みなさんへの手紙~うつになった自分と共に生きていくと決めて。最大限の御礼と、感謝を。~
本間速です。
大変ご無沙汰してます。
あるいは、いつもお世話になっています。
お元気でしたか?
お蔭様で、僕は元気です。
いつかに比べると、大変元気にやっています。
元々元気が有り余るタイプではないので、無理しすぎると貧血みたいになりますが、
肩の力を抜いて、程よく元気にやっています。
いやぁ、その節は、大変心配をおかけしました。
本当に、本当に。
たくさんの方に、ご心配をおかけしてしまいました。
2年半前、ある日膝を抱えたまま立ち上がれなくなって、軽く自殺未遂を起こし、病院でうつだと診断されて、視界から色がなくなって、味覚障害を起こし、声帯ポリープまで併発し、
死ぬほど迷惑をかけて古巣を半ば無理やり退職させてもらい、
自分はどうなるのだろう、生きていけるのだろうか、
自分になんの価値があるのだろうかと、
絶望の淵に立ち、不安に溺れ、迷いと葛藤に押しつぶされそうだったあの時。
あの節は本当に、ご心配をおかけしました。
あの節は本当に、ありがとうございました。
多くの人が、手を差し伸べてくれました。
多くの人が、寄り添ってくれました。
麦わら帽子をかぶった陽気なおじさんが、僕の手を取り、話を聞いてくれて、サウナや、ヨガをすすめてくれました。
静かなヨガの先生が、僕に自分の心と体と向き合うこと、ゆっくりと待つことを教えてくれました。
パンの香りをかぎにきたらいいよ、と言ってくれた素敵なパン屋さんがいました。
自分もそうだったことがあると、話を聞いて、体験を聞かせてくれた優しい方がいました。
僕の話を聞いて、助言をくれて、静かに、静かに、待ってくれている人がいました。
僕のやりたいといったことに、協力してくれた人がいました。
たくさんの、本当にたくさんの人が、僕にぬくもりをくれました。
そしてなにより、家族が、ただじっと、変わらず、ただ、待ってくれていました。
嘆くこともなく、焦ることもなく、本当は、きっと不安だったのは、家族、とくに、妻だったろうに、
素振りを見せず、ただ、僕を待ってくれました。
本当に、本当に、本当に。
ありがとうございます。
ありがとうございました。
そんなみなさんの優しさと、暖かさがあって、僕は、僕と向き合う事ができました。
結局、最後は、僕自身が、僕自身と、向き合うしかありませんでした。
僕の心の奥底で、膝を抱えて、うずくまっていた僕を、
寂しくて、辛くて、嘆いていた僕を、
今までの人生で、僕の嫌な気持ち、暗い気持ち、悔しさ、悲しさ、重たい、ドロドロとした、醜い部分を、
全部代わりに受け持ってくれていた、そんなもうひとりの自分を、迎えにいけるのは、自分自身だけでした。
その僕を、優しく愛せたのは、自分自身でした。
そうして、2年半かけて、僕は僕と、ようやく、向き合うことが出来ました。
僕と向き合って、前を向くことが出来ました。
また、歩いてみてもいいかなと、思えるようになりました。
二年半、かかりました。
二年半かかって、治ったのかと聞かれると、
治ってません。治りません。
寛解、つまり収まって、コントロールは出来ています。
でも、完治ではありません。
油断すると、すぐまた再発すると思います。
そして、もう二度と、発症する前の自分には戻れないと思います。
もう戻らないだろう、欠落してしまった部分もあります。
それでも、この二年半は、すごく有意義でした。
この二年半、すごく自分にとって必要な時間でした。
この時間があったから、出来た体験がありました。
この時間があったから、出会えた人がいました。
この時間があったから、得られた感情がありました。
この時間があったから、自分と向き合う事ができました。
すごく、大切な時間でした。
うつになったのは、本当にしんどかったです。
できれば、もう二度とあの絶望には行きたくありません。
でも、この二年半は、本当にかけがえのない時間でした。
うつという病気にこそ感謝はまだ、したくありませんが、
この二年半と、多くの人とのかけがえのない時間は、
これから先の僕の人生にとって、
本当に宝物です。
この5月末をもって、僕の社会保障はなくなりました。
1年半の傷病手当、300日の失業保険、
すべて使い切りました。
しっかり、使い果たしました。
仕方ないので、そろそろ動き出そうと思います。
本当は、あと1年、いや、なんなら10年くらいこうして居たかったんですが。
どうやら、そういうわけにも行かないらしいので、仕方なく動き出そうと思います。
いつくらいの時期になるでしょうか。
多分きっと、秋頃でしょうか。
詳しい話は、また少しずつ話していきますが、
麹屋を始めます。
たくさんの麹をつくる、ちいさな麹屋を始めます。
ふしぎで、おかしな、麹屋です。
ここまで来ることが出来たのは、本当に、本当に。
家族や、仲間や、友人や。
すごくすごく、多くの方の、お蔭です。
本当に、ありがとうございます。
皆さんに、家族に、妻に、最大限の、心からの御礼と、感謝を。
この御恩は……
とか、言い始めると、また僕の心を重くしてしまうので、
少しずつ、何かしらの形で、返させてください。
こんな自分で、これからも、生きていきます。
ではまた、お会いしましょう。
本間 速