読書感想『自衛隊の闇組織』
ドラマVIVANTで注目ワードとなった「別班」。その存在に迫った本。2018年発刊なので少し前のものだが、ドラマの影響か最寄りの書店の注目書籍コーナーにあったので思わず手に取った。
ノンフィクション物は大好きで、気になる本はちょくちょく読んできたが、著書であり記者の石井氏の取材力がすごい…というのが第一の感想。
16年程前と言えば、まだ今ほどネットも充実しておらず、光回線が普及し始めたといったところではなかったか。2008年にiPhoneが登場し、3Gが携帯用電波として主流になった頃でもある。
内容としては、VIVANTのストーリー構成や伝えている別班の姿などのベースになっているものと感じた。(ドラマが、この本や過去の同類書籍や新聞その他資料を参照して作られていると想定される)
記者は2008年に別班の存在をしり約5年かけての取材を経て2013年末~2014年に新聞報道を実現。国会での質疑も行った人である。特定秘密保護法案が成立する前に、国民に一考させることを狙いに取材を進めていたが、予想よりも早く法案が可決されたため、報道は少し遅れたということだった。
自分といえば、約10年前にこのことが報道されていたことすら知らなかった。が、本を読んで、どこかでうっすらそんな話を(キーワード的に)聞いたような記憶もあるが、まったく意に止めていなかったのは間違いない。
特定秘密保護法については今でも様々な意見があるようだが、当時も今も別班を通して、国民が日本の在り方を考える良い機会になったのではないかと思う。
また、VIVANTも含めて、この本を読んでの感想としては、世の中(身近な所で言えば日本国内)には、正しい情報ばかりではないということ。むしろ、正しい情報なんでほぼないのではないか、と思ってしまう。
国家機密のようなことが事細かに国民全員に入らないのはわからないでもないが(会社だってそうだし、家庭内だって同様)、テレビや新聞の報道は、必ずと言っていいくらい、誰かの思惑、が含まれているように感じられる。
今はネットで誰でも情報を得られる時代である。マスコミの報道や誰かが言っていたということを鵜呑みにせずに、自分できちんと調べ、その正当性をきちんと確認する必要があるのではないか。
エビデンス(根拠)としては、大学や科学的な研究論文まで遡るのが理想だが、残念ながら日本語ではヒットすることが極めて少ない。自分も最終的には英語で調べないとエビデンスらしきものにはたどり着けないのが実情。
この本も取材による事実ベースで書かれたノンフィクションではあるが、若干著書や関連機関の色が出た論調となっている。とはいえ、日本の首相や大臣も知らないような情報を公にしたものとして、とても貴重な一冊であると思う。