地方のドラマ4

◯□□新聞 ◯◯支局(朝)
 朝日が窓から差し込む。
 ちとせと柏崎以外は揃って自席で作業中。
 柏崎、アクビをしながら出局してきた。
 三島、柏崎を早速呼ぶ。
三島「柏崎…ちょっと…」
柏崎「はい…」
 柏崎、三島の対面へ…
柏崎「なんです?」
三島「昨日どうだった?」
柏崎「あぁぁ…昨日ですか?頑張ってましたよ。大
 間…あと今日も出ますから◯◯焼きの窯元の青年
 の取材です」
三島「そうか…戦力になるか?」
柏崎「…まぁ本人次第だと思いますが…」
三島「そうだが…お前の見立てが聞きたい…」
柏崎「そうですねぇ…」
 そうこうしているうちに、ちとせが出局。
ちとせ「おはようございます…」
 柏崎と三島、ちとせに気付く。
 ちとせ、その視線にたじろいだ。
ちとせ「何ですか?」
柏崎「まぁ…大丈夫ですよ…俺でもやれてるんだ…
 若い子を信じなきゃ…」
三島「そんな事いうんだな…」
柏崎「そりゃ田舎に押し込められたら気持ちも弱ります。」
三島「そう言うなよ…」
柏崎「では、取材あるんで…大間と出ますから…」
三島「そうそう、何時になっても良いらしいから
 ウチの◯◯県総局に顔を出しやってくれ」
 柏崎、目がキョトンとする。大間を指差す。
柏崎「あいつ?」
 三島、首を大きく振り柏崎を指差す。
柏崎「お前だよ」

◯車内
 阿阪窯元へ向かう道中。
 ちとせ、運転。
 柏崎、外を見てる。
ちとせ「…三島さんに何か言われたんですか?気に
 しなくて良いですよ!」
柏崎「まぁな…でもお前の事聞かれたよ…」
ちとせ「えっ!でっ!?何て言ったんですか?」
柏崎「さぁてね…」
ちとせ「えぇぇ!何すか?何なんですか?」
柏崎「今日の帰り総局よれる?」
ちとせ「総局遠いんですよね…でも大丈夫ですよ」
柏崎「何かあいさつ寄れって言われたんで…連れて
 行って」
ちとせ「三島さんに何言われたか言ってくれたら 
 連れて行ってあげます」
柏崎「じゃあ良い、一人で行く」
ちとせ「なんでそんな事言うんですか?」
 車、山あいの町へ向かう。

◯阿阪窯元
 屋敷、昨日みたよりも立派な印象。
 阿阪、門の前で立ってお迎えしている。
ちとせ「あっ!翔陽くん!」
 ちとせ、力一杯手を振る。
柏崎「本当だ」
 阿阪、車を屋敷内へ誘導する。

◯阿阪邸
 豪華な庭に面した和室に通される。
 柏崎達、落ち着かない様子。
柏崎「…やっぱり…でけぇな」
ちとせ「…はい」
 足音が聞こえる。
 柏崎達、姿勢を正す。
 扉が開き年配の男性が入ってくる。
男性「どうも、翔陽の祖父の翔実です」
ちとせ「あっ…わたくし」
翔実「大丈夫ですよ…翔陽から聞いてます」
ちとせ「あっありがとうございます」
柏崎「で…」
翔実「まぁ…ちょっとご挨拶に来ただけなんです。
 あとは翔陽に任せてます。この度の取材よろし
 くお願いいたします」
 翔実、話はじめると、また足音が聞こえた。
翔実「翔陽がきましたね…では…」
 翔陽、扉を開け入ってくる。
阿阪「じいちゃん…」
 翔陽、手元に桐の箱を持ってる。
翔実「しっかり頼むぞ…」
阿阪「はい」
 翔陽、翔実に一礼。
 翔実、部屋を出る。

◯同 客間(昼)
 高級旅館の御庭の様な庭。
 ちとせ。桐の箱から藍色の器を翔陽に出しても
 らい写真撮影。
 柏崎、横でゆっくり器を拝見している。
柏崎「この色に至った理由は…」
阿阪「実はこの色は狙った訳では無くて…」
ちとせ「偶然出たんですか?」
阿阪「半分は…」
ちとせ「すごい…美し過ぎます」
阿阪「ありがとうございます」
 翔陽、ちとせの取材に懇切丁寧に答えている。
 柏崎、少し飽きて庭を見つめる。
ちとせ「色々ありがとうございました。で…この企   
 画はですね…県北数珠繋っていうのを“売り”にし 
 たいんです。何か阿阪さんが県北で気になって
 る事とかありませんか?」
 翔陽、考える。
阿阪「何かあるかなぁ…」
 ちとせ、嬉々とした笑顔で翔陽を見つめる。
 柏崎、ちとせの眼力を見て咳払い。
 ちとせ、我に返る。
阿阪「そうそう…少し北部に向かった所に内海があ
 るのご存知ですか?」
ちとせ「はい!もしかして…」
阿阪「洋菓子屋さんが最近出来たでしょ。そこの
 オーナーシェフは東京から来てて…この前器を見
 に来てくれたんです。その人とか?」
ちとせ「良いですね!柏崎さん!ソコに決定で!」
柏崎「確かに、面白そうだ」
ちとせ「翔陽さん。ありがとうございました」
阿阪「此方こそ…良い記事を書いて下さい。洋菓子
 屋さんの記事も参考にさせて頂きます」
ちとせ「もちろん!頑張ります!…参考に?」
阿阪「はい…今度彼女と行こうと思ってまして…大
 間さんみたいな女性は洋菓子屋さんのデートと
 かどう感じるのか知りたくて…」
ちとせ「…はい」
 ちとせ、あからさまに元気が無くなる。
柏崎「大間くん…もっと元気に返事をしなさい」
 柏崎、ちとせ、ゆっくり立ち上がり客間から出
 ていく。

◯ ◯◯県北にある山間部
 山道。
 大きな道では無いが整備された綺麗な道路がつ
 づら折りとなっている。
 ちとせの車が猛スピードで走っている。心なし
 かエンジン音がけたたましい気がする。
 柏崎、ドアについてる手摺をガッチリ掴んでい
 る。
柏崎「大間、もっと慎重に走ろうよ!」
ちとせ「いつも通り走ってます」
柏崎「いやいや…もっと落ち着いてたよ。君は」
 山間にちとせの車の排気音が鳴り響く。

 あと少して洋菓子屋さんに到着。

                   つづく

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