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横浜能楽堂の室内装飾織物のお話

約150年の歴史ある能舞台のある横浜能楽堂。大規模改修工事のため長期休館する前の最後の特別施設見学に行ってきました。

横浜能楽堂は、鏡板と柱にこだわりのある歴史ある能舞台はもちろん、石と木が調和した屋外や内部空間、一文字葺きの銅板の屋根とその形状などなど建築そのものがとても素晴らしいです。ですが、私は何よりも内部空間の装飾に使われている錦の織物を見納めておかねばならないとの思いでした。内装の随所に錦の織物を使うことで、建築を何倍にも魅力的にしていると思います。何度となく見てきた織物たちをしっかりと見納めしてきました。

玄関広間カウンター腰部&見所前室扉の「疋田りんどう錦」
玄関ロビーを入ると受付とショップのカウンターがあり、その腰部分に錦の織物が貼られています。そして、観客席に入る見所前室扉の織物がお揃いになっています。とてもおしゃれなコーディネートです。

歩廊天井の「いちご裂(孔雀)」
観客席に入るための廊下に相当する歩廊の天井を見上げると錦の織物が貼られています。いちご裂は通常は丸い花文の連続模様のようですが、このいちご裂は孔雀が羽根を広げたモチーフの連続模様で、色合いが素敵です。歩きながら天井を見上げる方はそう多くないと思いますが私は必ず見上げます。

楽屋用玄関天井の「萌黄地蓮華文錦」
楽屋玄関の格天井に錦の織物が貼られています。格天井の格子に合わせて織の方向が互い違いになっています。玄関から差し込む自然光により、蓮華文の色が異なって見えるから不思議です。壁紙にはない織物ならではの演出だと思います。

装束の間地袋の「有栖川錦(馬手)」
シテ方の能楽師が装束を着けるための装束の間。このお部屋の棚の下部に欅の天板がありその下が地袋になっていて錦の織物が貼られています。私が最も気に入っている織物です。幾何学の文様と色柄が装束の間にふさわしい華やかさと格調を備えていると思います。初めて見た時の「これ、絶対に大好きな世界!」と思った胸のワクワク感が今も忘れられません。そして、今回近くでよくよく見てみると鹿の顔のひょうひょうとした可愛さに気づきました。ますます大好きになりました。

何度見ても飽きない、見るたびに好きなる、錦の織物たちを見納めてきました。横浜能楽堂は約2年半後に再度開館する予定、内装についてはほぼそのまま残るとのこと。錦の織物たちとの再会が楽しみな室内装飾織物がたりです。




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