#000B00/2025.01.13
私は、実父のことが大好きだ。
よく年頃の女の子は、父親を嫌う時期があるという。
臭いと言ったり、2人で歩きたくないと言ったり、下着を同じ1回の洗濯で洗って欲しくないと言ったり。
私はそういう経験がないから、あまりよくわからない。
父親とは本当に顔が似ていなくて、別人みたいだ。
昔は、私が学校帰りに図書館で勉強した後
父も学校から車で迎えにきてくれて、そのまま2人で
夜中にラーメンを食べに行ったりもした。
なんせ顔が似ていないので、いわゆる"エンコー"みたいな目で見られることもよくあったけれど、私はそれでも父が好きだった。
私の父は、普段は教員をしている。
授業中に、よく娘である私の自慢をするらしい。
(娘は絶対音感があるんだとか、当時の父の生徒は皆知っていたらしい。恥ずかしい。)
また授業の応用として、楽しい実験をよくしたらしい。
生徒を楽しませるために余念がない人で、
「市内のスーパーを巡ってすべての烏賊を買い占めた🦑」
と聞いた時は、さすがに頭がクエスチョンマークでいっぱいになった。解剖に使ったみたい。
結構、生まれ育った環境や過去が複雑な人なので、
幼少期から1人で何かすることが多く、
家事は一通り全部できたそうだ。
だから、几帳面に掃除もやってのけるし、
いつも少し塩気の多い料理も美味しい。
私は、母が不在の日に父が作ってくれる
パラパラご飯のオムライスが大好きだった。
父親に関して、唯一嫌なところと言えば
私が美術館好きなので、よく展示が変わるたびに付き合ってくれるのだが、大抵の絵を見て「俺でも描ける」ということくらいだ。
(実際絵は美味いのだけれど、思っていても言わないでほしい。理科の図式ではないのだから。)
少し短気で、きっと人に言えない沢山を抱えていて
その分、周りをユーモアで笑顔いっぱいにする
不器用で、ちょっと変で、かっこいい父親だ。
何故きょうは父のことを書き連ねているのかというと
父が、学生時代から活動しているバンドで、街のイベントにステージ出演した動画が送られてきたのだ。
父ははギターボーカルを担当している。
(ちなみにバンド名は伏せるが、検索すると一番最初に競走馬の情報がヒットする)
悔しいことに、この人は楽器も歌も結構上手い。
私の実家は、一度引っ越しをしているのだけれど
新築する前の家は、今の家の3倍くらいの広さがあって
別にプレハブと祖父の仕事場の倉庫があって、
プレハブな中に、ボロボロのスタジオがついていた。
完全防音というわけではないけれど、
アコースティックギター5本、エレキギター1台、
ドラム2台、シンセサイザー2台、ベース1台、
あと古い電子ピアノがあったと記憶している。
周囲に家があまりなかったので、ほとんど影響はなかった。
幼い頃、よくバンド部屋(と私は呼んでいた)に勝手に入って、シンセサイザーをいじって遊んでいた。
私がピアノを始めた所以はここにあったりする。
ここによくメンバーで集まって、夜な夜な練習していて
私がピアノを弾きに行くと、隣で勝手にハモってきて
真剣に練習してるからやめて!と言ったこともあった。
今考えると、すごい環境に住んでいたな、と思う。
私は、自分が表現したいことが何かわからないまま
今でもずっと様々手をつけてはもがいているけれど、
父のバンドの演奏を全部聴いて、歌う姿を焼き付けて、
上記に述べた幼少期の実家の思い出だったり
私の夢を心から応援して、いい先生を紹介してくれたり
どんなに悪天候でも、かなり遠いピアノ教室まで送り迎えをかかさなかったりしたことが
走馬灯のように蘇ってきて、涙が出てきた。
私には才能がないと父親に八つ当たりしたり
全てに疲れて暫く学校やレッスンをサボってみたり
色々あったけれど、父はいつも黙って傍にいてくれた。
今でも、私のやることは全て、
「やっぱお前、やるなぁ!」と言ってくれる。
やっぱり、表現者ってすごくカッコいいな、と思った。
私も、目の前の手を止めてはいけないのだと、強く思った。
年末に一緒に買いに行ったロングレザーのコート
艶々の嘴した烏みたい!と言っていたけれど
渋くて、とてもよく似合っていたよ。
またいつか、セッションしよう。
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