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一度は言ってみたい台詞集


現実のなかであまり言う機会のない憧れの台詞を集めてみた。これからの人生のなかで、極力声に出して読みたいと思っている。状況を多少こじつけてでも、な。

犯人はこの中にいる!

いる。いるとわかった、という話である。

しかし、いるとわかったからといって、解決したわけではない。

たとえば、風呂場で入浴中に大きめの虫(仮にそれをGとする)が現れた場合を想像してみよう。

その虫が大嫌いな私は、すぐさま風呂を出てドアをしっかりと閉めて、バスタオルをまとう。そして家族を呼んで言うのだ。

「犯人はこの中にいる!…………んだけど、どうしよう?」

このケースでは、シャンプーの途中だったりすると、目に染みたりしてそのまま路頭に迷うパターンである。

Gは見失ったらいつ出てくるかわからない。見える場所にいても嫌だし、見えなくなってもそれはそれで怖い。どちらにせよ、その空間の安心感をひどく損なうものだ。

ハァーまったくもう。

家族に手伝ってもらわないとGを退治できない自分が悔しい。


君たちを呼んだのはほかでもない

この状況は、自分がひとつの場所に複数の存在を呼び寄せたということになる。

「集まろうよ」「いいね」って言って『みんなで集まった』わけではなく、『私が複数の“君たち”を呼び出している』。

それはどんなシチュエーションかと考えてみたところ、やはりそれは家族の法事などの関連であろう。

代々守り継いだ先祖の墓の前で、黒幕ならぬ黒服の私は親戚一同に向けて言うのだ。

『君たちを呼んだのはほかでもない、はか参りだ』

“ほか”と“はか”でこっそり韻を踏んでいるのだが、はたしてそこに気付く親族がいるかどうか。

韻を踏む前にドジを踏まないよう、丁寧に墓参りを済ませたいものである。


事件は会議室で起きてるんじゃない

最近この『会議室』という言葉が気になる。

公民館などの公共施設を調べていくと、『いわゆる会議室』に見えても、呼び名が違っていることがよくあるからだ。

十数人での会議に適したような、長机がロの字になっていて、コロコロ転がる椅子がたくさん置いてあるような部屋。それはたとえば、「講座室」、「活動室」、「集会室」、「ミーティングルーム」などと、施設によってさまざまな呼び名のバリエーションがある。また、会議室と呼ばれていても、似たような部屋が複数ある場合は「会議室1」「会議室2」「会議室3」などと数字がついていたりする。ふだんは三つの会議室1~3なのだが、場合によっては壁が可動式になっていて、つなげてひとつの大きな会議室にメタモルフォーゼ可能なこともある。

また、数十人でのそこそこ大きな会議ともなると、「多目的ホール」、「レクホール」などと呼ばれるフローリングの部屋で開催されることもある。そういう部屋では机を片付ければ卓球のような軽いスポーツもできたりするし、社交ダンスや健康体操をやっていたりもするのだ。

だから、『会議室』という一般名詞で語られていても、正式名称を確認して特定することが必要だ。もし正式名称が『会議室』でないのなら、誤解のないように訂正しなければならない。「事件は会議室で起きてるんじゃない。正しくは“会議室2”で起きているんだ」などと。

そして、場合によっては「なお“会議室2”は5階でございますので、突き当たりのエレベーターをご利用ください」などと付け加えれば、より親切である。


話はすべて聞かせてもらった

この言葉は言えそうで言えない。まず、人の話をなかなか『すべて聞く』って難しいからである。

すべて聞かなかった話の例として、酔っぱらいの先輩の話を載せよう。

「お前、血液型何型?え、A型なの?嘘だろー。もう一回調べてこいよ。ありえねーわ、俺もAなのに」

いい大人なのに血液型にこだわる人を一定数見かけるのだが、あれはいざというとき誰に輸血してもらうか目星をつけているのだろうか。そうでなければ、たまたまその場の話題として当たり障りのない話がそのぐらいしかないからだろうか。『誰それが何型だ』とかいう、さしあたり意味のない個人情報が居酒屋で飛び交う背景には、『親しくもないし親しくなる気もない他人同士の会話における適当な話題の涸渇』という深刻な社会問題がはびこっている。

所詮そんな状況であるから、世間は『すべて』どころか『話半分』でも聞く価値のない話で溢れている。だから、『すべてをしっかり聞いていられるほど意義のある話』に出会えたなら、それは幸いなことだ。

そんな時は万感の想いを胸にこう言おう。

『話はすべて聞かせてもらった。有意義な話をありがとうございます』と。

聞いた話を受けて、語りたい言葉が溢れだしそうなら、『感想をSNSにあげてもいいですか?』と聞いておくのもよいかもしれない。



補足

うちの父は、困難に直面すると「ギャフン……」と言うことがある。話を振られて「ノーコメント」と言ったりもする。

言いにくそうな言葉も、声にしていこう。

そうすることで、きっと何かが変わるはずだ(あの人変わってるねと言われるようになる等)。



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