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COMICO MUSEUM@大分(日本)

日本芸術界の巨匠たちのコラボレーションの結晶は、ミニマムで洗練された空間だった。建築設計は隈研吾、サインデザインは原研哉、展示は杉本博司、村上隆、奈良美智。襟を正して向かいたくなる顔ぶれだ。

黒い焼杉による建物は、足を踏み入れた瞬間に気持ちを落ち着かせてくれ、アートと向き合う準備が整う。

1階:村上隆、杉本博司の対照性が際立つ静謐な空間

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手前側の杉本博司の作品群がモノトーンであるからこそ、奥の村上隆の作品群のカラフルさが際立つ。

1階の展示室はガラスで2つに区切られ、間には水が流れており、黒い壁に最小限のライティングがなされている。入ってすぐの展示室には村上隆のアートワーク。静謐な空間ではポップさがより新鮮に見え、メッセージ性が強調されるように思う。区切られた展示室間の移動のため外の庭を歩き、緑と水で感覚をリフレッシュしてから、杉本博司による各国の海のモノクロ写真の展示室へ。こちらは打って変わって静謐なこの空間に馴染んでおり、神秘性が増した作品に吸い込まれるような気がする。2名の作風のコントラストが興味深い展示構成だった。

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DOB君の三連作。陰影などが細かく描き込まれている。
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外を歩いて移動した新しい部屋は先ほどガラス越しにみた部屋なのに、より遠く感じる。

2階:開放的な観覧スペース

2階に登ると、アーティストたちのこれまでの展示会便覧が並ぶ観覧スペースで、全面ガラスからは、奈良美智作の白い犬がこちらを見つめてくる。さっきまでの神秘的な落ち着きから、無邪気だった幼少期のノスタルジーへ、スムーズに異なる感情が流れ込んでくる。

おわりに

日本人の感性に馴染む素材とミニマムな空間設計によって実現されたこのギャラリーは、それぞれのアーティストの異なる世界観に浸り、湧き上がる感情を十分に消化するのに最適な、絶妙なバランスの空間だった。

小一時間貸切状態で堪能し、匠たちのコラボレーションに圧倒されつつ、満たされた気持ちでギャラリーを後にした。

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