『臨床で使える情報整理術 #アップデート2021』
今回は2021年12月04日(土)に開催させていただいた『 臨床で使える情報整理術 #アップデート2021 』の様子を簡単にレポートさせていただきたいと思います!
今回のテーマは、昨年度もかなり好評であったテーマの1つ、医療従事者にとって避けては通れない情報整理術の話です!
当日の熱き様子を頑張ってお伝えしていきたいと思いますので、最後までどうぞよろしくお願いします!
1.本日の講師 〜徳毛健太郎先生〜
今回のセミナーは、HBDのファシリテーターとしても大活躍されている、医師(専門は呼吸器内科、臨床腫瘍学) としてご活躍されている徳毛健太郎先生をお迎えしました!
徳毛先生は初期研修医の頃、
疑問に思ったことを調べてノートにメモしたり、診療に役立つ情報(診断基準、薬剤の投与法、抗菌薬の使い方など)を手帳に書いて持ち歩いていたそうです。
しかし、メモが増えた手帳や研修医向けのマニュアル本など、持ち歩くべき情報はキリがありません。
書き溜めた手帳で白衣のポケットはパンパンになってしまいます…。
一方で手元に手帳やマニュアルが無いと業務中に不安になってしまうので、何か情報を整理して持ち運ぶのに便利な方法はないかと考えられていました。
そんな中、ある研修医向けの医学書にEvernoteが紹介されているのを見て、新たな医学情報整理の方法として、研修医の同期の先生方と一緒にEvernoteを使い始めたそうです!
以来、徳毛先生はEvernoteを軸とした情報整理の方法を模索するようになり、日々試行錯誤しながらブラシュアップしておられます。最近ではEvernote以外のツールも活用されているとのことでした!
そんな効率的な情報整理の様子を間近で見られた同僚や知り合いに、自分のEvernote情報整理のノウハウを伝える機会が増えてきたそうです。
今回はそんなまさに情報整理大臣ともいえる、徳毛先生より医療従事者の情報整理にとって最適なツールの一つであるEvernoteや、その他便利なアプリについて徹底比較していただきながら解説いただきたいと思います!
2.情報過多社会を生きる医療従事者に必要なもの
現代はまさに、情報過多社会です。
インターネットが完全に社会に定着し、SNSなどが発展してオンライン上で多様なコミュニケーションが取られる様になった昨今、私達の周りには様々な情報が飛び交っています。
新しい情報をすべて覚えておくことはできませんし、そもそもそんなことをするのは無駄でしょう。
これからは記憶に頼りすぎず、基本要素や原理を体系的に理解した上で、
必要な情報を適切に得て記録しておく能力、そしてそれらにスムーズにアクセスする能力が重要になるのではないかと思います。
これは医療従事者としての視点で考えても同様です。
医療技術の発展も相まって研究や治療開発が進み、近年医学知識・情報は凄まじいスピードで増え続けています。
無数の医学知識・情報の中から効率的に必要な情報を得て、それを上手に整理して記録し、素早くアクセスできるようにしておくことで、
診療に活用したり新しいアイディアを生み出すなどのアウトプットにつなげることができます。
記憶に頼りすぎない効率的な情報整理は、医療従事者にとっても大いに役立つ能力の一つであるといえますね。
今回は情報収集とインプットの具体的な手順について解説いただきました!
3.情報収集で注意すべきこと
このように情報収集は医療従事者にとって大切である一方で、注意しなければならないこともいくつかあります。
例えば、発信されている情報の裏には常に何かの思惑があるということを念頭に置く必要があります。
そして、情報は発信者により変化することを意識しておきましょう!
自分が手に入れた情報が、果たして事実に関する客観的情報なのか、それとも発信者の主観的情報なのかを区別することが肝要です。
例えば以下のように、客観的な情報ですら、人を介して発信されると違った伝わり方をするし、ときにバイアスが差し込まれることがあります。
以下のようなバイアスまみれの記事や報道を例に、いかに客観的に情報を解釈するかを学びました👇
これらの情報の解釈にはEBMを実践する上でも有効な手段の一つ、PICOを用いることができます。
疑問を定式化する際に有用なPICOの復習は上記の通り。
例えばこれをイソジン問題に当てはめてみると…
いかがでしょうか?こちらをご覧いただくだけで、そもそも研究対象がCOVID19陽性患者さんであり、
イソジンがCOVID19感染予防に有用かどうかこの研究では議論することはできない
と判断することが出来ますね。
このように、現代は情報が獲得しやすい反面、様々な意図を持った発信者やバイアスによって誤った解釈をしてしまうことも多いといえます。
情報を常に批判的に吟味する心構えで、この情報過多社会を生き抜くことができる医療従事者になりましょう。
3.情報収集の方法
情報の吟味について学んだあとは、いよいよどのように情報収集を行っていくかについて学んでいきました。
まずは、自分が知りたい情報は何なのかを改めて確認することで、自ずとどのように検索するかは決まってきます。情報収拾のキモは、どこにアクセスすべきなのかを知ることなのです!
自分に必要な情報が手に入りやすいルートを知っておくと、効率よく情報収集ができます。そして、大量の情報の中から必要な情報、質の高い情報を選別することを意識しましょう。
そして、徳毛先生自らPubmedやGoogle Scholarなどを用いての情報収集を、画面共有いただきながら実演していただきました。
普段悩んでいることや、上手く行かないなと思っているところを具体的に解説していただき、まさにかゆいところに手が届くレクチャーとなっていました◎
そして登録されたWebサイトのRSSを定期的にチェックして、最新情報を自動的にピックアップし表示してくれるツールであるRRSリーダーに関しても解説いただきました。
RRSリーダーの中でも人気の高いFeedlyを中心に、徳毛先生の実演をいただき、効率の良い情報収集のコツをみんなで学びました!
4.情報のインプット(Evernoteを中心に)
そして後半は、情報のインプット方法として人気の高いアプリ「Evernote」についての解説をいただきました。
「Evernote」とは、
自分の本棚付きの書斎をまるごと詰め込んで端末で持ち歩くことができる
いわば、ドラえもんのヒミツ道具のようなアプリなのです。
このアプリを使いこなすことで、大量の紙資料をファイリングしたり、ノートやメモをポケットやかばんに入れて持ち歩く必要はなくなりました。
今回はそんなEvernoteを活用する場面を実際の臨床現場を例に、臨場感を持ってレクチャーいただきました。
様々な患者さんを目の前に疾患や治療方法について悩むのは、医療従事者ならではのあるあるだなあと感じながら、いかに効率よく情報を引き出すことができることが大切なのかを学びました!
さらに、原稿執筆のための情報収集や整理にもこんなに効率よく活用する事ができるのだと知り感動しました。今回学んだノウハウを、今後も自分は活用させてもらいたいです!
最後に、今回教えていただいたいくつかEvernote整理のコツをピックアップして紹介させていただきます。
5.Evernote整理のコツ「ノートにメタ情報を残す」
ノートを保存するときは、検索に役立つ付帯情報を意識的に加えておくことが大切です。
そうすることで後に検索するときに引っかかりやすくなるのでとても便利になります。
Evernoteを情報の保存スペースとして使用する場合、後に検索してその情報にアクセスするとき大切なことは、素早く簡単にアクセスできることです。ノートの数が増えてきても、
あらかじめ付帯情報を加えておけば検索した際に関連したノートが引っかかりやすくなるため、検索した際に思いもよらなかった発見やノート間の繋がりに気づけることがあります。
【付帯しておくと便利なメタ情報】
(1)情報の出所
(URLはwebクリッパーを使用すれば自動で保存されます。本・文献の情報は、あとから引用するときに重要なので、保存資料に明記されていない場合は、自分で記載することをおすすめします。)
(2)日時・場所
(自動で登録もされますが検索に手間かかるので、会議やセミナーのメモなど、日時・場所が重要になる場合はノートに記載しておくと検索で引っかけやすいです。)
英語資料の場合 → 英語タイトル+日本語タイトル(日本語で検索しても引っかかるようになります。)
(3)重要点の要約
(要約内のキーワードも引っかかることで、検索時に引っかかりやすくなります。)
6.Evernote整理のコツ「IN-BOXノートブックを作る」
ノートを保存するとき、まず最初にIN-BOXノートブックに保存しておくことをお勧めします。
IN-BOXとは“書類受け”や“受信箱”のこと。
ノート保存時に毎回ノートブックを指定して保存しても問題はありませんが、IN-BOXノートブックを作っておき、原則すべてのノートは一旦ここに突っ込んでおくほうが良いと思います。
そしてある程度IN−BOXノートブックないのノートが溜まってきたら、その時点でに内容を確認し、各ノートにタグを付けたり追加情報を加えて、それぞれ適切なノートブックに振り分け作業を行います。
この方法を取るようになってから一段とEvernoteが有効に使えるようになったと実感しています。
理由は以下の通り。
理由①:保存時に何も考えなくて良い
何かノートを保存するとき、保存先のノートブックをどうするか、タグはどうつけるかなど、後々に情報を引っ張り出しやすくするための整理が必要です。
しかし、それを毎回保存ごとにやるのはちょっとした手間だし、作業のテンポが崩れてしまう可能性があります。
IN-BOXノートブックに入れることで、保存時に「この情報は保存しておこう!」ということ以外は特に考えることもなく保存できます。
理由②:ノートの中身をダブルチェックできる
IN-BOXに入れておき、時間をあけてから整理することにより、保存時&整理時の2回ノートの中身を確認することになります。
保存時には必要だと思った情報も、2回目確認すると不要だったり、過去に同様のノートを保存済みだったりすることがあります。
その場合はノートを削除したり、過去のノートと統合するなどの作業を行う機会になります。
理由③:より体系的な整理が可能になる
少し時間をおくと同じ情報もより客観的に見れたり、理解が進んだりすることはよくあります。
そのうえでタグ付けしたり、メタ情報を加えて、ノートブックに振り分けていったり、それらを踏まえて新しい整理方法・整理ルールを考えついたりすることがあるので、より体系的に整理できる可能性があります。
6.まとめ・次回予告
いかがでしたでしょうか!
記事に書いた内容以外にも、実際にRSSや各種ノートアプリを使用した実践レクチャーも盛りだくさんでした!きっと参加してくださった皆さんは満足してくださったのではないでしょうか?
次回のHBDセミナーのテーマは、敗血症診療についてです!
今後もHBDではこういった医療従事者の興味を引くようなテーマでの勉強会を開催してまいりますので、興味がある方は是非参加してみてください◎
今後もワクワクするようなセミナーやnote記事作成に励んで参りますので、この記事を読んで面白いなと感じてくださったかたはスキやフォローなどしていただけたら嬉しいです!皆様のリアクションが励みとなります。