サウイウモノニワタシハナリタイ
久々の5時起きはつらい。
昨晩、遅くまで楽譜探しに熱中したことに加え、ほぼ夜と言っていい暗闇に包まれていることで、頭にも身体にもキレを欠くスタートとなった。
普段より早起きの理由は、7:30(日本時間10時)からのオンラインイベントに参加するため。毎朝のルーティンをこなすことも加味して逆算した結果である。
日本在住者にとっては常識的な時間設定だが、ミャンマー基準だとなかなかのハードモードだ。日本時間9時スタートのミーティングなど、もはや罰ゲームにすら思えてくる。
辛うじて対応したとして、またすぐに切実な問題に直面する。ランチタイムまでの腹持ちだ。
起きる時間が早まるのにともなって朝食の時間も前倒しになるため、10:30には腹が鳴り出す。ここから始まる1時間強の耐久レースを走り切って、通常の生活リズムに戻せるか。これがいつも正念場になる。
セミナーを終え、「我慢大会」も気合いで乗り切って12時に昼を済ませたら、日曜恒例のオンライン家庭教師の予習に取りかかる。
ミャンマーに来て以来、ひょんなことから始まって、受講者が入れ替わりながらもいまだに続いているDream Trainでの日曜教室。この2年、生徒たちとのコミニケーションもそうだが、教材探しを通して多くの発見があった。
お世話になりまくっているのが、NHK World Japanである。外国人が日本を知ろうとする時、これほど親切かつ良質、多彩なラインナップを揃えた無料のWebコンテンツは、他にないのではないか。
例えばこの“#TOKYO”。東京の名所を、英語でコンパクトに伝えてくれる。
15分という絶妙な長さと、最大8言語にまで対応した字幕、外国人目線で切り取った現代の東京の風景がすばらしい。
「いつか日本に…」という人たちにとって格好の教材であるのはもちろん、かつて仕事で6年半住んだ私にとって、変化をやめない東京という街のダイナミズムを感じるとともに、じんわりとした感慨が浮かぶ。
また、“Easy Japapanese for Work しごとのにほんご”も出色の出来と言える。
日本で働く外国人をゲストにお迎えし、ロールプレイを折り込みながら、仕事で使うにあたって便利なフレーズを楽しく学んでいくというもの。
日本語学習という目的以上に、日本の職場や生活環境を見聞きすることに加え、外国人がそれらをどう感じるのかを知る意味でも優れている。実際、日系企業での就労が決まった・目標の子たちからは、高い人気がある。
日本語・日本文化の学習、毎日のニュースにおいても、各国の字幕・吹き替え解説が充実しており、異文化理解の敷居が非常に低くなっている。
2つ目のミャンマー語吹き替えページは、日本語学習中のミャンマー人スタッフや友人に勧めまくっている。
それにしても、外国人の目線を意識しつつ日本にまつわる学習コンテンツを吟味するのがこれほど心躍る試みであるとは、日本にいる間は気づかなかった。
イギリスでもミャンマーでも、日本に関心を抱いてくれる外国人との交流を通して初めて拓かれた感覚であることは間違いない。
彼ら彼女らに日本の今をきちんと伝え切りたいと、古典や文化史を学び直す。その営みと実際の意見交換の中で、今まで見過ごしていた価値を再発見したりする。この瞬間にいつも、私は静謐なる喜びと、そのきっかけをくれた相手への感謝の念を抱く。
内を深掘り、外へ目を向けよ。
前者が過ぎれば、痛々しき“田舎者”。後者に傾き過ぎれば、残念な“海外出羽守”。どちらかに寄りかかるのではなく、その両立によって、新たな地平を見に行く。サウイウモノニワタシハナリタイ。