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東京都現代美術館 / MOTコレクション「ただいま/はじめまして」@東京(日本)

東京都現代美術館は、建築、地域との調和、コレクション、展示テーマ等どれをとっても理想的な公立美術館だと思う。今回は、リニューアル当時2019年夏に足を運んだ展覧会の備忘録。

本展示は、各作家の解説パネルと共に複数の作品展示が連続するスタイルで、それぞれの作品に込められた意図やアーティストの一貫した軸を一つずつ理解しながら進むことができた。

絵画、木彫り彫刻、モビール、、、アーティストによって作品の形態も伝えたいメッセージもそれぞれで、ここまで多様な概念が多様な手法で表現されたものを包含する「現代アート」はやはり楽しい。展示を見終える頃にはコース料理を堪能したような満足感で満たされていた。
以下、特に印象に残った作品の感想を書き残す。

中園孔二<無題>2012

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サイズも大きく、劇的な色使いと相まってメッセージが強く伝わってくる。

中園孔二は油絵を中心にバリエーションに富んだ作品を制作し、25歳で亡くなった夭折の作家。「この絵が何なのかということを、説明することは基本的にできない」と自身が述べた通り、多くの作品が「無題」となっている。

この作品で気になったのは、視点の重層性である。全体に鮮やかに描かれるのは、炎で焼かれる人とそれをさらに痛めつける人、それをスマホで撮りながら傍観する人である。さらに複数の人の顔が奥にみて取れる。そして少し引いて見ると、手前に噂話をしているかのような、冷めた目の二人が浮かび上がる。直接的に痛めつける人とそれを傍観する人、現場から遠いところで議論してわかったつもりになる人、社会に溢れる様々なかたちの暴力を、鮮烈な印象を与える色で表現しているのだろうか。​

南川史門<Condition Check 11>2015

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これだけ単純化されても、しっかり特徴を掴んでいるので、瞬時にモナリザが脳裏に浮かんでくる。

作者は、看板など日常にある記号やイメージといった視覚情報から、そこに含まれる抽象性を抽出する作品を制作するそう。

この作品は、美術館のチェックなどではダメージとして扱われる傷や塗り間違いなどを作品として用いることで、作品が完成した後にそれが経験する外部環境を作品に還元し、時間という次元が表現されている。「芸術の完成」という概念の不確かさに思いを馳せ、二次元の絵画で四次元の時間の流れまで想起させるの発想が面白い。

荻野僚介<w15471×h771×d25>2010

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線の色の選択理由が気になる。

この作品は「二次元で三次元を表現する」ものである。題名はカンバスの縦横厚みの寸法であり、側面にも色が塗られ、カンバスが平面ではなく立体の物質であることを認識させる。単調な記号がカンバスの端まで続くことで、その外まで繋がっていくような、無限の平面が見えるような気がする。

おわりに

東京都現代美術館は3年のリニューアル期間を経て2019年にリオープンした。重層的な建築構造やスタイリッシュな造形もさることながら、建物全体やインテリアに木(や木風の材料)が用いられ温かみのある雰囲気が漂っている。芸術鑑賞後、我に帰り一気に疲労感に襲われることがあるが、そんな時にも癒される、心地良い空間である。

さらに敷地全体に、自ら足を運んで音と場の関わりを体感する、鈴木昭男制作のエコースポットが散りばめられている。まさに美術館そのものが芸術である。

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ホワイトキューブな展示室をダイナミックに区切る展示壁のおかげで、鑑賞体験に動きが生まれていた。
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すぐ隣の公園と合わせて子どもたちの遊び場となっていたモニュメント。

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