相棒小林快との物語 第一話 〜日本インカレ入賞後の衝撃〜
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彼と初めて会ったのは…はっきりとは覚えてないが、私が初めて声をかけたのは私が大学4年生、小林快が大学2年生の日本インカレの時だと記憶している。
前年の日本インカレを優勝していた私は、その年も想定通りのレースで2連覇。レースは何事もなく幕を閉じた…ように思えた。
ゴール後に入賞した選手を見るまでは。
私は試合前、自分に関わるであろう選手を予測し、大体の順位も当てられるようにしている。そしてこの当時から大きく外すこともほとんどない。
この年の日本インカレもいつも通り入賞ラインまでを予想し、予想者の中には失格者もいたが、ほとんど想定通りの入賞メンバーでレースを終えたように思えた。
ゴール後しばらくすると、入賞または失格したであろう10人くらいの選手が帰ってきた。失格とは思えない表情を浮かべる選手の中に、1人だけ私の想定に引っかかっていない選手がいた。
小林快だった。
当時の彼は、大学での試合の出場歴はほとんどなく、出場したレースでも大した記録、順位ではなかった。
なんと出場者の中でただ1人だけ自己記録を更新して4位に食い込んできたのだ。
夏のインカレでまぐれは通用しない。
夏の昼間に行われる(当時)条件の悪いこの種目において、日本インカレでの自己記録更新は大したものだ。
最終学年だった私は彼への期待を込めて声をかけた。
勝)来年は表彰台にあがれるし、優勝も狙えるから頑張れよ!
快)僕はこれで歩くのをやめます!入賞したら競歩辞めていいって言われたんで!
迷いのない強い口調で返された言葉に私は衝撃を受けた。
彼は早稲田大学で走りに専念したいがために、このインカレで入賞できたら競歩を辞めるという約束を部内で交わしていたのだ。
もったいない…
そう思った私は、絶対に続けた方がいいという話をその後もしてみたが、全く聞く耳を持たず、競歩はこれでやめます!!!との一点張りだった。
その後それぞれの陣地に戻り、彼との初めての会話はこれで終了した。
インカレ入賞後に競歩を辞めるという衝撃的な初会話だったが、非常に面白くも思えた。
自分の思いを貫く姿はまるで自分自身を見ているかのようで、私はそういう選手が好きだ。
第二話へ続く🚶♂️
第二話↓