パン-リュスティックって、大昔のパンなのか?
リュスティックのお話です
正確にはpain rustique
rustiqueとは、粗野な、自然のままの意
製法自体は第二次大戦前からあったものですが
日本で広まったのは、フランスのジェラールムニエさんのレシピ
そこには、当時のフランスで、バゲットが公定価格で販売されていた時代に
それを笠に着て、いい加減な素材や製法でバゲットを焼いていた近隣他店に対して
添加剤を使わない素のままの小麦と、手間暇かけた昔ながらの製法を実直に守ってバゲットを焼いていたムニエさんが
同じ価格でしかバゲットを販売できない矛盾に対する対策として
バゲットと同じ素材で、違う美味しさを持つパンを焼くことで、正当な利益を取りたいと考えて
師匠である国立製粉学校のカルベル先生に相談し
先生が昔からある製法をもとに、ムニエさんの工房の設備などを活かす形で製法を組み立て直し生まれた背景があったようです
なので、rustiqueの意味から、パンの祖先みたいなイメージですが
今世間で焼かれているパンリュスティックって、実はバゲットが先ずあって、その後生まれた、割と近代的なもの、なんです
作り方は至って簡単です
キーワードは「手混ぜ」
そう、「手捏ね」ではありません
バゲットも比較的捏ねないパンですが、とはいえ必要最低限捏ねますし、特徴である細長い仕上がりにするために、しっかりと成形はします
リュスティックは捏ねる事すらせず、混ぜるだけ
そして成形すらしません
捏ねない事で小麦本来の味を損なわない製法は、まるでバゲット以前のやり方ととらえられがちですが
今、世に広まるリュスティックの背景って、都会のパンの象徴であるバゲットが定番となった近代に於いて
大昔からあるパン作りを温故知新しアップデートされ生まれた、職人の知恵と技術、先達へのリスペクト、そして同時にしっかりとした経営者としての采配の賜物、なんです