ヴィロンの森 第八章(後編) 舞踏会にて
城の楽団の人々が眠りについてしまったので、ロワールと、また、楽器を持ったヴィロンの人々数名が代わりに演奏をし始めました。
貴族の少女達は、あまりの出来事に呆然としていましたが、他のヴィロンの少年達に誘われるまま、次々とダンスを踊り始めました。
アリアンヌとラルフは、ダンスをする人々の中に入っていき、中央まで来ると深々とお辞儀をしました。
そして、しばらく見つめ合うと、ようやく近づき、互いの手を取ると踊り始めます。
「今日のアリは、とても素敵だ」
踊りながら、ラルフがささやくように言ったので、アリアンヌの頬が赤く染まりました。
「あなたもとても凛々(りり)しくてよ」
少年の薄いエメラルド色の瞳をじっと見ながら、少女が答えます。
ゆっくりな曲にあわせて二人が踊り始めると、まるで絵から抜け出たかのような美しさをもって踊るので、近くで踊っていた人々は、次々とダンスを止め、二人の踊る姿に見入っていきました。
「なんて美しいのだろう……!」
人々が感嘆のため息をつきながら、口々にそう言っていると、少女が優雅にターンをしたので、人々はさらに拍手を送りました。
ついには、二人は人々に見守られながら踊っていました。
二人の息はあまりにぴったりで、また楽しそうに踊るので貴族やエルフの少女達はときめきも覚えてきました。
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