金襴緞子の貼り付け箱
それは本当にひょんなことから生まれたアイデアでした。家族の名前の書の表装をお願いした経具屋の職人さんとの会話中でのことです。古い着物の裂のことをあれこれお話していたら、職人さんがお寺の表装のお仕事の際に残った金襴と緞子を見せてくださいました。「何に使っていいかわからないんだよ。」とおっしゃるので「箱に貼ってはどうですか?」ということで私が手持ちの箱をお持ちしました。もともと箱好きなのものでなんとなく捨てがたく手元に置いておいた木の箱のうち、牛肉、素麺、梅干しが入っていた3つをピックアップしました。
その後職人さんから、「できましたよ。」とのご連絡をいただき伺ってみますと、思わず「わぁ~!」と声をあげてしまうほどの仕上がり。箱の外側を見て感動しましたが、蓋を開けて更に感動しました。3つの木の箱は完全に生まれ変わっていました。
牛肉の箱は、外側に緞子、内側に辛子色の和紙
素麺の箱は、外側に金襴、内側に栗色の和紙
梅干しの箱は、外側に緞子、内側に藍色の和紙
いずれも蓋の合わせ目は柿色の和紙が貼られています。
外側の金襴緞子はもちろん美しいですが、同じ柿色の合わせ目の蓋を開けた時、辛子色、栗色、藍色の異なる和紙が内側に現れるなんて・・・。蓋を開けた瞬間のその人の感動を予測して色を選び貼ったのかなと想像しました。また、寸分違わぬ貼り方からそれはそれは丁寧な仕事ぶりが伝わります。
生まれ変わった箱に敬意を表して、牛肉の箱には刺繍糸、素麺の箱には帯締め、梅干しの箱には数珠を入れてみました。
経師屋の職人さんの手をお借りし、アップサイクルデザイン作品が生まれました。使い道のわからない裂としまいこんでいた木の箱が出会ったことで作品となり、暮らしを彩る収納箱になった室内装飾織物がたりです。