私は布を作る仕事に携わっている。布を作る仕事というのは具体的には織物の仕事で、滋賀県の琵琶湖の東にある近江湖東産地と呼ばれる日本の麻織物を代表する本場の産地で、林与という小さな麻織物工場を営んでいる。
日本のほとんどの織物の産地に共通していることなのだけども、近江湖東産地の麻織物にしても相当に衰退してもう数軒しか麻織物を織っているところがないとかが現状、いろいろとその原因を考えて自分自身に生かして行ければなあと思う。
麻織物を織っているのはシャトル織機やレピア織機と呼ばれる織機で織っていて、手機プロジェクトなんかも立ち上げてはいるけども、基本は、手で織る感じではなく織機の調整さえうまくすれば基本は織機が織ってくれるような形である。もちろん経糸が切れた時や横糸が切れたりなくなった時には対応は必要だけども、うまく動かせば上手な人だと一人が4台から5台、動かせる可能性もある。
でも、長年の経験者でも1台2台しか動かせないとか、仕事をしてもらうにも大変だとか、言ったことと違うことを意図的にやってるとか、織っても問題だらけだとか、作業もさぼりがちだとか、経験者ほどなかなか仕事が難しいような現状が織物が衰退していった原因の一つではないのかと考える。日本だけじゃなくヨーロッパでも織物というのは衰退し新興国の産業となっている。なぜ経験の浅い国で経験の浅い人たちが作ったもののほうが通用するようになってしまったのか、以前はそんなことがなかったのだけども、文化の逆転現象みたいなものが起こってしまって品質的なものも逆転し始めてしまったのである。布とか織物の世界は人とか文化とか考え方という要素が大事だなあと本当に思うのである。