アイドル文化のドア! - #2アイドル楽曲とシティポップ / City Pop Idol Songs
こんにちは。一推し!代表、一橋大学商学部の YOZONA です。
ついに夏休みが終わってしまいました
……という気持ちは忘れてしまいたいので、今日もアイドルソングを聴いております。
この「アイドル文化のドア!」は、アイドル文化に興味を持ってもらえるような、オタクなテーマだけどサラッと読める(つもりの)ブログです。
🚪本題に入ります
※このブログは10分で読めます。
今回のテーマは、アイドルソングの"楽曲ジャンル"です。数ある楽曲ジャンルの中から"シティポップ"を選びました。
「シティポップをアイドルソングでも楽しみたい」という方向けに、おすすめの10曲を解説付きで紹介しています!音楽の専門家ではないので、一種のエンタメとして楽しんでいただければと思います。
なぜシティポップを選んだのか?
今、日本のシティポップが海外で多くのリスナーを熱狂させています。そんなシティポップはアイドルソングと密接に関わってきました。そこで今回、昭和アイドルのオリジナル楽曲はもちろん、現代のアイドルソングやカバー曲まで紹介していきます。
シティポップって何ですか!?
最近サブスクのおかげもあり、海外で人気な"シティポップ"。海外のDJがクラブで選曲するなどして、その人気はますます広がっており、日本のメディアは逆輸入のように"シティポップ"を取り上げています。
wikiによる説明はこんな感じです。
上手く説明ができないのですが、簡単に言うと、'70s-'80sのキラキラした都会感とか洋楽志向のあるJPOPを"シティポップ"と呼びます。
ただ実際のところ、海外で言われる"シティポップ"の定義はもう少し広くて、この時期に制作された、似た音作りの楽曲すべてを指します。日曜日の朝に聴きたいような楽曲も、"シティポップ"に含まれます。シティポップはアバウトなジャンルです。
本当はもう少し詳しく説明したいのですが、今回は趣旨が趣旨なので、より詳しく知りたい方は以下記事をご一読ください。大変分かりやすく説明されております。
・シティポップ
・ネオ・シティポップ
今回紹介する楽曲はこちらです!
前説が長くなるのはマズいので、さっそく楽曲を観ていきます。今回は全10曲です。量が多いので気になったところだけ読んでみてください!
A. 元祖シティポップ - 昭和・平成初期
1. Wink 『SUGAR BABY LOVE』(1988)
日本語詞:Joe Lemon、編曲:鷺巣詩郎。鈴木早智子さんと相田翔子さんによる2人組アイドルグループWinkのデビューシングルです。この曲、ピンときた方がいらっしゃると思うのですが、有名な洋楽をアレンジカバーしております。編曲の鷺巣詩郎さんは『新世紀エヴァンゲリオン』『シン・ゴジラ』などのサントラを手掛けていらっしゃる方です。実はこの楽曲が特別というわけではなく、当時、洋楽の日本語カバーは流行りの音楽でした。このカバーの原曲は、The Rubettesの『Sugar Baby Love』で、Winkの前にキャンディーズもカバーしています。Winkは洋楽カバーブームの代表的アイドルグループでして、他にもこういった楽曲が何曲もあります。たとえば、相田翔子さんソロの『銀星倶楽部〜I’m In Mood For Dancing〜』なんかも有名どころのカバー曲です。単なる和訳ではなく、編曲が美しいところがポイントで、特に『JIVE INTO THE NIGHT』の編曲は、今まで聴いてきたアイドル楽曲でトップクラスに聴き心地が良いです。ちなみに『淋しい熱帯魚』はWinkのオリジナル楽曲です。
2. 中森明菜 『赤のエナメル』(1986)
作詞・作曲:竹内まりや。現代のシティポップブームの火付け人、竹内まりやさんによる楽曲提供です。イントロから耳に刻まれる音の心地よさが印象的なこの楽曲。アルバム『CRIMSON』の収録曲で、全10曲のうち半数の5曲を竹内まりやさんが作詞・作曲しています。その中でも『駅』は、ご本人がセルフカバーし大ヒットを記録したという背景があったりします。歌詞も、"作詞"をテーマにして語りたいくらい大好きでして、歌詞に出てくる彼との思い出の品は赤のエナメル靴とコロンだけなのに、なぜか恋愛の始まりから終わりを観ている気分になれます。そんな『赤のエナメル』も、竹内まりやさん自身が歌唱しているバージョンがありますので、気に入った方は併せて聞いてみてください。余談ですが中森明菜さんの楽曲だと、私は別アルバム収録の『LIAR』も好きです!
3. 岩崎宏美 『未来』(1976)
作詞:阿久悠、作曲:筒美京平。Spotifyで高評価のオープンプレイリスト「This Is City Pop」にあったので、このブログでもシティポップの括りに入れたのですが、この楽曲は海外の枠組み限定でシティポップと呼ばれるような楽曲かなと思います。日本と海外のシティポップの定義の違いが分かりやすいと思い選びました。ところで、作詞の阿久悠さんと作曲の筒美京平さんのタッグは巷でゴールデンコンビと呼ばれています。『シンデレラ・ハネムーン』も2人がタッグを組んだ岩崎宏美さんの楽曲です。阿久悠さんの作品には、『津軽海峡冬景色』『UFO』等。筒美京平さんの作品には、『木綿のハンカチーフ』『センチメンタル・ジャーニー』などがあります。調べていて私自身勉強になりました。
B. シティポップの再解釈 - 平成後期・令和
最近のアイドルソングでもシティポップを楽しみたいという方向けにセレクトしました。その前に、再解釈という言葉選びについて言及しておきたいです。前説で触れた通り、シティポップというジャンルは、明確な音楽的特徴は持たない、特定の年代に根ざす音楽ジャンルです。そのため、近年の楽曲でシティポップと分類される音楽は、当時のシティポップを再解釈したものだと考えるのが適切かなと思いました。一般的には、ネオ・シティポップと呼ばれることもある新音楽ジャンルも含めてご紹介します。
1. AKB48 『予想外のストーリー』(2018)
作詞:秋元康、作曲:SHAKEY/わたなべしゅうじ。この楽曲は、AKB48楽曲に対するイメージを大きく広げてくれた1曲です。楽曲はミドルテンポで、しっとりとしたバックコーラスにミュージック、そしてフィルターがかけられているのか、声量は抑えめです。AKB48グループの中でも、歌唱に定評のある選抜された8名による楽曲でして、その名もボーカル選抜。この楽曲は音楽番組で生歌披露されたことで話題になりました。「ボーカル」選抜というネーミングや生歌披露は、コンセプトをシティポップのイメージに近づけるためのものでしょう。
2. 私立恵比寿中学 『シングルTONEでお願い(Prod.ポセイドン・石川)』(2019)
作詞・作曲:ポセイドン・石川。山下達郎さんのモノマネで人気のポセイドン・石川さんが手掛けた王道シティポップ再解釈曲。日本コロムビア所属です。エビ中のチーフマネージャー・藤井ユーイチさんがポセイドン・石井さんのファンであることがきっかけで実現したコラボだそう。ちなみに、「Prod.」というのは「produced by」の略語なので、ポセイドン・石川さんによるプロデュース曲ということです。この楽曲が収録されているアルバム『playlist』は、そのほか豪華な作家陣による多種多様な楽曲で構成されております。作家陣には、石崎ひゅーい、マカロニえんぴつ、ポルカドットスティングレイなどが名を連ねています。まだアルバム特設サイトが残っておりましたのでこのブログに載せておきます。
3. IZ*ONE 『Merry-Go-Round』(2020)
作詞:혼다 히토미、作曲:정호현(e.one)、編曲:정호현(e.one)。KPOPからも2曲紹介していきます。2016年以降になると、韓国ではシティポップブームが高まります。ブームのきっかけは韓国人DJのNight Tempoによる『プラスティック・ラブ(竹内まりや)』のリミックスがリリースされたことと言われております。そんなブームの中で、IZ*ONEが楽曲にシティポップを取り入れたのが、アルバム『幻想日記』に収録される『Merry-Go-Round』です。先に紹介した日本アイドルの2曲に対し、昭和シティポップのイメージは強くありません。これがネオ・シティポップと呼ばれるジャンルです。ちなみに、作詞の혼다 히토미さんですが、その正体はメンバーの本田仁美(現在はAKB48 Team8)さんです。
4. Yubin 『淑女』(2018)
作詞・作曲:Dr.JO。Wonder Girlsのメインラッパーとして活躍されていたキムユビンさんのソロデビューシングル曲です。先ほど紹介した『Merry-Go-Round』よりも、さらに日本の定義でのシティポップに近い楽曲だと感じています。曲中のPluck音のリフ(ポッポッ鳴っている音です)が好みということもありますが、この楽曲で特に面白い部分がバックコーラスの「yeah!」です。バックコーラスに「yeah!」が多用されており、シティポップの中にもKPOPらしさを感じます。この曲ですが、デジタル配信のみでCDでの販売はないようです。
C. 編曲が秀逸 - カバー楽曲
私的に特に推したいのが、このシティポップカバーです。名曲はリミックスなりカバーなりされると、ほぼ必ず批判が付いて回ります。そんな障壁を乗り越えてリリースされ、むしろ多くの高評価を得ているカバー楽曲たちを紹介していきます。
1. つりビット 『踊ろよ、フィッシュ』(2014)
作詞・作曲:山下達郎、編曲:前嶋康明。1曲目に紹介したいのが「つりビット」の『踊ろよ、フィッシュ』です。惜しまれながらも、既に解散しているグループです。とはいえ、初めて聴いた時の衝撃が忘れられず、今でも定期的に聴きに戻る楽曲です。超絶技巧の編曲により完全にアイドルソングとなったシティポップでして、初見時の私はしばらくの間オリジナル楽曲だと思っておりました。編曲の前嶋康明さんは、ハロー!プロジェクトの数々のアイドルソングを編曲、SMAPの「ありがとう」編曲にも関わっております。そしてこの楽曲は、山下達郎さんご本人が出演するラジオ番組で紹介されたこともあり、その時のつりビットのツイートがこちらです。
MVについても少し触れたいことがありまして、冒頭ラジオ調の曲紹介から始まるのですが、そのMCを担当していらっしゃるのは、FM NACK5「FUNKY FRIDAY」の小林克也さんです。ここまでカバー楽曲の世界観を徹底されるとアイドル文化ファンとしては幸せすぎてニヤケが止まりません。
2. juice=juice 『プラスティック・ラブ』(2022)
作詞・作曲:竹内まりや、編曲:Anders Dannvik。海外人気の高い、竹内まりやさんの『プラスティック・ラブ』のカバー曲です。juice=juiceの楽曲としては、『DOWN TOWN(シュガー・ベイブ)』のカバー(同編曲者による)に続く、シティポップカバー2弾目のような位置づけにあたります。そして、編曲者の名前を見てください。海外の方です。日本の元祖シティポップを海外の方にアレンジしてもらうというのは今風な取り組みだと思います。結果として、このカバーはネオ・シティポップと呼ばれるジャンルに位置付けられる楽曲になっております。Anders Dannvikさんはスウェーデン人ですが、私には知識がなく、どうしてハロプロはこの方に編曲をお願いしているのか気になり調べてみました。実はAnders Dannvikさん、ジャニーズに楽曲提供していたりと、日本でお世話になっている人は多いであろう音楽家みたいです。さらには、アンジュルムの『ミラー・ミラー』の作曲にも携わっておりました。補足ですが、このカバー曲も山下達郎さん出演のラジオ「サンデーソングブック」で紹介されています。
3. フィロソフィーのダンス『君は1000%』(2022)
作詞:有川正沙子、作曲:和泉常寛、編曲:SHOW。百聞は一見にしかずという諺があるのなら、百読は一聞にしかずがあっても良いはず。とにかくこの楽曲は一度聴いていただきたいです。1986オメガトライブの名曲『君は1000%』のカバーです。今年(2022)の8月にリリースされたばかり。まだ有名ではないからこそ知ってほしい。イントロ、歌い出しでグッと引きこみ、最後まで期待を裏切りません。本当に素晴らしい作品です。グループのプロデューサーを務めるのは、ソニー・ミュージックエンターテインメント所属の加茂啓太郎さん。加茂さんは、ウルフルズ、氣志團、NUMBER GIRL、フジファブリックといったバンドを発掘育成してきた経歴の持ち主です。余談ですが、1986オメガトライブの「1986」の読み方についてマニアでも意見が分かれるそうで。ブログ冒頭で記事を紹介したDJのNight Tempo(本日3度目のご登場)曰く「ナインティーンエイティシックス」が正しいみたいです。
締めに入ります
今回は"楽曲ジャンル"がテーマでした。作曲、編曲の紹介をメインに紹介してみたつもりです。アイドル文化はエンタメクリエイターのアベンジャーズと呼んでも過言ではありません(と思っています)。関わっている人たちの数が想像以上に多く、ひとり一人が強力です。だからこそアイドル文化には様々な楽しみ方がありますし、奥深さがあります。
それでは以上、「アイドル文化のドア! - #2アイドル楽曲とシティポップ」でした!
最後まで読んでくださり、ありがとうございます。
次回は9/21(水)の予定です。