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春にはない秋の景色。秋華賞に馳せる

秋のGⅠには春にはない景色がある。
傾いた日は橙色のどことなく優しい光を演出し、向正面を疾走する馬たちをより美しく際立たせる。特に京都は太陽が3、4コーナー方向に沈み、そんな絵画のような景色をつくる。そんな秋の優しさを最初に感じるレースが秋華賞だ。

春にない景色といえば、秋は様々なカテゴリーで終着駅に向かう過程が描かれる。春の始発駅を出発する清々しさには胸躍るものがあるが、終着駅はまた趣が異なる。ちょっと寂しく、それでいて競馬場のゴール板が真のゴールだったりもする。その先が見えない不安もあるが、もう先がないという安心もある。ニンゲンも走り続けるのは大変だ。それでも走れと言われそうだが、止まる時間だってほしい。どこかで区切りをつけ、胸いっぱいに空気を押し込んでする深呼吸は立ち眩みのような脱力感が心地よい。生きている限り、馬もニンゲンも走り続けるのは同じ。ニンゲンがひと息つきたいなら、馬だってそのはず。

秋の競馬はそんな区切りに向かう流れのなかにある。夕陽が馬群を照らす優しさはそれを暗に仄めかす。
 
秋華賞はスターズオンアースの三冠がかかる。三冠達成は00年以降スティルインラブ、アパパネ、ジェンティルドンナ、アーモンドアイ、デアリングタクトの5頭。1番人気がなかったのはアドマイヤグルーヴがいたスティルインラブのみ。桜花賞、オークスで1番人気に支持されず、秋華賞1番人気はジェンティルドンナ。スターズオンアースは春二冠7、3番人気。疑われながらも800m距離延長はこなしたわけで、三冠は目前だ。牝馬路線は桜花賞からオークスが難所。牡馬と違い、三冠目はそこまで競技の差はない。

逆転候補はスタニングローズしかいない。オークス先行2着は能力の証明。休み明けの紫苑S突破はその力量差が秋になっても変わらないことを示す。舞台は阪神芝2000m。先行するなら、1コーナーの入りがカギ。そう考えると枠順が絶妙。スタニングローズより内には逃げたいタガノフィナーレがいて、この逃げに合わせ、ウインエクレール、ストーリアあたりが好位を目指す。スタニングローズはそれらを制して外から入るのか、好位勢の後ろにつけるのか。枠が近く、この2択を1コーナーまでにする隙間はあるはず。状況判断に長けた坂井瑠星騎手。同期の荻野極騎手はこの秋、GⅠをもぎとった。負けてられまい。スターズオンアースを負かすなら、外で折り合いが難しくなるリスクをとっても強気に行くのではないか。三冠のゴール板は譲らない。そんな意地の激突を楽しみたい。

単勝⑦、馬単⑦→⑨

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