キラキラカレシ マキオ1|ある日突然、土産を持って現れた男を家に入れるか?
ザワつく出会い
突然家に来るような男を家に入れてはいけない。
マキオとわたしは職場で出会った。
わたしは地味目な新社会人、マキオは笑顔爽やかインターン生。
歓迎会の席。
わたしの向かいに着席したマキオは「オレ手相見れるよ。見てあげる」とわたしの手を取った。出会って数日のことだ。
初対面の男女とはいえ年齢が近ければこんなもの・・・だった?
そうだったっけ?
居心地悪さ半分で手相を見てもらったものの彼の占いは占いとはいいがたいおしゃべりだった。
(女子の手を握りたかっただけ?)
それが彼との出会い。
第一印象
同年代の男子としてみる分には十分カッコイイ。
明るく見るからにモテそう。
第一印象は決して悪いものではないはず、なのに。
彼には「・・・なぜ?」な行動が多かった。
予測不能な印象。
インターン期間が終わりマキオが去るまで心のザワつきはつづいた。
ザワつく再会
それから、翌々年の春。
わたしは当時の彼とささやかな同棲生活中だった。
ある日曜日の午後、玄関チャイムが鳴る。
わたしは彼と顔を見合わせた。
来客の予定はない。
誰だろ?首をかしげながら出てみると、そこにはマキオが満面の笑みで立っていたのだった。
アポなし訪問
ライダースーツ、手には小さな包み。
それをこちらへ手渡しながら、
「はいこれお土産、日曜だし家にいるかなと思って寄ってみた」
・・・・・え?
頭が追いつかない。
数度しか会ったことのない独身女子の家に、アポなしでお土産渡しに来ます?人懐っこい人?何をどう判断したらよいかわからず、また心はザワつく。
そして次のマキオの言葉でわたしはさらに混乱する。
思考はスローモーション
「今、いいですか?」
・・・はい?
「今、A町からずっとバイクで帰ってきたとこなんで。5時間くらい」
ええと?
「家。」
?????
「家入れてもらっていいですか?せっかく来たんで。」
・・・はぁ?????
意味をとるのに時間を要した。どういう流れでそう言えるものか、わたしの経験値ではすぐに飲みこめず返事がスローモーションになる。
真意か否か
目の前のこの人、日曜の午後にアポなしで独身女子の家へ押しかけ、土産を渡したのだから家へ入れてくれと言っている・・・ってこと?
(そんなわけないよね?)
そんな意味で言ったんじゃないのでは?
わたしの理解がおかしい?
これは冗談?
そうだきっとこれは下手な冗談、でもなんて切り返せばいい?ぐるぐる迷いながら胸の赤色灯は激しく点滅しはじめていた。
拒否
家の中から、当時の彼が心配そうにこちらの様子をチラチラとうかがっている。わたしはマキオに言う。
「あの、今日わたし休みなんで(職場関係者と会う理由ない!)」
「朝から家でくつろいでたんです(客人来る予定なんかないから!)」
「見てホラ、化粧もしてないし(休日モードなの!いい加減わかって!)」
自分としては毅然と現実を伝えたつもりだった。だがマキオの返事はそれを軽く超えてくる。
「や、すっぴん大丈夫だよ。ヘーキヘーキ。オレも休みたいだけだし。眠くてさ。すっぴんなんか気にしないで。」
この時点でザワザワは頂点。
いえ。
えーとね。
ちょっとね。
ごめんなさい。
ダメかも・・・
モゴモゴ言いながら、家の中に目をやる仕草で人がいるんだぞアピールをする。するとようやくマキオはあきらめるような様子を見せはじめ、しかし全く悪びれるそぶりはなかった。
「そうなんですね。そっか。会いたいな~と思って、せっ~かく来たのになぁ~。じゃ、ほんとに帰りますね?」
ぶつくさ言いながら帰って行ったのだった。
瞬時に霧が立ちこめ知らない森で帰り道を見失ってしまったような、そんな出来事だった。
異次元体験である。
彼のバグだったのか、自分に何か落ち度があったのか?よくわからなかった。
(手相を見させたのがよくなかったのかも…?)
そのあと一週間以上わたしは真剣に悩んだ。
突然家へ押しかけて来るような男をぜったいに入れてはいけない。
この日のわたしは迷うことなく、確かにそう思った。
*モラハラ・ポイント*
最初は「さわやか、明るい、いい人」に見える
代償を求めてくる。恩着せをサラッとやってくる