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沖縄県北部の村をデザインしようとした話
第0章 はじめに
こんにちは!はじめましての方ははじめまして。
普段は学生として、プログラミングの講師やITコンサルとしての活動を行っている中村颯です。
今回は皆さんご存知リクルートさんの学生向けプロジェクト「WOW! BASE」に参加させていただいたときのレポートのNoteです。
プロジェクトのルールや関係者の皆さんの都合上、具体的な画像やスケジュール等については触れられませんが、できる限りで体験と思考の変化について綴っていこうと思っています。
長く拙い部分も多いですが、どうぞ最後までお付き合いください。
第1章 イベント概要と参加理由
さて、まず今回のイベントについて。前述の通り「WOW! BASE」プロジェクトが主催する
「沖縄県大宜味村の魅力をデザインせよ~来村者がリピーターになるための『大宜味村での過ごし方』を若者視点で提案しよう~」
というイベントに参加してきました。
実際に興味を持った学生たちが沖縄に集まって、今回のターゲットである「大宜味村」についてリサーチを行い、村の形を魅力にしてみるというイベントです。
しかもリクルートさんが交通費・宿泊費・一部食費まで負担してくださる大盤振る舞い。
今回このイベントに参加した理由は大きく分けて2つ。
普段はIT系でのみ使っている問題発見・解決の能力を別の形で実地で活かし、経験と自信をつけること。
(そして、自費をかけることなく沖縄県を観光すること、です。)
2つ目は大きな声ではいえませんね。
でも結局我々視点ってこういうことだろうと思うところではあるのできっと許してもらえるはずです。
そしてまだ何も話していない段階ですが、結論としては「最高に楽しいイベント」の一言に尽きるものでした。
この感覚が、WOW! BASE独自のものなのか、所属していた班独自のものなのかは全くわかりませんが
大学生になってからは早々得られることのない「修学旅行感」と
大学生になった今だからこそ欲する「学術・人生における相互刺激の場」の両立に成功している稀有なイベントです。
楽しい以外の何物でもない。
遊びとしても学びとしても人生の中でもトップクラスに入る最高のイベントです。
遠征系WOW! BASE、また行きたいです!
(色々優等生とはいえない振る舞いもしているので次回行けるかどうか)
第2章 Day0(前日入り)~沖縄観光のはずが…
ここからは実際にイベントであったことを僕視点の経験と思考の分野で話していきます。
イベントは計4日間あり、遠方勢は当日入りが間に合わないため、前日入りとなります。そのため、早めにつくことができれば一日目は基本的に自由行動で観光がすることが出来ました。最高です。
僕はもともと沖縄が大好きで、小学校の修学旅行の思い出とか、家族旅行とか、たくさんの思い出を沖縄においてきている人間です。
そんな僕にとっては沖縄に行けること自体が夢のような話。いく前から色々リサーチして準備も万端。もちろん観光する準備もです。
というわけでイベント始まる前日のDay0は観光三昧。
沖縄の魅力を言語化してみる
ここで一度僕にとっての沖縄の魅力を言語化してみましょう。僕が今まで持っていた沖縄の魅力は大きく分けて2つ。
「自然」と「独特な歴史が生み出す文化」です。
この2つが唯一無二の経験を生み出して、大切な人たちと唯一無二の思い出を作ってくれます。
いざ観光スタート……だけど何かが違う
さぁ、そんな沖縄を自由自在に観光できるDay0。さぞかし楽しいだろうと思いきや…
「あれ…?僕が好きだった沖縄ってこんなのだったっけ…?」
自分でも信じられないほど気分が乗らない。あの沖縄に、ほとんどお金を使わずに来られるというあまりにもないチャンスなのに。楽しくなれないんです。
一応お伝えすると僕は一人でディズニーに行けるレベルでは一人での観光には抵抗はないはずです(ただのDオタ)。
そのため、シンプルに沖縄自体とうまく心が釣り合っていない感じです。理性は「楽しいはず」といっているのに、心が「楽しくない」といっています。
それでも貴重な機会を無駄にするわけには行きません。首里城や国際通りなどなど、The沖縄の観光地を一人で周ります。
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特に大好きだった首里城は火事の後の復興が終わっておらず、天気も相まって僕の心境を表しているかのよう。
(首里城が復興しきった暁にはまた行きます)
そんなこんなでDay0の観光は終わり、ちょっと不安なイベント本番を迎えるわけです。
第3章 Day1~ファシリテーションと超高速チームビルディング
ここからはイベントの内容に深く触れることも出来ないので自身の変化についてまとめていきます。
Day1からは大体5人の班に分かれてDay4まで一緒にイベントに関わっていきます。
今回の僕の目標の1つは「皆をファシリテートすること」。
その達成のためにDay1は班の誰よりも早く席について、来る人一人ひとりに声をかけようと決めていました。
実際、それには成功しています。
ただ、現実としてここに来る人達のレベルははるかに想像を上回っていました。
始まって一時間も立たない自己紹介。
この段階で全員が完璧に自己開示に成功し、全員が遠慮なく互いを尊重した議論が可能になっていたんです。
きっとこれはどの班よりも高速で完璧なチームビルディングだったと自負しています。
ただこれは別に僕の力ではないです。
全員が僕と同じような力を持っていました。
そんなメンバーだったからこそ、うちの班の全員が共通してもった目標が
「サーバントリーダーシップを発揮すること」です。
サーバントリーダーシップとは?
皆さんはサーバントリーダーシップをご存知でしょうか。
サーバントリーダーシップはいわゆる上司が命令するような形の支配型リーダーシップの対極にあるものです。
他の人達のサポートに全力で回り、他の人達を最も輝かせるリーダーシップ。それがサーバントリーダーシップです。
私達の班はイベント中、全員がそれを目標として、イベントに取り組んでいました。その結果それぞれがしたいことを好きにしながら、互いのやりたいことも邪魔しない、遊びと学びのメリハリがとんでもなくうまい班になったと自負しています。
さて、そんな班で過ごすイベントは自己開示が鍵で、バスの中でもどんなところでも議論が発展しました。
第4章 大宜味村を「デザイン」する? ~ イベントのテーマと3ステップ
まず大前提として、今回のイベントには
「来村者がリピーターになるための『大宜味村での過ごし方』を若者視点で提案しよう」
というテーマが存在します。
これをみて、そしてイベントの最初のインプットなどを含めて「ビジネス・企画を若者視点で提案するという意味だな」というふうに率直に感じました。
さて、問題解決における僕がよく使う3ステップとして
「少し先の理想」
「現状と理想との差異(課題)」
「その課題を無くすやり方(手段)」
の3つを捉えるというものがありますが、この時点で「村が観光で豊かになる状態」を「理想」として捉えていたのです。
これは正解でもありますが間違いでもありました。
今回これを言語化できる形に落とし込めたのが一番の収穫です。
大宜味村の4つの里
今回のイベントで訪れた大宜味村を皆さんは知っているでしょうか。
大宜味村は「長寿の里」「芭蕉布の里」「シークヮーサーの里」「ぶながやの里」の4つの里として知られている・魅力を打ち出している村です。
僕達が最初にリサーチした時点では沖縄県北部の村は過疎化が進んでいて、その現状をなんとかしようとしていると聞きました。
その上で今回は観光を使ってなんとかしようという話です。
ジャングリアのビッグウェーブ、最適解は本当にそれ?
実はちょうど沖縄県北部の観光においての希望の光が最近指してきているのをご存知でしょうか。
新しく北部にジャングリアと呼ばれるテーマパークができるのです。
大宜味村を「ジャングリアにいくついで」に。
なんなら「大宜味村にいくついでにジャングリア」に。
こんな宣伝ができるのは今だけです。
今を逃したらこのビッグウェーブに乗ることは出来ません。
これが観光として大宜味村が栄える最適解ではないでしょうか。
当然ですがそんな安直な話だけではありません。
第5章 問題解決の3ステップと自治体の理想共有の難しさ
ここで先程の問題解決における僕がよく使う3ステップについての話しに戻ります。
私がこの手法を使う際に決める内容は以下の3つです。
「少し先の理想」→理想
「現状と理想との差異」→課題
「その課題を無くすやり方」→手段
さてまずこの3つ、なぜ決めなければいけないのでしょうか。
理由は様々あると思いますが、今回は大事な「理想」と「課題」について。
理想を明確にする重要性
理想を明確に決めることは「関わる全ての人の意識を統一化すること」につながるため、決める必要があるのです。
普段私は企業向けのDX講習の講師側として参加することも多いのですが、企業におけるDX推進は誰が行うのでしょうか。
基本的には上司です。上司が言うのであればある程度意識の統一化は簡単にできるのです。
とはいえ、この理想がない場合、「変革は一部の人にとっては邪魔な存在」になりかねません。
DXで言うのであれば、部下の手間を減らすためにデジタルが苦手な上司に「Slackを使え」といったらどうなるでしょうか。
もともとの書類よりも工程が少なかったとしても拒否反応を示す上司がいることは目に見えています。
これは上司、つまり関係者の一人が「自分視点では変革が必要ない」と考えているために発生する事象です。
これを回避するには「全体として理想を達成するために変革する必要がある」という認識を関係者全員にもって貰う必要があるのです。
これが理想を明確に決めるべき理由となります。
自治体での理想統一の難しさ
さて、自治体においてはどうでしょうか。今回具体名は出せませんが、立場として、一人の住民として、大宜味村の未来を憂いている関係者の二人の方とお話をする機会がありました。
二人共大宜味村の未来を憂いていたわけですが、考えている方法は少し違っていたものでした。
これは片方が「村としての幸せ」を考え、もう片方が「村民の幸せ」を第一に考えていたために発生した事象です。
つまり住民の間であっても理想は共有しきれていなかったということです。
これは問題などでは決してなく、当然の事象で、「企業と違って自治体が理想を統一することは不可能に近い事象である」という話です。
当然の話です。住民それぞれには生活があって、満足している人もいれば、不満がある人もいる。年代ごとにもその差は顕著で
それを統一することなど難しい以外の何物でもありません。これが今回私が気づいた視点の1つです。
確実にDXやIT等に囚われた環境でのみ活動していたらなかなか見えてこなかった視点です。
課題と原因を混同しないために
そして次に課題を明確に分けるべき理由としては「課題と原因が混ざらないようにするため」です。
課題と原因は混ざると時々、解決した課題以上の問題を生み出すことがあります。
例えば、フードコートで特定の店が異常に繁盛していた場合、どのような解決策が考えられるでしょうか。
ここでは「繁盛していないお店を潰して、繁盛しているお店を置くことで店舗を拡大し解決」したとしましょう。
さて、この方法を使うとどうなるか。繁盛しているお店からしたらより多くの顧客を請け負えるようになってハッピーです。
しかしこのやり方を続けると待っているのはフードコートの中心的な価値である「多様性の喪失」です。
フードコートという名前で二店舗・三店舗しかはいっていなかったらお客さんはがっかりするでしょう。
家族連れでもそれぞれが好きなものを食べやすいのがフードコートです。でも上記のような状況が発生したら、
「繁盛しているお店のメニューが食べられない家族がいるから…」という理由で足を運ばない家族が出てくるかもしれません。
課題と原因を混同させる、もしくは課題のみを見て原因を見ない場合は上のような価値の損失を生む解決法を選択してしまい、大きな問題が発生する可能性があるのです。
これは今回、もしただ観光を盛り上げて大宜味村を盛り上げようという部分にのみ着手していたなら確実に起きていた問題です。
観光客を取り入れたいのはなぜか。この理想と課題をどこに置くかによっては先程の「ジャングリラを使った観光誘致」の案は危険度を増します。
増えすぎた観光客によって元いた住民が大宜味村での生活が苦になり、いなくなってしまえば本末転倒です。
このように捉えるべき視点と、それらすべての視点が全て同じ理想を見つめる状況にすること。
これがいかに大事であるかを学んだのが今回のイベントでした。
これは自治体レベルで見つめる機会がないとなかなか見えてこないはずのものだと思っています。
少なくともそれが見えただけでも僕のスキルはレベルアップしたはず。
イベントにおいて得られたのはここまで書いてきたような思考の変化です。
第6章 沖縄・大宜味村の本当の魅力と、Day3での心境変化
さて。では結局僕が大宜味村、ひいては沖縄に対して見えていた魅力は何だったのか。
結論をいいます。「自然」と「人間関係」です。
Day0で感じた違和感の正体
Day0においての私の閉鎖的な気分はなんだったのか。イベント開催期間中もはじめの方は沖縄にいるんだという感覚が持てず、なかなか悩んでいました。
しかしDay3あたりからはそんな気持ちは完全に消し飛びました。答えはシンプルです。
天気がメチャクチャに良くなった。その状況で海に行けた。この2つです。
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私にとっての沖縄は普段感じられない自然のパワーを感じられる場所みたいです。
曇って復興中の首里城などでは哀愁を感じるのが関の山。沖縄の幸せを得られていなかったのは当然の話でした。
そこをしっかりと感覚で理解できたときから僕の心のなかで「WOW! BASEのイベント」が「沖縄県でのWOW! BASEのイベント」にシフトして、ここ数年でも上位の思い出になりました。
「歴史や文化」の奥にあるもの
そしてもう一つの魅力こと「人間関係」。まさに課題と原因を切り分けるように元々感じていた魅力の「文化と歴史」の部分が変化したものです。
大宜味村は「長寿の里」と呼ばれています。それ故におじぃ・おばぁもたくさん住んでいるのです。
その方たちとお話(ゆんたく)する機会にも今回のイベントでは恵まれました。その中でわかったことがあります。
見えているものが違います。歴史も場所も違ければ当然のことですが、全く見えている景色が違います。
その時に気がつくことが出来ました。「歴史や文化」はそれを直接気がつくことは出来ません。
それを伝える人がいて、それを生み出した人がいて初めて我々の手元に届くものです。
つまり、当然ではありますが「歴史や文化」は全て「人」に結びつき、個人ではなし得ない部分を含めて「人間関係」が沖縄県、ひいては大宜味村の魅力となっているのだと考えました。
これは大宜味村の人というわけではありませんが、WOW! BASE内で出会うことが出来た多くの仲間達に関しても同様です。
全員が全員あらゆる夢や理想を持っていて、それぞれ独自の文化(性格)、歴史を持っていました。
これら全てを一回のイベントで触れ合うことが出来たことは私にとって最高の体験でした。
第7章 まとめと今後への思い
最後にはなりますが改めて。
今回私はこのイベントを通して「沖縄県大宜味村をデザインしよう」としました。
当然期間が短いのもありますがデザインはできていません。あくまでしようとしただけです。
しかし、たった4日間の中でも筆を何度も交換して、仲間たちと何度も議論して、我々だけがもたらせる独自のデザインをしようとしたのは自分にとって大きな価値となりました。
本当にイベントで関わってくださった多くの方々、本当にありがとうございました。
またWOW! BASEでの遠征系のイベントがあれば是非参加させていただきたいです。
よりスキルを持って、改めて自分と相手を見つめ直してデザインするために。(そして観光するために。)
以上、私が実際に体験した「沖縄県大宜味村をデザインする」イベントでの学びと気づきでした。
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PS(追伸)
一度デザインをしようとしただけあって大宜味村には愛着が湧きました。
きっといつかまた訪れることになりそうです。