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ミュージカル「オペラ座の怪人(ケン・ヒル版)」感想

 オペラ座の怪人関連の作品を大量に観たので今まで見てなかったものを観たい。どうやらケン・ヒル版と言うものがあるらしい。近々公演!?行ってくるか!の流れで観に行きました。

今回のケン・ヒル版は翻訳されて日本語バージョンで演じるものではなく、英語ミュージカルになっています。そのためストーリーを把握するには字幕上の翻訳頼りになります。


注意事項:字幕版では「クリスティーン」と訳されていましたが、私が個人的に馴染みやすい名前として本感想では「クリスティーヌ」に統一します。


観たやつ

 私が見たのは渋谷シアターオーブのB席で観てきました。B席は3階席の一番後ろの席なのですが、特に問題なく舞台を見れました。


字幕の表示方法ってこれが普通なのか?

 今回の渋谷シアターオーブは元々字幕が表示できるような設備がなかったと思われます。舞台両脇に2mくらいの表示板を置かれ、そこに字幕が表示されていました。

字幕も併せて見るミュージカルを観るのは初めてだったのですが、この形式は2度と行きたくありません。すごく見辛かったです。
舞台は基本的に中央で演じますよね。中央を観ますよね。字幕が見れないので話がわからないですよね。字幕を見るために左右どちらか舞台端を見ますよね。中央が見えないですよね。つまりストーリーをちゃんと理解しようとすると役者が見えないんですよね!

いつもはオペラグラス片手に舞台を見る私ですが、字幕を見るために一切使わず観劇する羽目になりました。私は役者の演技も含めて見たかったのですが、うまく観れる舞台ではありませんでした。残念だったなぁ。

体感ですが、お客さんの中に英語で喋ってる方が多かったので「日本国内にいる英語話者」向けの需要が一番大きかったのかなと思いました。つまりメインターゲット層ではない可能性が高い。


公演時間

 公式から引用します。

1幕70分
休憩20分
2幕65分
(2時間35分)

上演時間

 実際の時間はメモしてないですが大体こんな感じでした。カーテンコールのアンコールもなく、さくっと終わります。


ケン・ヒル版とは

 公式から引用します。

ガストン・ルルーの小説『オペラ座の怪人』初のミュージカル化として、<ロンドン・フリンジの鬼才>と呼ばれた劇作・演出家、ケン・ヒル(1937~95)が生んだ大ヒット・ミュージカル。アンドリュー・ロイド=ウェバー版に先立つ1976年に初演され、母国イギリスを始め、アメリカ、カナダなどで上演。91年のロンドン凱旋公演ではオリヴィエ賞最優秀ミュージカル作品賞/演出賞にノミネートされた。日本では92年から2018年の間に6度にわたる来日公演が開催され累計28万人以上を動員しており、多くのファンから好評を博している。6年ぶりとなる今回の来日公演では、ファントム役にイギリスのミュージカル俳優
ベン・フォスター、ファウスト役はイギリスのオペラ歌手 ポール・ポッツが決定。実力派キャストで究極のクラシック・ミュージカルをお届けする。

悲劇とユーモアの調和―
ガストン・ルルーによる原作小説のエッセンスを最も忠実に描いているとされるのが、このケン・ヒル版だ。
『ファウスト(作曲:シャルル・フランソワ・グノー)』、『真珠採り(作曲:ジョルジュ・ビゼー)』、『ルサルカ(作曲:アントニン・ドヴォルザーク)』、『海賊(作曲:ジュゼッペ・ヴェルディ)』、『ホフマン物語(作曲:ジャック・オッフェンバック)』をはじめとする既存のオペラのアリアを劇中にちりばめ、ケン・ヒル書き下ろしの歌詞に乗せて紡がれるストーリー。ユーモアさえ感じさせる巧みな人間描写も見どころとなり、<愛するが故の悲劇>が色鮮やかに描かれている。

ケン・ヒル版とは

と長く記載されてますが、要約すると「よく見かけるオペラ座の怪人と原作を同じくしたミュージカルで、内容は原作に近いよ」と書かれています。



ケン・ヒル版とアンドリュー・ロイド・ウェバー版の違い

 ケン・ヒル版が本作で、アンドリュー・ロイド・ウェバー版がよく見かけるオペラ座の怪人の話です。

大きな違いは注力されるキャラクターの違いです。アンドリュー版は主要キャラをメインとしていますが、ケン・ヒル版はファントム、クリスティーヌ、クリスティーヌの恋人以外にも多くのキャラが活躍します。もっと端的に言ってしまえば「主要キャラの描写が浅い代わりにモブたちのやり取りが多い」。
モブを目立たせることによって原作に忠実なシーンが多々描けていますし、舞台演出的な面白さも出ています。個人的には舞台演出的な面白さが良かったな!結構コメディだったし!





~~~~ネタバレするよ~~~~





ストーリー

 雑にまとめます。

 オペラ座に新支配人がやってきた。その新支配人はオペラ座に居座っているゴーストと呼ばれる存在から給料を要求されたがこれを拒否。
新支配人の息子であるラウルはオペラ座のコーラスメンバーであるクリスティーヌに会いに行くと男と話しているのを盗み聞きしてしまう。嫉妬したラウルは部屋に押し入ったが誰もいない。ラウルは裏切られたと感じ、悲嘆に暮れる。
ファントムは新支配人へ給料とクリスティーヌのメイン歌手採用を要求する。要求は拒否されるがファントムは新支配人を脅し、結局クリスティーヌに歌わせることに。しかしファントムの暴挙は止まらない。終演後、ファントムはクリスティーヌを攫ってしまう。そしてクリスティーヌに無理やり結婚を迫ろうとする。
ラウルたちはクリスティーヌを探し、ファントムの根城を探索するが罠に嵌められる。命からがら抜け出し、クリスティーヌを救い出し、怪人は命を絶った。

あまりに雑すぎるんですが大体こんな感じでした。


クリスティーヌの気持ちがわからない

 クリスティーヌとファントムとの思い出はクリスティーヌが語る「音楽の天使だった」という話と、ファントムとクリスティーヌが「お前は私を愛さねばならない」「わかりました……」って会話してるシーンだけで、ファントムに対して愛情の欠片すらない状態なんです。ただの中年に粘着されてるだけだからね、しょうがない。でもその状態でも最後のファントム死亡シーンでは悲しそうに涙を流すのが全くわかりませんでした。観る側にも涙を流せる思い出を教えてよ。


ファントムの行動もよくわからない

 色々な作品でファントムの行動原理はよくわからないのですが、これは輪にかけてよくわかりません。歌わせたと思ったらいきなり攫って結婚しようとして迫って結局命を絶つ。原作準拠なのに省略しすぎたせいで意味がわからなくなってるんだと思う。
原作のファントムは「(過去色々やってきたけどそれはそれとして)俺だって可愛い奥さんを迎えて平和な家庭っていうものを実現したい!」なんです。だから結婚を迫る。ただ本作のファントムは意味がわからない一貫性の無さなので、キャラクター描写という面ではあまり面白くありませんでした。


オモシロ改変が多い

 キャラクター描写は他にも影響していて、キャラクターをたくさん出すために要素を削って足して……をした結果、ラウルの新支配人息子になったのも面白かったですし、ペルシア人がファントムの実の兄になっているし、ジリー夫人も最終的に敵に回ってるしで面白かったです。そこをこう変えるんだ~!?という面白さ。
しかしそれを除外してもケン・ヒル版の方が原作に近いのも面白い。


コメディ要素が強い

 原作設定の「ファントムは投げ縄の名手なので首にかけられないように手にピストルを持ち首の横に手を置く」を活かした結果、コメディになってたのには笑いました。

キャラA「いいか、こう構えるんだ!ハッ!」
キャラB「ハッ!」
キャラC「ハッ!」

って言いながら股を開いて真顔で真正面向く仕草、めちゃくちゃ面白かったです。
他にも要所要所にコメディが入ってました。


メタコメディもある

 メタコメディというくくりで良いのかわかりませんが、舞台外の人間(オーケストラ)に話しかける部分があります。
ラウルがクリスティーヌのことを想って喋ってるシーンでオーケストラが良い感じの音楽を流してたらオーケストラに対して「静かにしてくれないか!」(音楽が止まる)「ありがとう」って言ったり、ファントムが「ククク、シャンデリアを落としてやるぞ!(意訳)」と言ったらシャンデリア下にいるオーケストラたちが慌てて逃げようとし、その後「いやそっちじゃなくて……こっちだ!(意訳)」と言いながら舞台内の燭台を落とす。この演出がめちゃくちゃ面白かったな~!




まとめ(ネタバレなし)

 ストーリーは好きではなかったのですが、話を知れて良かったし、舞台演出も面白いものがあって観れて良かったなと思います。けどまた観たいとは思わないかなぁ。1回観れたので満足でした。
あ、あと要字幕の舞台作品はもう見ないぞ!本当に見辛かった!

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