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近現代美術館@ストラスブール(フランス)

ストラスブールというアイデンティティ

ストラスブールは普仏戦争から第二次世界大戦にかけて、フランスとドイツが取り合った地域。その歴史的経緯から、アルザス地方の独特の意識と特徴を強く保ちつつ、欧州の統合の象徴としてEU議会や欧州人権裁判所等が置かれ、自ら「欧州の首都」を自認している(※ブリュッセルもそう自認しているし、むしろそちらの方が実態に近いように思われる。)。

フランスの大都市では、必ずと言っていいほど見つけることができる近現代美術館。ストラスブールにあるとなれば、街のコスモポリタンな雰囲気にあった風格を期待してしまう。そしてガラス張りの開放的で洗練された建物でありながら、風格あるコレクション展と意欲的な企画展が催されているこの美術館は、期待を裏切らない。

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1998年にAdrien Fainsilberとアトリエが設計

近現代美術の流れを学べるコレクション

ニキ・ド・サンファルの彫刻に迎えられた常設展がスタート。このエリザベスもナナシリーズの1つのようだけれど、踊らず凛と立っている。渡欧以来、ナナシリーズにはあらゆる旅先で会っていて、その度にこんな自由で活力溢れる女性でいたいと励まされる。

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Elizabeth (Nana), 1965, Niki de SAINT PHALLE

そしていきなり充実の印象派とフォービズムコレクション。
これまで見てきた印象派〜ポスト印象派の数々の絵の中でもお気に入りの、色の選択と大胆な筆のタッチが素敵なシニャックの一枚。ほぼパステルカラーで仕上げているのに、モチーフは夜なのだ。

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Antibes, le soir, 1914, Paul SIGNAC

続く展示はアール・ヌーヴォーの家具、ドイツ表現主義の絵画、抽象絵画などなど。。ヨーロッパの近代芸術の大まかな流れを感じることができる。

Rouge à lévres noⅡ, 1908, Frantisek KUPKA

抽象画、特にそのはしりであるカンディンスキーが一番好きな私がとてもときめいたのは、「Le Salon de musique」という、バウハウスにてカンディンスキーが企画した部屋を再現した場所だ。
音楽と同じように、絵画にも美しさを貫く理論があるはずだ、それを見つけたい!というカンディンスキーのいかにも学者らしい探究心には、私の中のオタク心が共鳴する。この部屋に入ると、計算された幾何学的な壁画と音楽に囲まれる空間は、さぞかし心地よかったに違いないと想像力が自然と働く。

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Le Salon de musique de Vassily Kandinsky

街の大スター、ギュスターヴ・ドレとジャン・アルプ

一方で、ストラスブールの誇り、ギュスターヴ・ドレとジャン・アルプのコレクションの充実度合いもこの美術館の魅力。
ジャン・アルプの彫刻の周りをぐるぐる回って、その滑らかな曲線と変化する丸っこいフォルム眺めていると、なんだかそれが生きているような、愉快な気持ちになってくる。そして、このホワイトキューブの展示室ではなく、草木の茂る公園て自由に動き回っている方が自然なような気がしてくる。

La Danseuse, 1926-1955 / Torse des Pyrénées, 1959, Hans-Jean ARP

フィナーレに近づくと、ロダン作、考える人に遭遇。一体君に会うのは何度目だろう?けれど、この彼は白くて大きい!
展示室の明るさや余裕を持って周りを回れるような展示の仕方もあり、今まで見た考える人(国立西洋美術館、パリのロダン美術館)よりも親しみやすさを感じた。

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Le Penseur, 1904, Auguste RODIN

おわりに

現代アートを含めればコレクション展はまだまだ続き、アプローチの異なる特別展も常に3-4個並行して催されており、一度では満喫しきれない。
ミニマルで透明度の高い建物とも合わさって、何度も通って作品に親しみたくなる、街での生活に溶け込む美術館だ。


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