福祉の森にひとしずく
介護医療保健分野での共通目的は、一言で言えば『QOLの向上』とされる。これはおそらく今後も不変的なものといえる、大きな理念だ。これを達成させるために色んな専門職や支援者たちが日夜駆け回っているわけだ。ご多分にもれず、自分も同じように、駆け回っているつもりではいる。
現場仕事だけではなく、noteをはじめ、Facebook、Instagram、Twitter等で自分が思う介護の楽しさや世知辛い部分、具体的なケアのことまで踏み込んで発信もしている。これにも色んな目的あってこそだが、根本的なところに介護の世界をより良くしていこうという思いがある。
ただの一介護職員が世間に向かって自分の考えを垂れ流すだけなのに、なにが介護の世界を良くするだ、との声も聞こえてきそうではある。僕も以前はそう思っていた。
『ハチドリのひとしずく』というお話をご存知だろうか。とある森が大きな火事になり、多くの動物たちが我先にと逃げ出す中、1匹のハチドリだけが、その小さなくちばしに水を含み、火に向かってポトポトと落としていた。
「そんなことしてなんになる」
他の動物たちからそう問われたハチドリは、こう答えた。
「私は私にできることをしているだけ」
日々ケアを行う中で、「こんなことしてなんになんねん」「どうせ忘れるからええやろ」「寝たきりなんやから何しても一緒」と思うことがあるかもしれない。『QOLの向上』なんて言葉は知っているだけで、なんの意味もないと。
しかし、あなたが行う“たった1回のトイレ誘導”“たった1回の食事介助”“たった1往復の浴槽への出入り”がハチドリのひとしずくのように少しずつ積み重なり『その人らしい生活』を作りあげるのだ。
僕が行う活動は小さなものかもしれない。しかし、日々行われるケアが積み重なって『QOLの向上』に繋がるように、発信を通して誰かの中の何かが変わり、その誰かの目の前にいる人の生活が変わるかもしれない。そしてそうやって世界はできているのだと確信している。
小さなひとしずくから始めよう。
自分にできることをするだけ。
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