や起業、NPO法人への関わりなど、複数の選択肢が人生100年のあらゆる局面で錯綜し複線化していく。

私自身個人事業を開始して、試行錯誤しながら新しいキャリアを築いている訳だが、これまでの経験やノウハウを活用したいという気持ちがある一方、残りの人生、全く異なる挑戦に没頭したい気持ちもある。援農や農福事業はその一つだ。

そういった複線型のキャリアプラニングには自己認識とキャリアに対するオーナーシップが最も大切だと思っていたので、今回のプログラムの対象としている45歳からでの気づきや学びでは遅すぎやしないか、というのが最初の印象だった。

それでも今回のプログラムをサポートしようと思ったのは、リンダグラットンが人生100年時代の複線型キャリアを提唱しようとも、メンバーシップ雇用で育った日本の多くの「イキイキしたミドル層」が「永遠の雇用対象者」を望むのが現実なので、まずは彼らと現場で向き合って本当に彼らのやりたいことを探索するサポートするのも良い経験だろうな、と思ったからだ。

コロナ禍でジョブ型雇用が脚光を浴び、その進展スピードには賛否両論があるが、大きな流れで言うと若年層の支持を受け、企業もその声に応えていかざるを得ないだろう。ましてや正社員にこだわらず多様な人財を積極的に活用していかねければ企業がイノベーションを起こすのは難しい。そのためにもジョブ型雇用へのシフトは進み、その結果メンバーシップを期待していたミドル社員は優先して企業からイグジットしていかざるをえないだろう。

このHBRのコラムでは「永遠の雇用対象者であり続けるために」として、起業家精神・自信・継続的な学習・継続的な改善の四点を挙げている。しかしこれらは雇用対象者を目指さない個人事業主・フリーランスの道を歩む場合でも必要なことだ。

もちろん先の手に職をある人たちのように、個々人が「永遠の雇用対象者」を目指す方が良い場合もあるだろう。その方が現実的だしリスクも少ない。

しかし本当に人生100年時代に何を自分の人生で成し遂げたいか、そしてそれが本当に「永遠の雇用対象者」なのか。そういった問いかけを個々人主体で考えてもらい、その人生のパーポスに耳を傾け、彼らのパーポス実現に寄り添いガイダンスを提供することができたら、新しい教育プログラムでの私の存在価値はあるのだろう。

「永遠の雇用対象者」であろうと他の道を歩むことを選択しようと、結局どちらの道も簡単では無いし、リスクはある。人生は他の誰かのためのものでは無い。最後は人生を終えようとするときに自分自身が後悔しないかどうかが大切だ。



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