これは1月の終わりの下書きだった
「古着のデニムの裾を切ってざりざりと裂いた
憎しみも後悔もうかべないで無心に
お気に入りの濃紺色
誰かのこぼす ぐちやためいき うわさ話、興味がない言葉のなかではうわのそらな気もち
いつかむかしより、こころの置き場所が増えた
無理をしてすり減らさないように、だれかと同じ温度で過ごせさなくても生きられるように
たとえばどこかで話題にあがる世間話、一般的な人生についての話、それに笑顔で相槌うつほどの関心がない自分のこと
表面に乗せるせりふよりも、しずかで上手な息の仕方を考えるようになった
受け止めたり 受け入れたり 受け流したり してくれる人、それぞれのなかに もう少しそんなからっぽのあたま置いておけるようなゆとりが見えるようになったならいいな
世界には自分ひとりじゃないから、苦手だったり避けたかったりする色んなことも のみこむ
なにもかも違うしなにもかも似ているものだ、世界のよろこび、しあわせを願いながらいつもそう考える
今年の行き止まり、それ以上の未来のことなんて深く考えていない、どうしようもない喜劇で悲劇みたいな人生のこと、もっと忘れてみたい
出会ってゆく作品のなかに
生きるつらさを忘れられるくらいの
いま同じ時間に居る心強さを見つける
それはふわっと灯る
一度見つけられたら
紡いだその人がいなくなっても消えなくなった
そういう気もちと お守りの眼鏡と家の鍵と 消えないやわらかさを持って出かける
今日もよく生きました」
もう4月になったよ
世界は大変だ
1月の終わりには居た人がたくさんいなくなってしまった それは普段よりはやくて
間に合わなくて 追い付けなかった
ひとりぼっちの時間が切り傷に染みる
みんな がんばろうね みんなでね