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無職のパパが異世界転移してお家に帰るまで【第8話】

NFTart『Daddy-like kind』シリーズ
https://opensea.io/collection/daddy-like-kind-001

前のお話
第7話『ビール片手に神様トリオ』

ホブリンの村

 腹を満たしたところで早速今後の事についての話になった。

「で、これから仕事探しと帰り道探しというわけじゃな」
「まぁそうなんだけどさー。剣と盾は背中にしょってるわけだけど、何か魔法効果とかついてんの?」

 正直剣を扱ったこともなければ、戦ったこともない。
 砂利道をワシと2人で歩きながら、疑問をぶつけてみた。

「何も付けとらんのう。剣なんぞ、弱いモンスターあたりを倒しておれば、王宮に着く頃にはそれなりになるじゃろ」
「え? 俺王宮に行くの?」

 突然の目的地発言。
 急にRPGっぽくなってきた。

「言うておらんかったか。王宮にわしの弟子がおってのう。そやつが確か次元の狭間の研究をしておる」
「おぉ! 次元の狭間を通って家に帰れるわけか!」

 急に家の玄関が目に浮かんだ。
 まだ20年近いローンが残った家だけど、あれ?
 何で俺働かなくなったんだっけ?

《お前、何か覚えてないのかにゃ?》

 頭の中に声が響いた。

「別に嫁とは追い出されるほど険悪なわけじゃなかったはず」
「おう。突然じゃの」
 
 頭の中での回想と、ヤダーの声、外に発していた言葉がちぐはぐだったことに、ふと気付いた。

「あぁ、ヤダーが声かけてきたんだ。ヤダーの声はワシには聴こえないのか?」
「ふむ。確かに不便じゃの。ちょっと待っておれ」

 ワシは何やらポケットから取り出し、俺の背中に背負っている盾をトントンと小突いた。
 俺は盾を下ろしてワシに差し出す。
 するとワシはサラサラと盾の表面に絵を描いた。
 
「あ、ヤダーだ」
《これはいい。外にも思考ダダ漏れに出来るなw》

 描かれたヤダーの絵がニヤニヤしている。
 しっかり声も聴こえた。
 頭の中と盾からと二重になってる。
 不快にならない程度だからまぁいっか。

「よしよし。これでヤダーとも会話が出来るわい」
「そもそも、ヤダーが俺の中に入ってる理由なんだっけ?」
「時間の感覚を定着させるのと、多少戦えるようにするためじゃ」
「なるほど! これで俺はパワーアップしていくってわけか!」

 剣と盾を構え、ポーズをとってみる。
 敵って言っても、この辺スライム一匹いないから戦いようがないな。

「大丈夫じゃ。今向かっておるところ先にホブリンの集落があるから、戦闘の練習くらい出来るわい」
「ホブリン!? ホブゴブリンか? 集落? いっぱいいるんじゃね?」
「いんや。ホブリンじゃ。ほれ、見えてきた」

 そう言われても、延々と続く畑しかない。

「お。ちょうど日が暮れる時間じゃ」
「日が……?」
 
 えっと、夕暮れのサインも無い世界なのか。
 とか思っていたら、急に辺りが真っ暗になった。
 パチンと部屋のスイッチをオフにしたような唐突な暗転。
 真っ暗とは言っても、月灯り程度の暗さだけど。
 空には月は無い。
 昼夜の変化が思ってたのと違う。

「ほれ。暗くなったらハッキリ見えるじゃろ。ホブリンの村の入り口じゃ」

 ワシが指した方向に、視覚を惑わすまじないでもかかってらしい、集落の入り口が見えてきた。

「今は平和じゃがの。大昔は色々と戦があって、その当時の幻惑のまじないがいたるところにあるんじゃ」

 近づくと解ける程度ってことか。
 交流を拒絶してるわけじゃないんだな。

《そんなかんじにゃ》

 入り口は柵と柵の間に打ちつけられた大き目の木枠で、細かな花の彫刻をあしらった作りになっていた。
 大人数の通行が出来ない仕様になっているらしい。
 だけど、2~3人くらいなら横並びで通れそうだった。

 通り抜けると視界が一気に開けていく。
 薄暗いけれど賑わいのある集落だった。

「あれ? 犬?」
 
 犬のような顔の2頭身の生き物がたくさん歩いていた。
 この世界に飛ばされたばかりの時に、周りをたくさん2頭身の人が歩いていた、あの通りに似ていた。
 
「ホブリンの村じゃ」
《タグイの記憶にある犬ってのと、確かに顔似てるかもにゃ》

次のお話
第9話『ホブリンの道端で酔っぱとダンス?』

目次

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小狼
誰かの心にほんの少しでも風を送れるものが発信出来るよう自己研鑽していきます。 当面はきっと生活費の一部となりますが、いつか芽が出て膨らんで、きっと花を咲かせます。