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人材版伊藤レポートの社会実装に向けて


私も研究会に参画しコメントさせて頂き、昨年9月に発表された「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会 報告書」(通称人材版伊藤レポート)について、社会実装に向けた動きが始まっている。

既に「企業変革を促すための今後のアクションの方向性」として4つのアクションが発表されているが、これ以外にも5つ目のアクションとして「人材戦略に関する企業と投資家の対話の促進」を追加、またAction 4の「人材活躍度調査(仮称)」を2021年度に実施していく方向とのこと。

「人材活躍度調査(仮称)」は経営と従業員の双方に、経営陣のイニシアチブ、取締役会のガバナンス、経営戦略と連動した人材戦略(3P・5Fモデルをベース)、ステイクホルダーへの発信・対話の4つの切り口で実態調査を行うものだ。

経営陣と従業員の双方の評価にギャップがあればそれがあぶり出される。調査の結果は、強み・弱みの把握、自社状況の経年把握、他社状況との比較として参加企業は自社の立ち位置を把握でき、次のアクションに活かしていくことになる。

昨年末に経済産業省の担当者の方と主にこの「人材活躍度調査(仮称)」について意見交換をする機会があり、私からは以下の通りインプットした。

・経営陣と企業の本社・従業員という執行側の見方と従業員の見方のギャップをあぶりだすという点は賛成だが、さらに独立社外取締役の見方のギャップもあぶりだすのが望ましい。また本社部門という意味では、経営企画や人事部門に加えて広報・IRや取締役会事務局などを対象とした方が良いだろう。
・従業員と言う時に伝統的な製造業の場合、労働組合を実施対象に含むかどうかの問題があるだろう。一方企業価値と結びつけるという視点が従業員、とくにブルーカラーは現時点では希薄かもしれない。
・各社は従業員向けにはES(註:Engagement Survey、従業員意識調査)も実施しており、さらに従業員向けにこの調査を実施するとなると、両者の重複がある場合、役割の整理が必要となるだろう。
・既にサステナビリティレポートでGRIを活用している企業もあり、さらに現在話題となっている米SECやISO等人的資本開示へのグローバルな動向との整合性が無いと本調査の国内での普及は難しいだろう。

企業価値向上のための人材戦略の必要性は経営側の期待のみならず、投資家側からも今後プレッシャーがかかってくる。CHROの立場の人達は投資家を含む外部ステイクホルダーに説得力ある戦略人事の施策とその進捗状況を説明することがますます求められるだろう。

(本記事の内容についてより詳しくご相談されたい方はこのリンクからコンタクトください。人事の視点での企業ガバナンスサステナビリティ・CSR/ESG活動などのステイクホルダーへの社外広報指名・報酬委員会の企画と運営についてお手伝いいたします。)

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