無職のパパが異世界転移してお家に帰るまで【第8話】
NFTart『Daddy-like kind』シリーズ
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前のお話
第7話『ビール片手に神様トリオ』
ホブリンの村
腹を満たしたところで早速今後の事についての話になった。
「で、これから仕事探しと帰り道探しというわけじゃな」
「まぁそうなんだけどさー。剣と盾は背中にしょってるわけだけど、何か魔法効果とかついてんの?」
正直剣を扱ったこともなければ、戦ったこともない。
砂利道をワシと2人で歩きながら、疑問をぶつけてみた。
「何も付けとらんのう。剣なんぞ、弱いモンスターあたりを倒しておれば、王宮に着く頃にはそれなりになるじゃろ」
「え? 俺王宮に行くの?」
突然の目的地発言。
急にRPGっぽくなってきた。
「言うておらんかったか。王宮にわしの弟子がおってのう。そやつが確か次元の狭間の研究をしておる」
「おぉ! 次元の狭間を通って家に帰れるわけか!」
急に家の玄関が目に浮かんだ。
まだ20年近いローンが残った家だけど、あれ?
何で俺働かなくなったんだっけ?
《お前、何か覚えてないのかにゃ?》
頭の中に声が響いた。
「別に嫁とは追い出されるほど険悪なわけじゃなかったはず」
「おう。突然じゃの」
頭の中での回想と、ヤダーの声、外に発していた言葉がちぐはぐだったことに、ふと気付いた。
「あぁ、ヤダーが声かけてきたんだ。ヤダーの声はワシには聴こえないのか?」
「ふむ。確かに不便じゃの。ちょっと待っておれ」
ワシは何やらポケットから取り出し、俺の背中に背負っている盾をトントンと小突いた。
俺は盾を下ろしてワシに差し出す。
するとワシはサラサラと盾の表面に絵を描いた。
「あ、ヤダーだ」
《これはいい。外にも思考ダダ漏れに出来るなw》
描かれたヤダーの絵がニヤニヤしている。
しっかり声も聴こえた。
頭の中と盾からと二重になってる。
不快にならない程度だからまぁいっか。
「よしよし。これでヤダーとも会話が出来るわい」
「そもそも、ヤダーが俺の中に入ってる理由なんだっけ?」
「時間の感覚を定着させるのと、多少戦えるようにするためじゃ」
「なるほど! これで俺はパワーアップしていくってわけか!」
剣と盾を構え、ポーズをとってみる。
敵って言っても、この辺スライム一匹いないから戦いようがないな。
「大丈夫じゃ。今向かっておるところ先にホブリンの集落があるから、戦闘の練習くらい出来るわい」
「ホブリン!? ホブゴブリンか? 集落? いっぱいいるんじゃね?」
「いんや。ホブリンじゃ。ほれ、見えてきた」
そう言われても、延々と続く畑しかない。
「お。ちょうど日が暮れる時間じゃ」
「日が……?」
えっと、夕暮れのサインも無い世界なのか。
とか思っていたら、急に辺りが真っ暗になった。
パチンと部屋のスイッチをオフにしたような唐突な暗転。
真っ暗とは言っても、月灯り程度の暗さだけど。
空には月は無い。
昼夜の変化が思ってたのと違う。
「ほれ。暗くなったらハッキリ見えるじゃろ。ホブリンの村の入り口じゃ」
ワシが指した方向に、視覚を惑わすまじないでもかかってらしい、集落の入り口が見えてきた。
「今は平和じゃがの。大昔は色々と戦があって、その当時の幻惑のまじないがいたるところにあるんじゃ」
近づくと解ける程度ってことか。
交流を拒絶してるわけじゃないんだな。
《そんなかんじにゃ》
入り口は柵と柵の間に打ちつけられた大き目の木枠で、細かな花の彫刻をあしらった作りになっていた。
大人数の通行が出来ない仕様になっているらしい。
だけど、2~3人くらいなら横並びで通れそうだった。
通り抜けると視界が一気に開けていく。
薄暗いけれど賑わいのある集落だった。
「あれ? 犬?」
犬のような顔の2頭身の生き物がたくさん歩いていた。
この世界に飛ばされたばかりの時に、周りをたくさん2頭身の人が歩いていた、あの通りに似ていた。
「ホブリンの村じゃ」
《タグイの記憶にある犬ってのと、確かに顔似てるかもにゃ》
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