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オーディオ機器における電磁両立性
ラジカセやブラウン管のテレビが普通だった昭和から、スマホ、ブルートゥース、無線給電、WiFiが当たり前の令和では、オーディオ機器を取り巻く電磁環境は大きく変わっています。
オーディオ機器でもとりわけ、繊細なのがマイクですが、マイクのEMC(電磁両立性)に関しては、こちらの記事が参考になります。
また、EMCの概要に関しては、こちらの記事が参考になります。
マイクは、ファンタム電源(+48V)で仕様する場合、電力はコモンモードで、信号はノーマルモードで送る形になります。さらに、大きなホールの天井までケーブルを引いているようなケースでは、EMCを考慮せざるを得なくなります。
簡単に描写すると、天井まで伸びるケーブルはアンテナで、しかも地面に対して大きな電位(+48V)を持つし、非常に大きなループ面積を持つことになります。
同様に、ホールのスピーカーとパワーアンプも似たような電磁的トポロジーを構成します。
これまで、オーディオパワーアンプの内部のEMCに関連する設計と実装のポイントに関して、特にコモンモードノイズと絶縁の点を掘り下げてきましたが、体系的に考える場合はEMCの観点が非常に重要です。
EMCのような学際的な領域では、電気工学、電子工学、無線工学、音響工学、機械工学など、縦割りの理解では、まったく歯が立たない領域です。
また、JISなどの工業規格も、強電領域の影響が及ぶような範囲にとどまっているため、オーディオ機器のような弱電領域の影響に関しては、なんら規定されていないのが現状です。
それでも、きちんと理論と実践に基づいて音質を追求していくと、必然的にこのような関係性が見えてきます。
一方で、人間は両耳を持っているため、音像をステレオフォニックで知覚できます。
しかし、ステレオフォニックをきちんと成立させるためには、録音から再生まで、両チャンネルの信号に関してEMCをきちんと成立させる(位相とバイアス)必要があります。
他方で、静的な周波数特性が20-20kHzでフラットというのは、時間領域を無視した特性で、音質を表す特性のほんの一つに過ぎません。
したがって、いわゆるスペック至上主義というのは、部分最適の追求でしかなく、全体最適としての音響体験の追求にはほど遠いと言うことが理解されます。
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