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プレゼント選びは難しい
朝起きたら、「プレゼントを買わなきゃいけない」ということを思い出した。誰のためだったかは思い出せない。誕生日? 結婚祝い? それとも単なるお礼?
まあいい、とにかく買いに行こう。
デパートのプレゼント売り場に着くと、ものすごく華やかだった。カップル、親子、友達同士、みんな楽しそうにプレゼントを選んでいる。一方、僕は「そもそも誰のためのプレゼントなのか」という根本的な問題を抱えたままだ。
店員がニコニコしながら話しかけてくる。
「何かお探しですか?」
「ええっと……」
適当なことを言おうとしたが、言葉が出てこない。そもそも相手が誰かわからない以上、求められるものもわからない。困っていると、店員は笑顔のまま棚の奥から何かを取り出した。
「こちら、いかがでしょう?」
手渡されたのは、なぜか高級そうなスプーンだった。
「……スプーン?」
「はい、スプーンです!」
「スプーンをプレゼントに?」
「ええ! 実は今、ひそかに人気なんですよ。スプーンを贈ると“あなたの人生に甘い時間を”という意味になるんです」
「はぁ……」
なるほど、ちょっと洒落ている。でも、スプーン一本を渡された人の気持ちを考えると微妙な気もする。「……ありがとう? ……スープ飲むね?」みたいな反応になりそうだ。
「では、こちらはどうでしょう!」
店員が次に差し出したのは、金色に輝く……靴ベラだった。
「……靴ベラ?」
「はい! “人生の一歩をスムーズに”という意味が込められています!」
……もう何でもアリなのか?
結局、僕は適当な紅茶の詰め合わせを買った。紅茶なら、たいていの人が飲むし、意味も深読みされにくい。家に帰って冷静になったら、ようやくプレゼントの相手が自分だったことを思い出した。
「あぁ、そういえば最近、自分にご褒美を買おうと思ってたんだった……」
まったく、プレゼント選びというのは難しいものだ。