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沖縄の仏壇の謎

沖縄の仏壇がずっと謎でした。住宅の真ん中の部屋の和室の壁にドンとビルトインされているのです。
沖縄県立博物館の常設展の民俗部門展示「沖縄の伝統とくらし」にある仏壇もやはりビルトイン。お盆の時期のお供え物が再現されています。

私は以前より、他の県では観音開きの仏壇が家具のように和室に置かれているのに、沖縄では何故扉の無い棚と引き出しがビルトインされている形状なのか知りたくて、ことある毎に質問していたのですが、回答を得られずにいました。博物館ならきっとわかるのでは!と期待して質問してみました。あいにく学芸員は不在のため図書館司書の方が、ここに書いてあるかも〜、と参考文献を紹介してくださいました。

『御願の道具と供えもの事典』(稲福政斉 2018年 (有)ボーダーインク)によると、次のようにあります。

「祖霊を祀る仏壇は、もっぱら祖先の名を記した位牌のみが置かれ、他県のように仏像などを安置する習慣の無いことが最大の特徴といえます。」
「その形式は、建物に造り付けた戸棚状のシチキ(仕付け)などとよばれるものと、箪笥のように家具として作ったものの二つに分けられますが、いずれも他県のものと比べて独特の形式をもつことから、沖縄仏壇とよばれます。」
「沖縄では一般に祖先の遺骨を納め葬った墓は、ジュールクニチーや清明祭、タナバタなどといった特定の行事以外には足を運ぶべきではないという傾向が強いのに対し、仏壇は住まいの中に設けて日常的に拝み、祖霊に対する祭祀儀礼の多くも、仏壇の前で行われます。」

沖縄では仏壇の中にご本尊は入れずにご先祖様の位牌とお供え物だけを飾る、日常的に拝まれるため存在であるため、住宅の真ん中にドンとビルトインされたのだと知り納得でした。沖縄の仏壇の謎は沖縄の暮らしと密接な関係があるんだなと思いました。

昨日行った旧盆のお供え用品で賑わうスーパーの店頭には大ぶりのパイナップル、バナナ、スイカが並んでいます。あの大きな仏壇の棚なら楽勝で並ぶな〜と思いました。

また沖縄の仏壇について調査した次のような文献があります。
『沖縄•よみがえる民家と集落』(永瀬克己 三協社 2015年)
「第4章 民家の中心としての仏壇」では、沖縄の仏壇の位置や形状の変遷が記されており、だんだんと住宅の真ん中にビルトインされていく経緯がわかりとても興味深いです。

近年は、新しい住宅には沖縄仏壇を設けない家もあったり、空き家となった本家の仏壇の継承が親族の負担になることもあるようです。

沖縄の仏壇の謎を少し紐解いてみたら、沖縄の暮らしが少し垣間見えた、建物がたりです。

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