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MOVIE REVIEW「花椒の味」

(監督:ヘイワード・マック 主演:サミー・チェン 2019年/香港)

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あぁ、また新宿武蔵野館で大号泣。年の瀬にして、今年ベスト5に入るかもしれない映画に出会えた。

異母姉妹3人が、父の死をきっかけに初対面し、父が営んでいた火鍋屋を残そうと奮闘する、香港の作品「花椒の味」。

まず、引きつけられたのは、登場する3姉妹のキャラクターの強さ。真面目一辺倒で父に辛く当たってきた長女、ビリヤードのプロ選手で母親とうまくいっていない次女、オレンジ色に髪を染め自由奔放に生きる三女。

それぞれが個性的で、そして何らかの悩みを抱えていて。映画だけで完結させず、それぞれにフィーチャーしたストーリーで連ドラを撮ってほしいと思ってしまうくらい、1人1人のキャラクターが立っていて、背景に深みがあった。

そして何より私が心を打たれたのは、父に代わって店を切り盛りしながら、亡くなった父に対してさまざまに思いを巡らせる長女の姿。

いなくなって初めて、父がどれだけ多くの人に慕われていたのか、どれだけ自分を愛してくれていたのかということに気がつく。これまでの父に対する反抗的な態度や、疎遠にしていた関係性を悔やむ数々のシーンに、どうしようもなく涙が出た。

近い存在だからこそ、ないがしろにしてしまう親との関わり。その存在を疎ましく思うこともある。心の底から憎んでいるわけではないのに、傷つけてしまう。思いとは裏腹なことを言ってしまうこともある。そんな父と子の姿がありありと描かれていた。

腹違いの姉妹として、父の葬儀で初めて会ったのにもかかわらず、いがみ合うことなく距離を縮めて協力し合う、3姉妹のキュートにはとても癒された。部屋に現れたゴキブリを「お父さんかも!?」と言って話しかけたり、飲み疲れてソファで一緒に眠ってしまったり。この作品が心温かなものに仕上がっているのは、この3姉妹の微笑ましいやりとりの賜物だと思う。

私は今、とにかく花椒がピリリと効いた火鍋が無性に食べたい。この店が本当にあったならどれだけいいだろうかと思いつつ、お腹を空かせて劇場を後にした。

花椒の味 公式サイト https://fagara.musashino-k.jp/

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