キラキラカレシ マキオ8|小さきものを攻撃する男
時間は戻らない。
残酷にもこれだけは不変の真理だ。
黒猫
わたしは猫を飼っていた。
マキオはわたしの猫を嫌っていた。
ウチに来るたびにマキオは猫を追いまわし、猫たちがやるように「シャーーーー」と言った。
はじめは「変わった関心の示し方だな」くらいに思っていた。
無邪気な人だけど猫にもそうなんだな。
毎度「シャーーーー!」なんて、ふざけてるよ、ね。
のん気に見ていたのだけど。
それはだんだんエスカレートした。
マキオがふざけているのではないと気づいたのは、悲しい出来事のあとだった。
感情の出どころ
どうして?猫キライなの?ってマキオに何度か尋ねた。
「この顔見てるとムカつくんだよ。自分は弱いんです~守られてるんです~ってツラしやがって。何が言いたいんだよ?って感じ?なぁ腹立つことないのコイツに?」
マキオが何を言っているのかほとんど意味不明だった。
うちに来るたびにマキオは毎度、猫を追いまわして「シャーーーー」とやった。毎度だ。
毎度やられるから、猫の方も相当マキオを警戒した。
やがて猫はマキオが現れると物陰に隠れるようになった。
もしかするとわたしのいない時にもやられていたのかもしれない。
ある時、いつものように隠れていたところをしつこく追い回された。
玄関先へ追いやられ、またマキオに「シャーーーー」ってやられた時、わたしのかわいい黒い猫は失禁した。
消えた猫
後の経緯でわたしたちは結婚することになるのだけど、友人の家へ居候していたマキオが今度はわたしの部屋へ転がり込むように引っ越してきてすぐのことだった。
猫は消えた。
わたしが仕事から帰るともう家にいなかった。
外へは出していない子だった。
散歩はしたことがない。
家の外を怖がる猫だったから、自分から外へ逃げ出すなんてありえない。
マキオに聞いたけれど、「帰ったらいなかった」と言う。
どこにも見当たらないし、なにかあった形跡もない。
それから数日。
わたしは仕事が終わってから近所を探しまわった。
でもそれきり。
猫の姿をみることは二度となかった。
わたしの猫をわたしはもっと守るべきだった。
後悔しても遅い。
時間だけは戻らない。
*モラハラ・ポイント*
小さいものへの愛情がみられない。むしろ敵対するような、縄張り争いのような行動をみせることがある。このような行動がみられたらダメ、絶対。