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ゲーム「CARNIVAL」感想

※この感想は18禁ゲームの感想です。ご注意ください。

 癖の強いライターって、良いですよね。かなり印象深い作品を書いたライター・瀬戸口廉也の別作品を見てみたい!の気持ちでプレイしています。「SWAN SONG」「キラ☆キラ」はプレイ済み。
そして本作をプレイし終わり、やはり人間賛歌の物語だったな~と感じました。そんな感想です。

ジャンル:サイコ凌辱ノベル+ADV
プレイ時間:約10時間
媒体:PC


■ 本作品のブランドは活動終了している

 プレイ終了してから知りました。ブランド、活動終了してる!
公式サイトも無いし企業ページもありません。そ、そんな……。活動終了していても購入できた幸運に感謝するばかりです。


■ DL版はバグあり

 DL版をFANZAで購入したものの、起動バグがあります。回避策は「なんでも良いからDVDをマウントすること」。レビューを書いてくれていた先人に対して本当に感謝。
私のプレイ環境はWindows11 Home Edition。実は対象OSではありませんが、無事起動できました。


■ あらすじ

 公式サイトがないため、私が勝手にあらすじを書いてしまいます。

学は警察に追われていた。
パトカーから連行されていたのだが、事故に遭い、たまたま逃げおおせたからだ。
学は学校で暴力を受けており、そのいじめをしてきた二人組の内の一人を殺してしまったため、連行されていた。しかし学は覚えていない。本当に記憶がないのだ。学は幼い頃から時々記憶を失うことがあった。今回も”そう”だった。

警察から逃げていてもいずれ捕まるだろうということは分かっている。しかし、今捕まるわけにはいかない。なにかやるべきことがあるはずだ。なにか……そうだ、学の幼馴染である理紗から昔借りたハンカチを未だに返せていない。これを返すべきだ。
そして学は行動を始めた。



■ ゲームシステム

 最初は当たり障りないところの感想を書いていきます。まずはゲームシステムから。

通常画面

 いたって普通のADV。ただしキャラの名前表記はありません。

©S.M.L

いたって普通のシステムのはずなのに、ポチポチしすぎてボイスを飛ばすこと多数、シーンをスキップしてしまったこと一度、という失敗を犯してしまいました。意外とやりにくさを感じます。音声の開始が妙に遅いため、それで無音だと思ってスキップしてしまうことが多かったです。設定次第なのかな~。それとも対象OSじゃないからなのかな。

バックログ

 通常のバックログだと思いきや、ボイスの再生機能がありません。一度聞き逃したら終わり。

©S.M.L

セーブ機能

 かなり充実してます。選択肢でセーブすると「CHOICE」と表記されるので、ロードすると選択肢セーブが一目でわかりやすい仕様。
セーブ個数もこんなにいるだろうかと思うほどたくさんあります。ありすぎて困ることはないもんね。

©S.M.L

QセーブQロードも充実してます。古めのエロゲにしては結構良いシステム。

©S.M.L

エクストラ機能

 よくあるCG集、シーン集、BGM集が見れます。


■ 章仕立てで視点が変わる

 全部で三章あり、最後まで章を進めると次の章が解放されます。次の章を見るにはタイトル画面のスタートボタンから見る必要があります。
どの章も語られる事象は一緒なのですが、視点が異なることによってそれぞれの印象も異なるのが面白いです。





~~~~~ネタバレするよ~~~~~







■ 登場人物

 メインどころのキャラクターのみ紹介していきます。

木村 学(きむら まなぶ)

 本作の主人公。読書家で人と関わろうとせず、いつもいじめられている。母から虐待を受けており、その母のことは愛していたが、幼い時に亡くしている。また、幼馴染の理紗に振られた男から暴力を受けており、その男を殺した容疑をかけられている。

武(たけし)

 学の友達。しかししばらく会えてない。理紗と出会ったあたりから出会えなくなった。

九条 理紗(くじょう りさ)

 学の幼馴染。家柄も良く成績優秀でみんなの人気者。学の好きな人であり、学が避けている人。学のことを大切に思っている。

渡会 泉(わたらい いずみ)

 理紗の親友。理紗曰く、「学君と似てる人」。好奇心旺盛で興味が赴くままに後先考えず実行することがある。学のことが好き。

志村 詠美(しむら えいみ)

 学校の上級生。理紗に振られた男を焚きつけて学をいじめている主犯格。理紗が学園で人気を伸ばしていくのが許せず、理紗と近しい学を傷つけた。


■ 各章とエンディングについて

 章の雑まとめと、クリアした順番にエンディングを書いていきます。エンディング名がないので、名前は適当に付けています。

CARNIVAL編

 学君視点。あらすじ以降を雑にまとめます。

 理紗にハンカチを返そうと、理紗と約束していた夏祭りに来た。会えるかどうかもわからなかったが会うことができ、理紗は学に自宅に来るかと誘う。
そして学は理沙の家に行き、理紗が怪我をしている跡を見つけた。暴力の跡だ。犯人は恐らく志村先輩だろうと当たりをつけて外出し、誘拐して理紗の家まで連れてきたが、どうやら犯人ではないらしい。
理紗の親友の泉にも聞いたが心当たりはないようだ。
学が疲れてうつらうつらとしていると、声が聞こえた。昔の友人の武と理紗の声だ。「学は気付き始めている」。理紗は、何かを隠している。

・人生諦めBADEND

 警察から逃げてはいたけど、理紗に裏切られたと思ったことで人生を諦め、理紗を共犯者ではなく人質にしてレイプして自殺する話。
学君が人生を終わらせる区切りとして、好きな子とセックスしてついでに理紗ちゃんに犯罪者を匿った害が及ばないようにしたと思われる話なんだけど、本当にそうなのかが自信がない。この解釈でいいのか?それとも単に、犯罪者のやるべきことをなぞっている感じなのか?いや~~わからない。学君の不安定さが文章にも表れていて、理解できない思考が凄まじくて怖い。

・泉エンド

 理紗の体のことを親友である泉に聞き、泉の誘いで理紗の元に戻らず、一緒に逃げるエンド。
は、破綻しそうなエンドだ~! この二人の未来は刹那的で享楽的でいつ壊れるかわからない、そんな人生なんだ……。一応、学君は「泉のおかげで楽しいって意味がわかった」とは言ってはいるけど、それでも無理やり刹那的に生きてるようにしか見えないので、衝動的にいつか自殺しそうな気もする。ずっと一緒にいるとは言ってるけど、あまり信用できない言葉だなぁ。だって刹那的すぎるから……。でも泉ちゃんと一緒にいて少しでも人生に楽しさを見出せたなら良かったのかな……どうかな……。

・理紗エンド

これをクリアすると第二章への道が開ける。

 理紗は裏切っていなかった。武は自分自身だった。学は母からの虐待に耐えられず、暴力の受け皿として新たな自分を作っていた。それが武だ。
武は学の代わりにいじめていた男を殺し、それを理紗は知っていた。過去に母を殺したのも武で、理紗に暴力を振るっていたののも武だった。武は自分だ。つまり自分がすべての元凶だった。学はその事実を受け入れ、理紗と共に逃げることを選ぶ。

 理紗のために神になることを選ぶエンド。
泉エンドと同じくすぐ捕まりそうだぁ……。それでも二人で認め合いながら逃げられるのなら良いのかな。学君は二人が一緒にいることは良くないことだと思ってるけど、理紗ちゃんはそれでも一緒にいたいし、理紗ちゃんは学君に救いと罰をやっぱり求めているし、理紗ちゃんが望むなら学君は神にでもなるし、なんかすごい関係性だな。学君、基本的に他人のために何かしてあげたい気持ちが強いよね。自分のためじゃないんだ。

・理紗バッドエンド

 理紗に裏切られたと思った学が理紗を殺すエンド。
理紗ちゃんの発言にある「これもある意味完璧なハッピーエンド」という言葉の圧がすごい。理紗ちゃんにとっては学君に殺されることは救いなんだ。そしてその後の学君は即自殺するんだ……。理紗ちゃんを殺した世界は一人で生きるには狭すぎるのか……そうか……。
どうにかしてよこの激重感情たち!!!

・幼女バッドエンド

 いじめ主犯格である志村先輩を理紗の家に連れて来ず、先輩の妹と先輩を脅すことに時間をかけすぎて警察に捕まるエンド。
レイプできる選択肢があるんだけど、レイプしてもしなくても捕まるので妹と関わったら終わりなのはギャグみたいで面白かった。妹と関わるとどう足掻いても逮捕!!

・理紗母エンド

 理紗母が帰ってきてしまい、理紗について聞くとなぜか母親は理沙に罪悪感を抱いており、理紗が何かされたことを察した学が母親をレイプして復讐したはいいものの、その場から立ち去るエンド。
もう何がなんだかわかんないよ。なんなんだ学君は。たぶん理紗ちゃんのためとは言え、母親を犯した罪悪感に耐え切れなかったんだとは思う。思うけどわかんねえー!

MONTE-CRISTO編

 武視点。学君がいかにひどい環境だったかがわかるし、暴力的だけど武君は武君なりに学君をなんとか救おうとしていたのがわかる。事象の説明は大体一緒。

 武はいつも怒っていた。学はバカだ。あんな女のことなんか気にしなきゃいいのに。ある時あまりにも腹が立って、武は母親を殴り返した。学はそれに怒り、武を閉じ込めた。あの女は学に八つ当たりしてるだけだ、都合の良い人形扱いしているだけだ。なのになぜ……。だが絶好の機会が訪れた。今なら殺せる!
そして学はショックを受け、武を封じ込め、武のことを忘れたまま日々を過ごしていた。

これをクリアすると第三章への道が開ける。

・モンテクリスト編バッドエンド

 メインストーリーには従わず、武が主人格を得て逃げるエンド。
とは言ってもやってることは武君が学君に「もう疲れただろうから休め、俺が代わる」って説得してるだけで、学君も今の人生が心底疲れて嫌そうだったのでこっちでもいいのでは……という気はした。置いていかれる理紗ちゃんを除けば武君としてはハッピーエンドだとは思う。

TRAUMEREI編

 理紗視点。理紗ちゃんがいかに自罰的で自己嫌悪しているかわかるし、外見の取り繕い方と内面の凄まじさのギャップが激しくて本当に驚いた話。この章は選択肢が無く、一本道。

 理紗は自己嫌悪を抱えていた。自分はなんて嘘つきなんだろう。自分はなんて醜いんだろう。いつも周囲に合わせて表面を取り繕うばかり。
そんな時に武に、学に出会う。理紗はすぐに仲良くなったが、武がある時母親を殺してしまった。そこで普段の学とは違う人格が出てくる。自分は影の存在だと名乗る彼は「母親殺しは今の学に受け止めることはできない。だから時間を稼ぐ。でも理紗なら言ってもいい、理紗に任せる」と言う。
そうして普段の学が目覚めると、不思議と理沙から距離を取り出した。理紗はなんとか学と接触しようと努力していた頃、事件は起こった。

・理紗エンド

 理紗ちゃんはレイプされているし語り手にとって嫌な記憶はスキップされるし、学君とのセックスであってもサクッとスキップされたのは理沙ちゃんにとってセックスは良い思い出にならないんだろうなと感じた。それはそう。父親にレイプされ続けてるんだぞ。
理紗ちゃんは学君を神聖視していて、学君に自身の人生を、罪の答えを求めているのも印象的だった。後々、影の学君から「答えがない」という答えを知ったことで、学君のそばで素の自分のままで過ごしていくことができるようになるのかな。でも学君自身がこれから大丈夫なのかと心配する気持ちもある。
 正直、これがハッピーエンドかどうかはかなり判断が難しい。お互いに出会えてよかった、お互いと一緒にいれて嬉しいと思えたね!ハッピーエンド!と諸手をあげて祝えないけれど、当人たちにとっては幸せなのかもしれない。……本当か~~!?


■ いろいろ

理紗ちゃんが神を得る話

 この物語は学君が主人公みたいになっているけど、いや本当に主人公なんだけど、実態としては理沙ちゃんが幸せになるための物語なんだと思う。学君が自分のために生き残る人生から、希望を失い、理紗ちゃんの求めを叶えるために神になる話だったんだと思う。
学君は「幸福とはガラクタであり、馬の前に吊るされているニンジンのようなものだ」と言っていたけど、もう自分の幸福もどうでもいいようだし、学君自身は幼少期の母親の時から変わらず「人の求めに応じる」ことが一番求めていたことなんだろうな。

 理紗ちゃんは「世界は愛してくれない」って言ってたけど、学君という神は一生そばにいて自分のことを信じてくれると誓ってくれたので、神は、世界は理沙ちゃんを愛してくれるんだよ。まあでも、この時の理紗ちゃん視点だとただのジョークだと思ってたけど……。マジで信じることが無いよな理紗ちゃんは!

結局は人間賛歌の話

 本作のライターの根底のテーマが人間賛歌だと思ってるんですが、やっぱり「人間は醜い、けれど美しい」「欠陥品である人間をどう受容するか」の話だったな~と思いました。こんな醜い人間たちを美しく描写できるの、すごいよ。でも選ぶテーマが毎回重いよ!!


■ 7年後を舞台とした小説がある

 実は本作の7年後を舞台とした小説があります。すでに絶版で市場は高騰。普通は手に入りません。電子化してほしい。
しかし!幸運にもお借りして読むことができました!

凄まじすぎる話だった。なんだこれは……。





■ まとめ(ネタバレなし)

 プレイ時間は約10時間。もうどうしようもないところからのスタートで、視点を変えての章仕立てが面白かったな。最後までやっても辛い気持ちにはなるんだけど、ライターの人間賛歌っぷりというか、「人間は醜いが美しい」という主張が出ているように感じられる作品でした。さくっとプレイできるけどDL版はバグがあるので気をつけろ!

・免責用
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©S.M.L

備忘録用メモ。Twitterでの実況スレッドです。

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