『医療にまつわるお金の話』 Report!
7月19日(日)に行われた『 医療にまつわるお金の話』の様子を簡単にレポートさせていただきたいと思います。
2020年第3回目となりましたオンラインセミナー!今回のテーマは医療従事者にとって避けては通りないお金の話です。
当日の熱き様子を頑張ってお伝えしていきたいと思いますので、最後までどうぞよろしくお願いします!
1.本日の講師 〜岩本修一先生〜
今回のセミナーは、医師(総合診療医/麻酔科医) および経営コンサルタントとしてご活躍されている岩本修一先生をお迎えしました。
岩本先生は2008年に広島大学医学部医学科卒業されたのち、福岡和白病院で初期研修医を開始されました。2010年に東京都立墨東病院で麻酔科医として勤務し始め、2012年には神奈川県川崎市のクリニックで内科医されます。また、2014年にはなんとあのプリンセス・クルーズ社で船医をされ、広島大学病院で総合内科・総合診療科の助教も務められました。
その後2016年にはハイズ株式会社に入社し経営コンサルタントとして勤務、
2020年にはおうちの診療所を開業、㈱omnihealの経営にも参画されています。略歴をご覧いただくとわかるようにかなり多方面にご活躍されている先生で、僕自身本当に尊敬しています!
2.本セミナーの目標
本セミナーでの目標として先生が強調されていたのは、
「お金の基礎と医療政策および医療制度の概要を知り、 症例について経営と政策の視点でも一度考えてみる」
というものでした!
学んでいく内容としては大きく分けて以下の3つ。
• お金の基礎を知る
• 医療政策と医療制度の概要を学ぶ
• 臨床・経営・政策の3つの視点で症例を検討する
これらについてわかりやすく、そして面白く様々な喩えを用いて説明してくださいました。
個人的に印象深かったのは、特に3つ目の、臨床・経営・政策に医療の三層構造を意識することでお金の流れはわかりやすくなるなと感じました。
3.社会保障とお金
医療従事者にとって、普段あまり深く意識せずに日常的に使っている保険という言葉…僕自身ももれなくそんな医療従事者の一人でした。
保険、社会保障、社会保険などの用語についてまずは学んでいきましょう。
そもそも保険とは
偶発的な事故によって生じる経済的リスクに備えて、多数の人がお金を出し合い、 その資金によって事故が発生した人に
保険金を給付するための仕組みのこと
であり、社会の「リスク分散の仕組み」です。
また、 大きく分類すると保険に該当する、社会保障とは産業革命時代にビスマルクが考案した「稼ぎ手が働けなくなっても一家離散にならないための施策」であり「防貧で国を安定・発展させる仕組み」のことなのです。
こういった社会保障を実現するためには、十分なお金が必要となります。
社会保障の財源のための制度、それが「社会保険制度」なのです。
給与明細の「社会保険料」はこれにあたり、日本には5つの社会保険制度があります。この中でも医療保険が我々医療従事者になじみ深いものですね!
まとめると、社会保険制度は「社会保障を支える財源」であるといえますね。
そしてこのテーマにおいて知っておかないといけないのは世界と比較した日本の医療の特徴です。
日本の医療の特徴は「国民皆保険制度」と「フリーアクセス」に集約されます。
〈日本の医療制度の特徴〉
① 国民皆保険
すべての国民が公的医療保険に加入しなければならない
② フリーアクセス
どの医療機関でもどの医師にでも自由に受診できる
本質的には「所得や地域にかかわらずバリアフリー」
わかりやすく言うと「みんなでお金を出し合ってみんなが等しく受けられる」ということです。この2つをセットで行うことで日本の医療は実現されているんですね!
4.日本の”お金”と医療政策
これは、日本の財政の現状や名目GDPに対する債務残高を示したグラフです。このように日本がここまで借金を積み上げた原因は何でしょう?
1つの大きな原因としては、増え続けている社会保障費です。
先ほど書きましたように、元々社会安定のために整備された社会保障は、現在日本を含む多くの先進国では膨大な社会保障費として国の財源を圧迫しています。すなわち「社会保障費の抑制」が至上命題となっているのです。
そんな命題を解決するための日本における医療政策の二本柱として注目されている地域医療構想と地域包括ケアシステムを以下にまとめました。
〈日本の医療政策の二本柱〉
① 地域医療構想
「地域医療を崩壊させることなく、病床を減らそう」
② 地域包括ケアシステム
「これまで入院していた人を在宅でみていこう」
つまり、社会保障費を抑制するために入院患者を在宅でみられるように変えていくという事です。一方で、身体的な要因によって日々の生活の支えが必要な虚弱高齢者と呼ばれる方々をを救うための政策でもあります。
5.病院経営と”お金”
利益の方程式
利益 = 収益 - 費用
※「収益」は「売上」ともいう
※「費用」は「コスト」ともいう
まずは一般的な利益についての話となりますが、利益の計算は単純化すると上記の式に集約化されます。これを病院経営に当てはめてみると、
このようにまとめることが出来ます。ここで病院経営の利益を考える上で重要な、病床利用率と病床稼働率について考えていきましょう。
僕も知らなかったのですが、会話中の「稼働率」は、病床利用率を指すことが多く、実は本当の意味では使い間違えている言葉なんですね…!
この概念を踏まえて再び入院による収益を考えてみると
入院収益 = 入院単価 × 病床数 × 病床稼働率
POINT:病床数 × 病床稼働率= 稼働病床数
と式にまとめることが出来ます。日々、病院の上層部の方々が病床稼働率を気にされているのは入院の収益にここまでダイレクトに関わっているからなのですね。
入院収益について考えるとき、もうひとつ大切なのがDPCです。
入院した際の単価は以下の式で計算されて算出されています。
そして、このDPCの点数は入院日数に応じて以下のように減っていくのがミソです。
病床稼働率を上げたうえで、入院日数を短くする早期退院を促すのが病院経営の基本となることがご理解いただけましたでしょうか?
6.症例を検討してみよう!
ここからは、実際の症例をもとに参加者みんなで話し合ってみましょう!
どれも実臨床で悩ましい症例ばかり…これらの内容について
1)臨床の視点で
2)経営の視点で
3)政策の視点で
で討論しあいました。医師、PT、大学院生など様々な背景を持つ参加者それぞれで議論して出てきた意見はどれも個性的でした!
密度の濃く、面白いディスカッションとなりました。
7.診療報酬
次に、診療報酬の構造についても考えてみたいと思います。
大きく分けると上記の3つに分類することができて、なかでも実施分については医者が必要に応じてオーダーした実施分だけ発生することとなります。
今回、こういった普段あまり意識することのない診療報酬(コスト)をわかりやすくメニュー表にまとめてみました👇
僕たち医療従事者含め、受診される患者さんも各検査に応じてどれだけの診療報酬(コスト)がかかっているのか知ることは本当に大切です!
8.開業って儲かるの?
最後に、医師にとって気になるテーマでもある「開業って儲かるの?」についてまとめていきたいと思います。開業に関する気になる数字は以下を参照ください👇
1日外来患者40人で年収2300万円相当
• 外来診療所の患者数の目安は「40人/日」
• 患者単価5,200円, 月25営業日とすると、売上は「520万円/月」
• 医薬品と材料の原価を10%とすると売上原価は52万円/月
• 人件費は看護師1名 (30万円/月)、事務2名 (22万円/月)とすると、
74万円/月(院長給与を0円とする)
• 賃料や減価償却費、委託費など204万6,500円
• 以上より、医業利益は「190万円/月」
~参考:診療所経営の教科書 第2版
僕自身開業についても興味がある内容だったのでこれらの数字はとても興味深かったです…!
そして、開業についての現状についてまとめたものを見てみましょう。
このように開業は夢がある一方で外部環境のリスクや人材マネジメントなど、様々な不安定要素やリスクも多いのがわかります。どの診療科で開業するかにも左右される点もあるとは思いますが、
自分の提供したい医療と、開業というビジネスモデルのずれを意識した病院設計ができるかが大切であると岩本先生も述べられていました。
9.まとめ・次回予告
いかがでしたでしょうか!今回は『 医療にまつわるお金の話』をテーマとしたオンラインセミナーについての活動報告をさせていただきました。
今回のセミナーの動画をご覧になりたい方はコチラをクリック👇
今後もHBDではこういった医療従事者の興味を引くようなテーマでの勉強会を開催してまいりますので、興味がある方は是非参加してみてください◎
次回8月のオンラインセミナーは臨床で使える情報整理術をお届けします!
申し込みはこちら👇
告知動画については以下をチェック👇
今後もワクワクするようなセミナーやnote記事作成に励んで参りますので、この記事を読んで面白いなと感じてくださったかたはスキやフォローなどしていただけたら嬉しいです!皆様のリアクションが励みとなります。