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「誰にも似ていない音楽」を求めて… 突然段ボール、吹萬 chui wan
今まで聴いたことがない類の音楽をひたすらさがして中国実験音楽を偏聴するこの頃だがやはり吹萬 chui wan の3枚目のアルバムは名作だと思った。
音楽ジャンルについて思うのだが、例えば、バンド「突然段ボール」はどこかのジャンルにまとめることができるだろうか。
日本のニューウェーブ…。そうか、確かにディスクユニオン売り場ならそうなるのだろう。
しかし、突然段ボールの「イカ天」での蔦木兄の表情を私は忘れられない。
「イカ天」(1980年代後半にテレビ放送されていた深夜番組)審査員が
突然段ボールの演奏後、彼らの「音楽ジャンル」についてコメントした。
「ニューウェーブのような」とかなんとか。
突段(突然段ボールの略称)兄は番組内で風呂桶を逆さまにしたものを打楽器として叩いていた。
その姿は(リアルタイムで見たわけではないが)すさまじく格好よかった。
審査員席に並ぶ80年代「文化人」風の評論家たちは、(テレビなので当然で仕方ないことだが)当時の世相や時代に合致した思考や感覚をしていると思った。
演奏者が時代を超えていて、審査員たちがつまり(振り返って見ると)当時の時代そのものに見えた。
突段は蔦木兄、弟の二人ユニットだったのだが、彼らの音楽を「ニューウェーブなんたら」と審査員に簡単に要約されたとき、蔦木兄の表情が「何言ってんだよ」と悔しそうに見えた気がした。
突然段ボールは「突然段ボール」という音楽ジャンルである。
アバンギャルド、前衛音楽、実験音楽、ポストパンク、ニューウェーブ…しかし、突然段ボールは突段なのだ。
私が強烈に惚れ込んでいる突段のシングルに「デラックス・シングル」という傑作がある。CDの帯には〈狂人ロック〉と、まことに正鵠を得たジャンル表記がされていた。
突段、弟(ギターや電子音担当)の蔦木俊二氏の即興ギターアルバムもすばらしいのである。
唯一無二の音楽を聴きたいのでおれは突段(関連)アルバムを聴き続けている。
中国実験ロックの吹萬 chui wan 、そう、彼らの音楽も突段のように「誰にも似ていない音楽」なのである。
突段風の音楽、は存在しない。
突然段ボールを聴くしかない。
吹萬 chui wan も、その種の音楽だ。誰にも似ていない音楽である。