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キラキラカレシ マキオ12|解釈の自由
橋を渡っていたよくばりな犬は、川に自分と同じような犬が肉をくわえて歩いているのを見た
パニック
お湯が・・・出ない!
こんな時どうする?どうしたらいい?
わたしは不安におそわれた。
なんなら軽くパニックだ。
とても寒い日。
マキオと出かけていて帰りがすっかり遅くなってしまった。
すぐに体をあたためたくて湯舟を張ろうとしたら。
お湯が出ない。
いや水の通る音が・・・しない?
どうやら水道管が凍りついてしまったもよう。
あわてて業者を調べる。
引っ越してきたばかりの街、もう夜10時をまわろうかという時間、焦って必死に電話を握りしめるわたしの横には知らん顏を決め込む男。
寒さとパニックと心細さとで、もう泣きそうだった。
対処
電話しては断られ、電話しては断られ。
ようやく「深夜料金でもいいなら」と請け負ってくれそうな業者さんが見つかる。もちろん二つ返事でお願いした。
電話を切って心の底から安堵していると。
それまで背中をこちらへ向けていた男が口をひらく。
「いつ来るって?すぐ?そう。で、いくらなの?」
2万円だって。
深夜料金ということで日中の倍額を提示されたけど、週末の悪天候の中、急いで来てくれるのだから妥当だろう。わたしは納得して依頼したのだ。
スイッチ
マキオ、謎のスイッチが入る。
「2万?頼んだの?バカじゃないの?ぼったくりだろ!」
今すぐ対処してくれるんだから、そんなもんじゃない?
だいたい営業時間外なんだし。
「オレがそういうのキライって知ってるよな?ぼったくりにそんな大金払うなんて!」
はい?
「そういうの」って?
「知ってるよな」って?
わたしの家で、わたしが代金払うのに、何?
ほどなくして業者さんが到着。
1時間ちょっとの作業で水道は復旧した。
ぐったり疲れ切って、マキオとはもうそれ以上話したくなかった。
マキオのキライ
彼はマキオ。
支払いたくない男。
あらゆる角度から難癖をつける。
支払いたくない勢のガチ勢だ。
「得してなければ損」と主張する彼だがパチンコ大好き人間でもある。
おそらく倹約家ではない。
脳のその部分どこに落としてきた?と疑ってしまうほど、彼には他人の時間や労力や善意その他に関する想像力が無かった。
無くてスカスカな部分は
毎度おなじみ「上か下か、損か得か」に置き換える。
他人を見れば「あいつはオレを下に見てふっかけてる」と言い、
知人を見れば「あいつはオレより楽してカネ儲けてる」と言う。
誰かしらが善意で骨を折ってくれれば、
「あいつが気をつかうのも当然。オレ尊敬されてるから」
などと歪んだ解釈をする。
それがマキオだった。
たぶん彼の周りにいるコミュ障の友人たちはまったく気づいていないだろう。この違和感は嗅ぎ分けられる人間とそうでない人間がいる。
わたし?聞くのは得意だけど騙されるのは得意じゃなかった。
*モラハラ・ポイント*
会話中の言葉の使い方がおかしい。受け取り方もおかしい。