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無職のパパが異世界転移してお家に帰るまで【第10話】
NFTart『Daddy-like kind』シリーズ
https://opensea.io/collection/daddy-like-kind-001
闘技場で力試し
何だか注目されるのは居心地が悪い。
そんな時は逃げるに限る。
「じゃ、そういうことで!」
「何がそう言うことでなんじゃ?」
その場から走りだして、多分数百メートルくらい走ってから、目的地どこだっけ? とか思い至った。
「お前さんは一体どこへ向かっておるんじゃ?」
結構走った気がしたけれど、よく考えたらワシは老人(?)だった!
けど、よく見ると、普通についてきている。走っている感じじゃなく、ムーンウォーク? を彷彿とさせるような足取りで絶対その足運びでは出せない速度を出して、ワシはついて来ていた。
「あ、ごめん。つい……。昔から注目されるとどうもダメで、その場から衝動的に逃げ出したくなるんだよなぁ」
俺は足を止めた。
《何か嫌な事でもあったんじゃないかにゃ?》
あれ?
どうしてだっけ?
何だか色々思い出せない。
「ここに来た目的じゃがの。ほれ。ちょうど闘技場についたわい」
はい?
《剣士のカッコしてるんだから、戦ってみるにゃ》
「いやー。剣は持ったけど、動物虐待はいかがなもんかと……」
一度は剣と盾を装備して、強くなった気がしてはいるものの、犬や猫相手に剣を振るうなんて、ちょっと気が引ける。
「大丈夫じゃ。ここの闘技場は平和の象徴なんじゃ。剣やこん棒、ナックルなんかを使うが、血なまぐさい刃傷沙汰にはならんような魔法がかかっておる」
《さっきの酔っ払いは珍しいケースで、ホブリンは本来温和な性格にゃ》
盾についてるヤダーも補足説明してきた。
「そうなんだ。じゃあ、やってみるか!」
怪我させるわけじゃないことがわかれば、ちょっとやる気がわいてきた。
着いた闘技場だけど、何かイメージしていたのと少し違った。
古代ローマのコロッセオのようなイメージがあったけど、闘技場と言われた建物の入り口は、ここまでの街並と同じく、西部劇の乾燥した往来の一角にあるウェスタンドア風だった。
「いらっしゃいませー。お客様何名様ですかー?」
耳が尖った可愛い女の子風のホブリンが、右奥の木製カウンターから声をかけてきた。
店内(?)は木の板を打ち付けたような簡素な造りだけど、案外ダンスホールと言ってもいいほどに広い。
犬っぽい二足歩行の生き物がポツリポツリと歩いている。
エントランスのような空間なのか、正面奥には観客席に続いているっぽい明るい通路が数本。その途中には行き来する大小様々なホブリン達。
右手のカウンター奥には、参戦者用なのか、ちょっと細めの通路があるのことが見てとれた。
「あー。観戦1名じゃ。こっちは飛び入りの挑戦者ってとこじゃの」
「承知しましたー。ではこちらに顔を押しつけてくださいねー」
「うわっ、ぶべっ!」
普通サインとかじゃないのかっ!
俺は柔らかい粘土のようなものを、まるで皿に載ったパイを顔に押しつけられるかのような感じで顔に押しつけられた。
そんな感じで登録が完了して、俺はついに、剣と盾を構えて何かと戦うことになった。
何か、ノリでここまで来たけど、ヤバい緊張してきた!
カウンター横の通路を通って、いざ! チート勇者への第一歩!
俺はふわふわした気分のまま、闘技場の舞台へと続く扉を開いた。
次のお話
第11話『輝かしき軌跡』
目次
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