Castway-難破-(シナリオ)
人 物
高木律子(32)元NPO職員
高木加奈子(28)律子の妹
ヴァンダ(40)律子の元同僚モザンビーク人・NPO職員
真中佳代子(28)律子の友人・元同僚・NPO職員
シルビア(7)村の少女
バーテンダー
○モザンビーク・北東部・村・上空(朝)
赤土の大地に土と草を塗り込んだ壁と
とヤシで葺いた屋根の家々が500戸ほど点在している。
周囲にはトウモロコシ畑とジャングルが混在して広がっている。
T:モザンビーク北東部
○同・広場
数軒の店と家が周囲に立っている。
中央に立つマンゴーの木が作る葉陰に3トントラックが停まり10人
がすでに荷台に座っている。
荷台の横に立った高木律子(32)がヴァンカ(40)と
真中加代子(32)をそれぞれハグしている。
律子の服装は色の抜けたジーンズ、色の変わった白いTシャツ、
素足にサンダル。髪は無造作にまとめ手で削った棒をさしている。
佳世子「律子、6年間お疲れ」
律子「ありがと佳代子、ヴァンカもまたね」
ヴァンカ「リツコサン、マタアイマショウ」
再度二人にハグして荷台に乗り込む律子。ヴァンカが古びたバックパック
を渡す。トラックが動き出し荷台後部のフレームを掴む律子。
二人が手を振っている。
× × ×
村の中を走るトラックの前方にシルビア(7)が立ちはだかっている。
ゆっくりと停まるトラック。
(以下シルビアとの会話は字幕。)
シルビア「リツコこれ」
シルビアが差し出す手の上に赤い実と木で作ったピアスが乗っている。
律子「作ってくれたの」
シルビア「リツコ、きっと帰ってきてね」
律子「シルビアありがとね」
荷台から身を乗り出しシルビアを抱きしめる律子。
× × ×
走り出すトラック。手を振るシルビアが遠くなっていく。律子に気が付き手を振る村人、車を追いかけて走る子供たち。
× × ×
涙ぐみながら手を振る律子。
次第に村が小さくなる。
○東京駅・丸の内地下中央口・改札内(夜)
バックパックを背負った律子が人の流れをせき止めている。舌打ちして律子を追い抜く人々。
律子「ええ、切符ってどうやったら出るの」
加奈子「お姉ちゃん、お姉ちゃん」
改札外でOL風の高木加奈子(28)が手を振っている。
律子「加奈子久し振り、あ、すいません」
律子に後ろからサラリーマンがぶつかり、律子を押しのけるように改札に入っていく。
加奈子「何やってんの、邪魔でしょ。左端に
切符用のがあるから!」
律子「あ、あああ、うん」
行き交う人に流されそうになりながら移動する律子。
○東京・加奈子のマンション・ダイニング
ダイニングでビールを飲む二人。おつまみ類が広げられている。
加奈子「もうさ、どこの島から来た人かと思
ったよ、自動改札通れないなんて」
律子「久し振りすぎて、すっかり忘れてたん
だもん」
加奈子「それにその恰好!」
律子「加奈子はすっかりOLさんだねぇ」
加奈子「お姉ちゃんしばらく私の服着なね」
律子「ええ、このままじゃダメ」
加奈子「どっから来たの感満載だよ」
律子「アフリカから来たんだもん」
加奈子「ま、いいや。はい任期満了お疲れー。かんぱーい」
グラスを合わせる二人。
× × ×
一人おつまみを齧る律子。シャワーの
音が聞こえている。
バックパックを開けココナツの殻でで
きた小物入れを大事そうに取り出し
ふたを開ける。シルビアのピアスを
取り出し耳につけ自撮りする。
○律子のスマートフォン画面
SNS画面に律子の自撮り写真とキャプチャが表示される。
律子(声)「日本に帰国!可愛い妹のシルビアが作ってくれたピアス💛すでに村が懐かしい!!」
○同・玄関(朝)
T:一週間後
可愛い系のスーツに、低めのポニーテール姿の律子が立っている。框に立つ加奈子が律子をチェックしている。
加奈子「やっぱ、借り物感満載だわ」
律子「裸よりましってことで、OKしてくれる会社なことを祈る」
加奈子「そんな低いとこで判断してくれる会社無いとおもう」
律子「へへへ。いってきまーす」
加奈子「ちょっそのピアスはずして」
律子「ええ、お守りなのに」
加奈子「だーめ」
しぶしぶシルビアのピアスを加奈子に渡す律子。
律子「じゃあ行ってきまーす」
手を振る加奈子。
○同・寝室(夜)
T:一ヵ月後
姿見横の飾り棚の上にココナツの殻の小物入れがふたを開けて置かれている。パジャマ姿でスキンケアをしている律子。床に置いたスマートフォンが光る。佳世子の表示。手に取る律子。
律子「反応おそっ」
嬉しそうに見つめる律子。
加奈子「何が遅いって?」
髪を拭きながらダイニングに入ってくる加奈子。
律子「アフリカの同僚がさ今頃日本に無事到着良かったーって。一月に一回くらいしかネット見られないから」
スマートフォンを操作する律子。
加奈子「ふーん、ところでお姉ちゃん週末の夜六本木行かない?仕事決まったしぱーっとさ」
律子「うん、いいよ。アフリカの服でもいい?」
加奈子「まーうん」
○六本木・カフェバー(夜)
青基調の照明が照らす薄暗い店内。フェミニンなワンピースの加奈子と、アフリカンな衣装にシルビアのピアスをつけた律子がカウンターに座っている。バーテンダーと談笑する加奈子、居心地悪く周囲を見回す律子。
○六本木交差点
交差点を歩く二人。行き交う人々を観察する律子。
律子「あのさ、加奈子やっぱりファッションレクチャーしてくれない」
加奈子「どしたの?」
律子「いやーなんか私浮いてるよね」
加奈子「やーっとわかったの!?」
○加奈子のマンション・寝室(夜)
ファッション雑誌を見ながら、ファッションショーをしている二人。
○同・寝室(昼)
姿見に向かっていた律子が振り返る。
ベッドに腰かけていた加奈子がグッドサインを出す。嬉しそうにする律子。
○同・寝室・姿見の中(昼)
T:2ヵ月後
慣れた手つきでメイクをする律子。
○同・寝室
自撮りする律子。
スマートフォンを操作する。
ココナツの小物入れにふたがされている。
○律子のスマートフォン画面
SNS画面に自撮りした律子の写真が表示される。
○同・寝室
ベッドに腰かけ、スマートフォンを見ている。
律子「けっこう、いいね増えたな」
指が止まる。
○律子のスマートフォン画面
律子自撮りの写真の次に佳代子の渡航が表示されている。笑顔の佳代子、ヴァンカ、シルビア、律子の写真。
指が動き律子の自撮りに戻る。笑顔の差がはっきりわかる。
○同・寝室・姿見内
スマートフォンをみている律子。
律子「いいね、また増えた」
真顔で鏡の自分を見つめる律子。