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キラキラカレシ マキオ9|カオスの住人との距離の取り方
影響されまいとすればするほど、気づけばそっくり同じ軌道をたどる。
それがわたしたちだった。
約束しない宣言
マキオとは何の約束もしないほうがいい。
ネタを提供しないことだ。
「女子友に紹介したいから週末あけといて」などとマキオに頼んだとする。すると彼はかならずそこに何かぶつけてくる。
前日くらいに、
「あっ、ごっめーん。行けないわ」
「え?なんか計画とかあった?」
嬉々とした様子でそう言う。
「怒ってる?だってもう予定入ってて、みんなもオレ次第なとこあるし。だいたいオレはっきり返事してないよね?え、なになにオレなの?オレなんかした?」
マキオは本当は人づきあいが苦手だった。
わたしが女友達を家に呼んだ時、彼は寝たふりをしてやり過ごした。
また別のときには、何の予定もないのに「約束がある」などと言って消えた。
そもそも会話が貧しい。
マキオの友人が急にうちへ立ち寄ったとき、彼はわたしのインテリアセンスを己の手柄のように友人たちに自慢しはじめた。そしてそれが終わると話すことがなくなり、飲み会のようなノリで友人をイジる話に終始した。
すぐそばで見ている人間しか気づかないだろう。
微妙なことだけれど、彼は会話の本筋というものがあまりわからない。
おそらく彼自身も自覚している。
彼がわたしにイキってくるとき、よくこんな風に言っていた。
「受け入れろよ!」
「オレを受け入れる奴しか、オレは受け入れない。そうやって生きてきたし、これからもそうやって生きていく!」
何かにつけ、いつもこのパターンで何かを宣言する。
いつでもそんな調子なので、とにかくマキオは他者をがっかりさせることでしか自分の存在価値を確認できないようだった。
置いてけぼり
マキオは「相手に置いてきぼりをくらわせる」が好きだ。
彼のこの性向は何が嬉しいのかさっぱり理解できないので意図的にやられていると気がつくのに時間がかかった。
ただ、やられたからひどく困るかというとそうでもない。
どういう目的でやろうと思うのか今でも謎だ。
意地
一方この頃のわたし。
マキオが好むネタをみすみす提供してしまうのもシャクなので、提供しないことに神経をとがらせていた。
約束を破られないように約束しない。
家を出るギリギリまで出発時間を教えない。
予定を教えない。
わたしの意地もヘンテコだ。
マキオといるわたしまで思考回路が退化していくのではないかと時々心配になった。
*モラハラ・ポイント*
自分を優先し、とにかく優位に立ちたがる