火のある暮らし
香川に移住してからやりたかったことの一つは、「火と遊ぶ」! というと、「火遊び」みたいで危ない感じもしますが、とにかく、火に惹かれていました。
東京にいた頃、近所の古道具屋さんで手あぶり火鉢を見つけて買いました。だけど、アパートで火を焚くわけにもいかず、狭い部屋のインテリアになって出番を待ってくれていました。
香川でお借りした古民家に引っ越すと、すぐに火を焚き始めました。このエリアで焚き火していいのか知らず、近所の様子を伺いながらおそるおそる…。焚き火に慣れていなかったので、最初のうちは火を安定させるのにちょっと苦労しました。土鍋に入れた玄米ご飯を焚き火で炊こうとしているのに、火がついたり消えたりでなかなか炊けず、お腹ペコペコになりながら庭で枯れ枝を拾い集めているようなこともありました。
だけど、火を炊く能力はDNAが記憶しているのでしょう、毎日のようにやっているとあっという間に上達するものです。土鍋でご飯や野菜スープを焚いたり、パンやスコーンを焼いたり、コーヒー豆を焙煎したり、いろんな焚き火料理を楽しみました。
立派な炉をこしらえたわけではなく、庭に転がっていたコンクリートブロックの上に、これも転がっていた鉄網を乗せただけ。火が炊けて、鍋やフライパンが乗る場所さえあれば、ちゃんと調理できます。
同じ料理でも、外で焚き火して直火でつくると、一段と味わい深くなります。玄米はふっくら柔らかく炊けるし、野菜スープは身体が芯からあたたまり、コーヒーは炭火焙煎のような風味になります。
網に乗せて直火で加熱すると、土鍋ややかんなどの調理道具が煤で真っ黒になりますが、その真っ黒具合も楽しんでいました(うっかり服につけてしまったときはあちゃーという感じですが)。
焚き火料理といえば、焼き芋!(アルミホイルで包んで放り込むだけなので「料理」というほどでもないですが…) 寒い時期に焚き火して、おやつに焼き芋を食べると幸せな気分になれます。あるとき、お客さんでサツマイモの嫌いな子どもたちが、自分でアルミホイルに包んで焚き火に入れて焼いたサツマイモは美味しそうに頬張っていてお母さんがびっくりされていました。焚き火マジック!
凝った焚き火料理だと、竹に生地を巻いて焚き火の上でぐるぐる回して焼くバームクーヘンなんていうのもあります。これは子どもたちが集まるイベントでやることになり、うちでも練習でやってみたところ、子どもに返る楽しさでした。ぼくはベジタリアンなので牛乳や卵を入れず生地をつくったら、見た目はバームクーヘン、食べたら和風のお菓子でしたが…。
焚き火料理をするのに立派な薪は必ずしも必要なくて、荒れた竹林で枯れたり倒れたりしているような竹を数本もってくれば、ご飯とスープが炊けて、おやつの焼き菓子や焼き芋までつくれることがわかりました。竹林もきれいになって、いいこと尽くめ。
竹といえば、竹筒の中にお米を入れて焚き火で炊く竹飯も美味しいです。かすかに竹の香りがご飯に移って、おかずなしでもご飯を食べすぎてしまう美味しさ!
香川に移住した頃は、なるべくお金に頼らない暮らしに憧れていたので、お金を使わずに料理できる枯れた木の枝や竹などが身近なあちこちで手に入ることに興奮していました。自転車でどこかへ出かけたときに、薪になりそうな木が転がっていたらかごに積んで持って帰ったり。時間と手間さえかければなんとでも生きていけて、田舎は豊かだなぁと思ったものです。
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