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まだ出会えぬ芭蕉布のお話のその後のその後のその後(最終章?)

今、こうして私の目の前に2枚の芭蕉布がやんばるの風を受けてたなびいています。至福すぎる光景、良い眺めです。

沖縄に古くから伝わる芭蕉布。私は民家の箪笥に眠っている芭蕉布に会いたくて、願わくば芭蕉布にピッタリの風土だというやんばるの地でそれを纏ってみるのが夢でした。
まだ出会えぬ芭蕉布のお話の始まりです。 

戦前は沖縄の家庭で栽培した芭蕉を紡いで自家用に織って生活着や野良着として着ていたという芭蕉布。
しかし、戦争により消失したり、戦後業者に買い取られて民家の箪笥からは消えたようです。また戦争により芭蕉の畑が無くなり自家用に織られなくなり制作技術が途絶えたとのこと。後に人間国宝となる大宜味村喜如嘉区の平良敏子さんらのご尽力により技術を復興して工芸品にまで高められました。

現存する芭蕉布に出会うためには、戦前の貴重な保存品か新たに制作された工芸品を博物館や美術館のショーケースから眺めるか、美術品のようなお値段の着物や帯を呉服店で眺めるしかない、と夢を半ば諦めていました。

ところが、です。
何度かやんばるを訪問するうちに、ご自宅の箪笥に芭蕉布が眠っている!という方に出会うことができました。え〜、まさかや!

そしてなんと、その箪笥に眠る貴重な芭蕉布をお借りできることになり、しかも、やんばるの地で身に纏う機会に恵まれました!
風にたなびき肌にまとわりつかない感触は確かにやんばるの風土にピッタリ。民家で野良着用として織られたもののため、工芸品のようなトンボの羽のような薄さや透け感は無いのですが、軽さ、風通しの良さ、しなやかな張りなどは絹でも麻でも綿でもない、確かに芭蕉布だ〜!と思いました。


纏って1人だけのランウェイでのウォーキングの後には、自分のためだけに展示してみました。今、私はとても良い眺めです。

お貸しくださった方に日常に着ることは無いのかお伺いしたところ、「今の時代に着たら頭がおかしいと思われるから着ることは無い」とのこと。どうやら芭蕉布は、手の届かない工芸品になったと共に、日常に着られることは無い過去の生活着になったようです。また纏える日はあるのかな?

やんばるの風土にぴったりな、纏ったら幸せな気分になるという芭蕉布。まさかや!ありえない出会いの、忘れられない着物がたりです。

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