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羽裏が自由すぎる件 その三

袷の長羽織が仕立てあがりました。いつものきものサロンの渡辺さんおすすめの表地の反物に合わせて、京都の老舗呉服卸・千藤の山本さんが羽裏を提案してくださいました。

表地は深い緑地に鮮やかな青や緑の長いリボン状の模様がたなびいている遊び心満載の抽象柄。それに合わせて、山本さんが数種類の羽裏を提案してくださいました。山本さんのコーディネートはいつも現代の生活シーンにマッチした洗練されたシンプルさが魅力です。

色・柄などどれも表地にぴったりで、その中から一つだけ選ばなくてはいけないという、それは苦しくも楽しい時間でした。最後に残った二つの候補は、「なんて上品な~」と「なんて好き勝手な~」というもの。上品な方は濃紺地に浅葱色の大きなダマスクという柄。初めてその名を知りました。シリアのダマスク地方の織物の文様をモチーフにしている柄だそうです。エキゾチックな上品さという感じ。好き勝手な方は白地に明るい緑と朱色の大きな格子柄で遊び心満載です。なんとなく遊び人の江戸の町人風。迷いに迷いに迷った結果、ダマスク柄に決定。大きな格子柄にはとても惹かれたのですが、長襦袢や帯でも遊びたくなった場合、羽織の裏まで遊び心満載だとお腹がいっぱいになりそうだったため、腹八分目にしておきました。

羽織にどんな羽裏をつけるのかについての味付けの選択肢は数多くあります。その中の遊び心という味付けを選んだとしても、さらに、さじ加減は控え目からたっぷりまで自由自在に自分好みに選ぶことができます。羽裏を選ぶというプロセスを通して、味の広さと奥行きの深さを知りました。

その一は、あえて表と裏の個性をぶつけて化学反応を楽しむ。その二は、同じ箪笥の中の女用と男用の着物の物語を紡ぐ。その三は、自由自在な味付けのさじ加減を楽しむ。三つの羽裏の自分だけの世界を自由に旅した、着物がたりです。

羽裏が自由すぎる件 その一
羽裏が自由すぎる件 その二

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