羽裏が自由すぎる件 その二
羽織をいただきました。濃い臙脂色地に百寿文様の渋い小紋の表地に大きな唐子文様の可愛らしい羽裏、とても拘りのある趣味性の高い羽織です。おそらく、百寿文様も唐子文様も中国に由来するおめでたい文様であるため組み合わせたのではないかと想像します。
そのまま着るにはサイズか小さすぎるため、自分サイズに仕立て直しをお願いしました。長めの丈の羽織が好きなので、表地の許す限り長くしていただくことに。そのため、羽裏は唐子文様の裂では足りないので別の裂をつけ直しました。
私が選んだのは、男用の長襦袢をほどいたと思われる裂。それは渋い渋い地色に、間隔の異なる縞と地紙文様が配されたもの。地紙の中には、山水画風の馬、人物、小屋が描かれています。どこか中国風な趣。百寿文様と地紙文様の中の絵がなんとなくぴったりだと思い組み合わせることにしました。そして何より、二つは同じ箪笥の中に納められていた女用と男用の着物。私がぴったりだと思ったのはそのためかもしれません。長年連れ添った夫婦、
または、父に大切にされた親子のもので、その妻か娘である女性は両方を大切に箪笥に保存しておいてたまに手にとって眺めていた、と勝手な情景を想像してみました。
洋服のジャケット感覚では表地が柄の場合の裏地は、その一色をとる、または、アクセントとなる色にするなどして無地を選ぶことが多いと思います。羽織の場合は、どんな羽裏を選ぶのかについては本当に自由だな〜、と思います。今回は、一つの箪笥の中にあった女用と男用の着物を表と裏にして自由な物語を紡いでみた、羽裏の着物がたりです。