龍村の帯に出会ってしまったお話
それは、最近たまに立ち寄るリユース着物屋さんで出会ってしまいました。
セールがあるとLINEでお知らせが届きます。先日、特選帯お買い得セールの中に龍村美術織物の文字を見つけてしまいました。この機会に間近で拝見して触らせてもらいましょ、と軽い気持ちでお店へ。
特選帯の数々が目の前に並ぶ中、龍村の名古屋帯がありました。なるほど、お茶席などに良さそうね〜、私には無縁だけどと思っていたところ、目に飛び込んできたのはなんとも不思議な色柄の洒落袋帯。深い紺地に金と銀で瓢箪の実と花と蔓が織り出されています。ご主人曰く、これは問題があるんだよ〜とのこと。広げて見せていただくと大きく裂けた痕を繕ってありました。かなり使用された様子の帯、お気に入りだったのかな?いったい何故裂けてしまったのか?持ち主の方はさぞ驚かれただろうな〜、など様々思い巡らせました。
一応お値段をチェックしその日は帰宅。不思議な色柄が気になって後日またお店へ。再度拝見するとご主人が、龍村の帯がこの値段で出会えることはもう無いよ〜と。背中のスイッチが押された瞬間でした・・・。
着物好きだったら誰しも憧れの龍村の帯。私的には自分では買わないけど、いつか誰かに買ってもらいたい指輪的な存在です。持ち帰った帯の折り返しに織られた吉祥瓢というワードで検索してみると、不思議な文様は名物吉祥瓢金襴錦であることがわかりました。不思議に見えていた瓢箪柄は吉祥文だったんですね。
まず1回目は紫地の源氏香の飛び小紋に合わせてお出かけしてみました。コートの下だったので誰にも見えませんでしたけど。そして2回目、濃紺と黒の絣の大島に合わせて。帯を締めていたところ、ミシミシみたいな嫌な感じの音が!恐る恐る見てみると帯の端の数カ所に裂け目が〜。紺地の部分がとても脆弱で締めるテンションに耐えられなかったようです。リユース品とは言え2回目の使用で使えなくなってしまうとは!
購入したお店とは今後も良好な関係でいたいので、なんとかならないものかと相談のお電話をしてみました。基本返品はできないとのことでしたが、お店に持参してご主人に見てもらい、帯としてではなくリメイク用の裂として私の手元に残すことになりました。
もう帯として締めることはできない龍村の帯。手持ちの着物とのコーディネートをあれこれ考え、束の間の夢を見させていただきました。
何故出会ってしまったのかな?帯以外の用途をこれから考えます。瓢箪から駒なんてことはないかしら?そんな楽しみを残してくれた着物がたりです。