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赤と青と、ときどき黄色の話
ガード下の横断歩道の信号待ち。人の足音と列車が鉄骨を硬く揺さぶる音が、噛み合わせ悪く混じり合う。口元を少し苦しながら、残り少なくなったタバコをくわえる。火をつけるまえのタバコの味って、フィルタの味?それともこれがタバコの葉?みたいなつまらない質問を浮かべては噛み殺す。ふと信号へ目をやる。まだ赤信号だ。クルマは遠くに古くなった色のヘッドランプを灯している。信号待ちにイラつくのは、待ってる間ではなくて、自分が待たされてる事に気付いた時だ。列車が通るゴツンゴツンという音が鳴り止んでもまだ信号は変わらない。気くらいつかえよ。横断歩道の向かいへ目をやると、赤いリボンの少女が目に止まった。母親と手をつないでいる。街の騒音で届きにくいのであろう、精一杯の声を振り絞って、母親に何かを訴えかけている。そして、強めに手を引っ張られた母親が屈んで、緊張した面持ちで娘に語りかけている。通りを右折してきたバスが目の前を横切り、この一連の観察をぶった切る。信号を一瞬遮られたことにさらにイラだちがつのる。そんな一瞬で信号が変わる訳もないが、イラ立ってる時の人間はみんなそういうものだ。みんなそうだ。
退屈をしのぐために回していたアタマが次の質問をみつける。どうして、信号は、赤、黄、青の3色なのだ?、と。青から赤に変わる時、急にクルマは止まれない。猶予が必要なのだと教習所で習った気がする。とそこまで思い浮かべて、この回答は質問の答えではないことに気付く。そうだ。どうしてその3色が選ばれた?光の三原色ゆえに判別しやすいから?白、赤、緑でも判別しやすいのではないか?どうして選ばれなかった??
ふと気付くと信号機は息をふき返し、点滅を始めた。口元のタバコが少し湿ってしまったことに気付き、あわてて火をつける。少女は母親の手を引き、精一杯の歩幅で横断歩道の白線をまたいでいる。タバコのケムリをひと吹きしたところで、白線に足をかける。大股を真似してみようか?などとよぎる。間が悪く、電車が鉄骨を蹴飛ばす音が響きわたる。
渡り終える頃に、LINEへメッセージ通知が届いた事に気付く。